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雇用拡大から景気を回復させる政策は現実的か
民主党代表選で菅首相が選ばれた。景気回復が中断し、景気後退が懸念される中、菅首相は「1に雇用、2に雇用、3に雇用」を強調し、雇用拡大で景気の回復持続を強調している。菅首相の考えている具体的な政策は分からないが、雇用拡大を前提にすれば、雇用拡大→個人消費増→GDPの上昇、というルートで景気の持続的回復・上昇を期待することはできる。
問題は雇用が景気に遅行、つまり雇用は景気回復の契機になるのではなく、その結果ということである。雇用者も含めた就業者全体の推移を総務省「労働力調査」でみると、就業者数は90年の6,249万人から、97年に6,557万人まで増えてピークになり、その後は景気を反映して一進一退で推移している。最近は07年の6,412万人から、景気がピークを打った08年には早くも減少に転じ、09年は2年連続の減少の6,282万人にとどまっている。
そして、景気は2009年1〜3月期に底入れして1年半ほど経ている。就業者数はようやく7月になって前年同月比プラスになったが、わずか1万人増の6,271万人である。10年は年間を通してみれば、3年連続減の可能性が高い。
ただし、景気低迷下、または現在のように回復期でも、回復が遅れている時に、雇用増が期待できる分野はある。そのような分野で雇用増加を図ることで、景気回復につなげる政策が考えられないわけではない。
「労働力調査」で産業別に就業者数をみると、主要な産業では、建設業はピークの97年の685万人から09年の517万人、対97年比24.5%減まで一本調子で低下している。製造業はピークの92年の1,569万人からその後、一時的に微増の年がある程度で、09年は1,073万人、対92年比31.6%減にもなる。
就業者全体に占める製造業の割合は90年で24.1%と4分の1を下回り、09年は17.1%でしかない。この間、02年から標準産業分類の改定で出版業が製造業から情報通信業に移った。製造業はその影響を受けるが、その人数は02年で20万人、2%にも満たない。また、建設業や製造業への派遣労働者が増えており、派遣会社の派遣労働者はサービス業の労働者派遣業に分類され、実態よりも少ないことに留意する必要はある。
一方、公務と分類不能を除いた民営の第3次産業(以下第3次産業)は、かつては不況期でも減ることはなかっが、09年に4,205万人、対前年比5万人、0.1%減と初めて僅かだが減少した。全体に占める割合は90年段階で56.1%と過半数を超え、09年は前年より0.1ポイント低下しても、67.3%と3分の2以上を占め、雇用を増やすのは第3次産業が対象になる。
具体的に雇用を増やす産業を考えるには、第3次産業をより細分化してみる必要があるが、細分類で集計されたのは標準産業分類が改定された02年からになる。このため、02年からの細分類で顕著に就業者数が増えている産業をみると、「情報通信業」「医療・福祉」と、労働者派遣・廃棄物処理・自動車修理等の「他に分類されないサービス業」の3産業になる。他に分類されないサービス業は労働者派遣業の増加と推測される。
02〜09年に第3次産業が3,992万人から4,205万、213万人増えている。同期間で、情報通信業は158万人から193万人、35万人増、医療・福祉は474万人から621万人、147万人増、他に分類されないサービス業は374万人から463万人、89万人増である。ただし、医療・福祉以外は近年、頭打ち、または減少になっており、景気の影響が避けられないことを反映している。
結局、不況期でも就業者増、ひいては個人消費増を見込めるのは、医療・福祉産業になる。実際は老人施設サービスの福祉産業と推測される。着実に就業者数が増えている背景には、福祉産業は高齢化で景気に関係なく需要が増えることがある。加えて、供給面で就業者が不足しており、就業者増が期待できる。つまり、恒常的に人手不足状態にあることも雇用を増やせる潜在的可能性が高いといえる。その人手不足の原因は、労働条件が厳しく、就業希望者が少ないか、就業しても定着しないためである。
福祉産業に就業者増、雇用増を期待でき、労働力調査統計からその可能性は十分あるといえるが、それためには労働条件を改善する政策が必要になる。悪い労働条件を賃金や人員増で対応するとすれば、いずれにしても人件費の増加になる。それは税金や保険料で賄うか、利用者負担にするしかない。税金には財政問題があり、保険料引き上げや利用料金の負担増にすれば、結局、負担をかぶる家計はそれだけ他の支出にしわ寄せするだけで、雇用拡大→消費支出増に結びつかない可能性が強い。結局、秋以降に懸念される景気後退を予防し、景気回復の持続を雇用増で実現するのは現実には難しいという結論になる。
問題は雇用が景気に遅行、つまり雇用は景気回復の契機になるのではなく、その結果ということである。雇用者も含めた就業者全体の推移を総務省「労働力調査」でみると、就業者数は90年の6,249万人から、97年に6,557万人まで増えてピークになり、その後は景気を反映して一進一退で推移している。最近は07年の6,412万人から、景気がピークを打った08年には早くも減少に転じ、09年は2年連続の減少の6,282万人にとどまっている。
そして、景気は2009年1〜3月期に底入れして1年半ほど経ている。就業者数はようやく7月になって前年同月比プラスになったが、わずか1万人増の6,271万人である。10年は年間を通してみれば、3年連続減の可能性が高い。
ただし、景気低迷下、または現在のように回復期でも、回復が遅れている時に、雇用増が期待できる分野はある。そのような分野で雇用増加を図ることで、景気回復につなげる政策が考えられないわけではない。
「労働力調査」で産業別に就業者数をみると、主要な産業では、建設業はピークの97年の685万人から09年の517万人、対97年比24.5%減まで一本調子で低下している。製造業はピークの92年の1,569万人からその後、一時的に微増の年がある程度で、09年は1,073万人、対92年比31.6%減にもなる。
就業者全体に占める製造業の割合は90年で24.1%と4分の1を下回り、09年は17.1%でしかない。この間、02年から標準産業分類の改定で出版業が製造業から情報通信業に移った。製造業はその影響を受けるが、その人数は02年で20万人、2%にも満たない。また、建設業や製造業への派遣労働者が増えており、派遣会社の派遣労働者はサービス業の労働者派遣業に分類され、実態よりも少ないことに留意する必要はある。
一方、公務と分類不能を除いた民営の第3次産業(以下第3次産業)は、かつては不況期でも減ることはなかっが、09年に4,205万人、対前年比5万人、0.1%減と初めて僅かだが減少した。全体に占める割合は90年段階で56.1%と過半数を超え、09年は前年より0.1ポイント低下しても、67.3%と3分の2以上を占め、雇用を増やすのは第3次産業が対象になる。
具体的に雇用を増やす産業を考えるには、第3次産業をより細分化してみる必要があるが、細分類で集計されたのは標準産業分類が改定された02年からになる。このため、02年からの細分類で顕著に就業者数が増えている産業をみると、「情報通信業」「医療・福祉」と、労働者派遣・廃棄物処理・自動車修理等の「他に分類されないサービス業」の3産業になる。他に分類されないサービス業は労働者派遣業の増加と推測される。
02〜09年に第3次産業が3,992万人から4,205万、213万人増えている。同期間で、情報通信業は158万人から193万人、35万人増、医療・福祉は474万人から621万人、147万人増、他に分類されないサービス業は374万人から463万人、89万人増である。ただし、医療・福祉以外は近年、頭打ち、または減少になっており、景気の影響が避けられないことを反映している。
結局、不況期でも就業者増、ひいては個人消費増を見込めるのは、医療・福祉産業になる。実際は老人施設サービスの福祉産業と推測される。着実に就業者数が増えている背景には、福祉産業は高齢化で景気に関係なく需要が増えることがある。加えて、供給面で就業者が不足しており、就業者増が期待できる。つまり、恒常的に人手不足状態にあることも雇用を増やせる潜在的可能性が高いといえる。その人手不足の原因は、労働条件が厳しく、就業希望者が少ないか、就業しても定着しないためである。
福祉産業に就業者増、雇用増を期待でき、労働力調査統計からその可能性は十分あるといえるが、それためには労働条件を改善する政策が必要になる。悪い労働条件を賃金や人員増で対応するとすれば、いずれにしても人件費の増加になる。それは税金や保険料で賄うか、利用者負担にするしかない。税金には財政問題があり、保険料引き上げや利用料金の負担増にすれば、結局、負担をかぶる家計はそれだけ他の支出にしわ寄せするだけで、雇用拡大→消費支出増に結びつかない可能性が強い。結局、秋以降に懸念される景気後退を予防し、景気回復の持続を雇用増で実現するのは現実には難しいという結論になる。
| 2010年09月26日 |
雇用 |
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コメント
投稿者:- (2010年10月20日 23:01)
管理者の承認待ちコメントです。