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消費税を上げれば、不況になるか

 7月11日の参議院選挙で民主党が大幅に議員数を減らした。影響の大小は別として、敗因の要因の一つとして、菅新首相の消費税増税発言があったことは否定できない。消費税増税反対の理由として基本的に何でも増税反対という以外に、所得が伸びない中で、生活水準を切り下げざるを得なくなり、このため消費税増税は不況の契機になる、というのがある。


 1989年4月からの3%の消費税導入時は景気が反転しなかった。一方、97年4月から実施された3%から5%への消費税率の引き上げ後に景気が上昇から下降に転換し、この印象が強く残っているためである。ちなみに、89年度の賃上げ率は5%台であり、3%の消費税でもまだ実質所得ベースの伸びはプラスになる。ところが、97年度の賃上げは2%台で、2%の消費税増税で実質所得ベースでは伸びはほぼゼロになる。近年の賃上げ率はほぼゼロであり、この点では97年4月からの方が参考になり、不況化の懸念は当然といえる。


 ただし、現実には、必ずしも前回の増税が不況をもたらしたとはいえない。というのは、その直後の97年7月に発生したアジア通貨・金融危機の影響も大きかったからである。


 消費税増税に関しては、5%から10%への引き上げが一つの案として挙げられているだけで、実施時期は実施するとしても、次回の衆議院議員選挙の後にすると言われている。また、低所得者対策などまだ何も決まっていない段階で、影響の大きさは判断できないが、実施時期の選択が大切ということはできる。


 前回の97年4月頃の日本経済は、93年10月を底に景気は回復・上昇期にあり、96年度の実質GDP成長率は2.9%増だった。現在からみれば比較的高成長率だが、当時としてはそれほど高いとはいえなかった。また、日本経済は80年代末のバブル崩壊からの回復が不十分で、病み上がりの体という判断から、消費税増税は時期尚早という意見があった。


 消費税増税の消費への影響は大きい。四半期別の成長率でみると、実施前の97年1〜3月期は増税前の駆け込み需要で実質民間最終消費が2.0%増の高い伸びになり、逆に、4〜6月期はその反動で3.5%減の大幅減少になった。このため、実質GDPもこの間に0.9%増から0.8%減へと、プラス成長からマイナス成長に転落した。


 そして、7〜9月期の実質GDPも0.5%減と2四半期連続のマイナス成長になり、景気が上昇から下降へと転落した。このときの記憶から、消費税の増税が日本経済を不況化したという印象が強い。ところが、同期の実質民間最終消費は0.8%増に小幅でも持ち直していた。


 07年7〜9月期に実質民間最終消費が持ち直しているにも関わらず、実質GDPがマイナス成長になったのは、97年7月に発生したアジア通貨・金融危機にある。この影響で実質輸出等が4〜6月期の3.9%増から、7〜9月期は1.0%減と、輸出が減少したからである。


 そして、実質輸出等が減少したことで、実質民間最終消費も10〜12月期以降は再び減少に向かった。結果、97年度の実質GDPはゼロ成長、08年度は1.5%減のマイナス成長に陥るほど、不況が深刻化した。加えて、当時はまだバブル崩壊の後遺症が残っていたため、97年11月には三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券など大手金融機関が相次いで経営破綻した。07年度はこれらの経営破綻と消費税増税が注目されるが、アジア通貨・金融危機があったことを忘れてはならない。


 3%から5%へ2%の引き上げで、07年度の民間最終消費は実質で1.1%減、名目で0.3%増であり、消費抑制に働いたことは確かである。現在は07年当時よりも所得の伸びが低いため、より影響は顕著になると予想される。


 増税分を強い社会保障に使っても、国民に強い社会保障政策への信頼を得るには時間が掛かる。短期的には、消費抑制による日本経済へのマイナスの影響は避けられない。現在は、それを短期間で克服できるほど日本経済の足腰は強くない。一方、欧州の危機は長期化しそうで、前回と同じ轍を踏まないように考えれば、短期的に消費税増税ができるような環境になるまでには時間が掛かりそうである。
2007年4月からの消費税5%への引き上げ前後の実質GDP成長率の推移


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| 2010年08月01日 | 政策 | comments(0) | - |
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