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2011年度の消費者物価は海外要因で上昇へ

前回のこの経済レポートで主要民間予測機関の2011年度の経済見通しを紹介した。これらは内閣府の10年9〜12月期の2次速報値の公表を受けて12月10日頃に発表されたが、2カ月も経たずに早くも見通しが狂う可能性が高まっている。

 それは消費者物価指数で、予測機関の見通しは季節商品を除く消費者物価で発表するところが多く、0.5%減から0.1%増となっている。10年度は異常天候で季節商品が値上がりしたという事情があり、11年度が通常の天候とすれば、その分は季節商品も含めた全体の物価上昇率が低下する。事実、季節商品を除いて0.1%増の上昇を見込んでいるいる三菱UFJリサーチ&コンサルティングは全体の消費者物価も発表しており、これは0.1%減である。

 つまり、いずれも日本経済のデフレ状況から11年度の消費者物価上昇率がマイナスになる見通しということでは一致している。ちなみに、10年12月の消費者物価の前年同月比は全体で0.0%の横ばいだが、季節商品を除けば0.3%減で、0.3ポイントの格差がある。

 物価に関しては、11年にはいって1月中旬頃から穀物の国際価格上昇からマスコミも注目し始めるようになっている。穀物価格を代表的な小麦価格でみると、IMF(国際通貨基金)のPrimary Commodity Pricesで10年夏頃までトン当たり200ドル前後で推移していた。底は10年6月の158ドルで、8月頃から上昇し、12月には6月の倍近い307ドルと、08年8月以来の300ドル台を記録した。明確に上昇傾向になったのは11月からといえる。

 穀物価格上昇の要因として、米国のFRB(米連邦準備理事会)が10年11月に追加金融緩和で米国債6,000億ドルの米国債購入を決定したことで、投機資金が国際商品市況に流入したことを強調する意見が多い。それ以外にも発展途上国による経済発展、所得向上で食糧需要が増加しているのに加え、地球規模での異常気象による生産の減少も挙げられているが、投機を強調すると、国際的な商品需給変化を見誤ることになる。基本が需給にあることは穀物と非鉄やエネルギーの上昇にずれがあることからも明らかである。

 穀物に先行して、09年末から10年初めを底に、非鉄金属やエネルギー価格が上昇を開始しており、上昇幅も穀物より大きい。例えば、原油価格はOPECバスケット価格で、08年12月平均のバレル当たり38.60ドルを底に、10年12月は一時90ドルを超え、月平均では88.56ドル、2倍以上に高騰している。また、この間の銅のLME(ロンドン金属取引所)価格は3倍近い。

 経済発展の初期の段階は資源節約投資よりも能力拡大投資が優先され、また、産業・生活基盤整備のために鉄、非鉄等の資源が必要になり、これらの需要は経済発展に伴って顕著に伸びていく。もちろん、発展途上国は需要の伸び率が高いといっても、絶対数は小さい。このため、従来は需給全体に与える影響は軽微で、あまり意識されなかった。ところが、中国は国民一人当たりの所得水準が低くても、人口は日本の10倍の13億人である。世界市場に占める需要規模は世界1位や米国に次いで2位にまで拡大している資源が多くなっており、中国の経済発展が世界需給に与える影響は大きい。

 当然、その一方で供給が増えれば、価格上昇は避けられるが、穀物は米国に生産拡大余地があっても、非鉄、エネルギー等の資源は偏在し、かつ、資源量に限界がある。中国の経済発展は日本の輸出を伸ばし、日本経済にプラスという認識は一般的になっている。その裏側で、国際商品市況に影響を与え、商品市況上昇が日本から資源国への所得移転のマイナスをもたらすことはまだ考慮されていなかった。さらに、中・長期的には中国同様に人口規模の大きいインドの需要も無視できなくなる。
 非鉄、エネルギーに続いて穀物価格が高騰し始め、加えて、為替レートの円高も一服状態になり、ドル価格上昇が円価格に直接、反映するようになる。消費者物価が上昇するという見方はまだ少ないが、これらの条件が重なったことで、今後、消費者物価が上昇に転じると予測される。

 国際商品市況の上昇は日本の輸入価格→国内企業物価→消費者物価と波及していく。日本の不況状態を考慮すれば、小売販売価格に転嫁され、消費者物価の上昇にまで至るのは一部に留まり、消費者物価上昇率が顕著に高まるとは考えられない。11年度を通常の天候を前提に国際商品市況が高騰した08年度の実績からみれば、せいぜい1%前後程度が予想される。それでも、所得が増えない状態では、消費に与える影響は大きい。

 また、輸入価格の値上がりを小売価格に転嫁できなければ、企業収益がそれだけ縮小する。企業収益の悪化はボーナス減、さらには雇用削減になり、これも消費減要因になるが、その前に設備投資が抑制される。いずれにしても、海外要因で消費者物価が小幅でも上昇すれば、日本経済への打撃は小さくなく、GDP見通しにも修正せざるを得なくなる。
物価前年比上昇率と国際商品市況価格の推移


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| 2011年01月29日 | 景気 | comments(0) | - |
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