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米国経済は再び景気後退に向かうか

 11月3日の米国の中間選挙で民主党が大敗した。その背景には10月29日に発表された2010年7〜9月期速報値の米国の実質経済成長率が前期比で年率2.0%増、11月23日の改訂でも2.5%増の低い伸びに留まり、経済回復の遅れで雇用改善が進まないことが挙げられている。全米経済研究所(NBER)によると09年6月が景気の底になり、米国の実質GDP成長率は09年7〜9月期に前期比で1.6%増と5四半期振りにプラス成長に転じ、次の10〜12月期は5.0%増の高い伸びになった。その後、10年1〜3月期3.7%増、4〜6月期1.7%増、そして7〜9月期の2.5%増になったことで、回復が息切れ気味にみえ、米国経済の景気後退を懸念する見方もでている。


 一方、米国GDPの7割を占める実質個人消費は09年7〜9月期から10年7〜9月期まで、2.0%増、0.9%増、1.9%増、2.2%増、2.8%増の推移になっており、低成長でも着実な回復傾向にある。この間の実質GDPと実質個人消費の成長率にみられる乖離現象は、在庫投資の変動に原因がある。


 高成長になった09年10〜12月期の実質GDPの前期比増加額は1,582億ドル、うち915億ドル、57.8%は実質在庫投資額が前期から減少幅が縮小したことによる実質GDPへのプラス効果である。次の比較的高成長の10年1〜3月期は実質GDP増加額の1,198億ドル中、808億ドル、67.4%は実質在庫投資額のプラス効果になる。


 つまり、両四半期は景気循環における在庫調整の最終局面に当たり、在庫削減の終局局面から積み増しへの変化が実質GDP成長率を押し上げた。その後は在庫の積み増しが続いているが、積み増し額は小幅に留まり、成長率押し上げ効果が弱まった結果、成長率が低下した。実質個人消費にみられるように、最終需要は回復当初から低成長が続いていたのである。穏やかでも個人消費が回復していることから判断すれば、景気後退の可能性は少ないといえる。


 また、在庫積み増しは輸入の増加にもなる。輸入増は直接的には、需要の流出になり、GDP成長率を押し下げる。間接的には、需要増が民間設備投資を喚起する波及効果を中断させる。結果、実質個人消費の成長率は回復傾向で、景気後退に陥らなくても、実質GDPはあまり成長できないという事情がある。


 この影響は雇用に及ぶ。米国の失業率は07年までの4%台から、08年に急増し、景気回復から遅れて09年10月の10.1%でようやく頭を打った。そして、10年6、7月の9.5%まで小幅改善した状態で回復中断になり、8、9月は9.6%に戻している。これが中間選挙でオバマ大統領への批判となり、民主党敗北の要因になった。


 09年2月、オバマ大統領は景気対策の米国再生・再投資法を成立させた。19年までの11年間の累計で7,872億ドル(歳出額5,753億ドル、減税額2,119億ドル)、全体の約4分の3の5,844億ドルは10年までの2年間に実施するという内容である。この政策効果が当初には顕著に表れ、景気を底入れて回復させたが、回復を加速できなかった。

米国の実質GDP成長率と失業率の推移

 このため、ドル安の為替レート効果で輸出増と輸入減を図り、景気回復、GDP成長率の押し上げに力を入れている。また、米連邦準備制度理事会(FRB)は中間選挙と同じ11月3日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、追加金融緩和として11年6月末までに米長期国債を新たに6,000億ドル購入することを決めた。金融緩和はこれが最後になりそうという予想に加えてユーロの財政危機の再燃で、大統領の思惑とは異なってドル安に歯止めが掛かっている。


 11月18日にはOECDが主要国の経済見通しを発表した。この中で、米国の実質GDP成長率は09年の2.6%減のマイナス成長から、10年2.7%増、11年2.2%増、12年3.1%増と穏やかな回復が続き、12年に比較的高い成長を見込んでいる。11年に対して12年が高くなる要因は、実質個人消費が2.4%増から2.7%増になることもあるが、それよりも、輸出等が8.1%増から9.9%増に高まる一方、輸入等が9.9%増から7.7%増へと減少することが大きい。


 輸出は世界経済によるが、米国経済の成長率の伸びにもかかわらず、輸入が減少するのは、為替レートのドル安効果を見込んでいるためと推測される。しかし、長年にわたって輸入依存体質に染まった米国経済が短期間で転換でき、少々のドル安程度で輸入が減少するとは思われない。


 米国が景気後退しなければ、日本の対米輸出は伸びが見込めても、米国の経済成長率が低く、輸入もあまり増えなければ、対米輸出の高い伸びは難しい。結局、対米輸出主導の経済成長は難しくなり、中国を中心とするアジアに期待するしかなくなる。



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| 2010年11月28日 | 景気 | comments(0) | - |
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