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鉱工業生産は先行ピークを回復できるか

  2010年3月の鉱工業生産指数(速報、以下生産指数)は前月比0.3%増の微増になった。1月の同4.2%増から一転し、2月に09年2月以来13カ月振りマイナスの同0.6%減であったことと合わせてみれば、急速な回復傾向から横這いの一服状態になったといえる。ただし、4月の製造工業予測は3.7%増の再急伸で、5月は0.3%減であり、横這い状態は一時的でも、急回復状態の終了が明確になった。今後は、生産指数は1月までの急速な回復が終わり、需要の伸びに合わせた穏やかな回復軌道に移行したと判断できる。

鉱工業生産指数の推移

  今回の景気循環における生産指数の推移を振り返ると、0710月がピークになり、その時の生産指数は110.0だった。その後、08年9月までは微減基調で推移していた。ただし、08年2月に110.10710月を上回ったが、これはうるう年による一時的な水膨れであり、実質的な先行ピークは10月と考えられる。以下、10月の110.0をピークの生産水準とする。

 その後、微減が続き、08年9月の生産指数は103.6になり0710月からの11カ月間で5.8%減に留まっていた。その直後の10月から、世界経済の落ち込みによる輸出の急減を受けて、生産指数も墜落といえるほどの急降下になった。この状態が09年2月まで続き、2月の生産指数は71.4にまで急落して止まり、ボトムになった。ここまで08年9月からのたったの5カ月間で31.1%減、対0710月比では35.1%減である。

 落ち込みは激しかった反動で、回復は急速になった。最近時ピークの10年1月の生産指数は94.3になり、09年2月からの11カ月間で32.1%増の急伸である。この異常な伸びの要因は、在庫変動にある。最終段階での需要が増加から減少に転じても、生産、出荷が直ぐには減少しないため、生産・流通段階に在庫が積み上がり、在庫調整が必要になる。

そして、在庫を減らすには需要減以上の減産が不可欠になるため、生産の減少速度は需要の速度以上になる。逆に、在庫調整が終了し、需要が穏やかでも増加すれば、当然、今度は需要増による増産がある。加えて、切り下げ過ぎになった在庫補填による在庫積み増しのための生産も必要になり、回復初期の生産の伸びは大きくなる。

 今回、輸出は過去に例のないほどの減少であり、生産指数が大幅に落ち込むことになった。逆に、年間で3割以上の伸びという生産回復速度は、かつての高度成長期をも超える猛スピードになる。この状態がいつまでも続かないことは誰でも分かるわけで、どこかで正常な速度に戻ることになる。その分岐点が10年2月になった。

 今後は需要の伸びに合わせた回復速度が予想される。実質GDP成長率は内需に期待できず、欧米に本格的な景気回復が予想できなければ、中国依存の輸出だけでは、よくて年率2%台程度になる。結果、生産指数の見通しは30%台の高成長から、需要回復・拡大要因によるが、高くても3、4%程度の成長にとどまる。もちろん、実質GDP成長率成長率が加速していけば、生産指数の伸び率が高まる可能性はある。

 生産指数は先行ピークの0710月から、ボトムの09年2月には36.8%減になった。そこから10年1月で32.1%増、3月で31.7%増だが、10年1月でも対ピーク時の0710月比で14.3%減、3月で14.5%減である。この段階で年率3、4%程度の成長率に減速すれば、生産指数が先行ピークを回復するまでには4、5年掛かる。

一方、戦後最長の景気拡大期を記録した前回で69カ月である。すでに13カ月の拡大期が過ぎていることから計算すれば、前回と同じ景気拡大期になったとしても、残りは4年半ほどである。現実には回復速度も拡大期間も期待できないため、生産指数が先行ピークを回復できない可能性は高いということになる。

これは必ずしも悲観的にみる必要はない。先進国日本の産業構造の第3次産業化、サービス経済化がいわれて久しいが、それが生産指数の推移に反映しているだけである。

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| 2010年05月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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