スポンサードリンク

今回も官僚依存で作成された新成長戦略

 菅首相新が主張する「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」を実現する「新成長戦略」が発表された。この中で、7つの戦略分野を取り上げ、実行計画の工程表を示し、2020年度までの経済成長率を名目GDPで3%、実質GDPで2%を上回る経済成長を目指すとしている。

 これに対して、ほとんどが自民党政権時代の焼き直しで、実行計画の政策に必要な金額やその財源の裏付け不足、経済成長を実現するの数値の根拠が不明、などいろいろな批判がある。特に、経済成長率に関しては実現を疑問視する意見が強い。

 名目GDPの推移をみると、1997年度に514兆円で一度ピークになり、これを上回ったのは10年後の07年度の516兆円で、最近時の09年度は476兆円、07年度を7.4%も下回っている。また、実質GDPは07年度の562兆円をピークに09年度は531兆円、対07年度比で5.5%減になる。バブル崩壊後の90年度からピークの07年度までの17年間でみると、名目GDPと実質GDPは年率でそれぞれ0.8%増、1.4%増であり、これからみれば、新経済戦略の経済成長率は高いといえる。

 過去の数字との比較で実現を疑問視するよりも、基本的な問題がある。従来から、このような政府の計画では、取り上げる戦略分野で産業と市場が混在し、整理されずに並べているため、一般の国民には分かり難いものが多い。その背景には、官僚依存で作成しているため、各省庁の政策が横並びになることがある。菅首相、民主党の主張の文言は含まれているが、政権が代わっても、政治主導による国民に分かりやすい内容にする努力がなされていない。また、政策効果を短・中期的と長期的に分けていないことや、労働力、生産性と成長率の矛盾の解決からも逃げている問題もある。

 新経済戦略では、7つの戦略分野として「グリーンイノベーション」「ライフイノベーション」「アジア経済」「観光・地域」の4つの成長分野と、これらを支える基盤として「科学・技術・情報通信」「雇用・人材」「金融」の3つを取り上げている。成長分野のグリーンイノベーション、ライフイノベーションは産業分野になり、アジア経済は成長するアジア地域を輸出市場とし、観光・地域は観光産業を地域の活性化に結びつけ、観光産業の供給者として地域に期待している。当然、アジアはグリーンイノベーション、ライフイノベーションの市場になり、地域はグリーンイノベーションの担い手でもあり、それぞれ役割は異なる。

 経済発展を牽引する産業や産業の担い手とその市場としてのアジアや地域は整理して書かなければ、一般の人には理解しにくい。一方、基盤では特に、雇用・人材で「待機児童を解消」や「出産・子育て後、働くことを希望するすべての人がしごとに復帰」は短・中期の経済対策になる。ところが、「質の高い教育による厚い人材層」の育成は長期的には効果があり、重要な政策でも、2020年度までの経済発展にはほとんど関係しない。つまり、20年度以降の長期の経済発展のために20年度までにやる政策になる。

 また、実質の経済成長率は就労人口増と一人当たり生産性の伸びの和になる。就労人口は労働力人口が上限になり、人口減社会では労働力人口も増えない。このため、新経済戦略では若者、女性、高齢者の就業率を高め、「こうした取組により、就業が最大限促進されるとしても、2020年度の就業者数は現在の水準を下回る見込み」としており、就業者数の減少を予想している。

 そして「2%を上回る実質成長率を実現するためには、それを上回る労働生産性(GDP/就業者数)の伸びが必要である。今後の成長産業には、労働生産性が必ずしも高くない分野が含まれていることも踏まえれば、規制・制度の改革等に取り組むことを通じ、全ての産業において、労働生産性を高めていくことが不可欠である」と指摘している。

 つまり、労働力・就業者が少なくとも横這いとすれば、2%の経済成長率を実現するためには毎年2%の生産性の向上が必要になる。ところが、人手不足がいわれ、成長分野として期待される介護にみられるように、労働集約型のサービス業は生産性の伸びは低い。新成長戦略も年率2%、10年間で2割以上の生産性の上昇の実現は難しいことを認めている。とすれば、労働力・就業者不足を補うために外国人労働力の導入が課題となるが、これに関しては、反対が根強いためか、全く触れられていない。少なくとも、経済成長に対して労働力に懸念があることを指摘し、もっと正直に書く必要がある。

 国会議員でも新経済戦略を読んで理解できる人は少ないと考えられ、分かりやすい構成・内容にする必要がある。

GDPの推移

※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。PDFファイルにて経済レポートを入手した方は、こちらをどうぞ。

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る
| 2010年06月27日 | 政策 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 今回も官僚依存で作成された新成長戦略 | 経済への視点. All Rights Reserved.