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賃金は引き上げられないか

 今春闘の大企業の回答が出始め、予想通り賃上げは厳しい結果で終わりそうである。現状では、大企業は定昇のみで賃上げはない代わりに、一時金、ボーナスは少し増やす程度に留まる見通しになる。これでは中小企業を含めた勤労者全体の所得増はほとんど期待できない。

 景気は200710月をピークに下降に向かい、昨年の09年2月をボトムに回復している。昨年までは景気回復に懐疑的な声があり、また、今年は2番底を予想する見方もあったが、ボトムから1年ほど経て、回復力は別として、当面は景気回復が続くということではほぼ意見が一致してきた。景気回復は企業収益に顕著に現れており、日本銀行「全国短期経済観測調査(短観)」でみても、08年度下期をボトムに急回復している。ただし、企業収益が急回復といっても、09年度下期見通しでも利益水準は低い。

 企業収益からみれば、今春闘の結果は仕方がないように思える。しかし、企業収益はフローであり、ストックの企業余剰金の積み上がり状態からは別の姿がみえる。財務省「法人企業統計」(除く金融保険業)の従業員給与総額(含む賞与)は資本金1千万円以上の全企業で、90年に100兆円に乗せ、99年に138兆円まで増えた、これをピークにその後の不況で減少になった。

 そして、02年からの長期的な景気拡大で再上昇なったものの、今回の景気後退で07年の142兆円がピークなった。09年は133兆円で、これは9596年の15年ほど前の水準である。また、四半期別の前年同期比でも最新データの091012月期までマイナスである。結果、従業員給与総額8909年の20年間で44.6%増になる。ピークの07年の18年間でも54.3%増である。

 また、20年間を資本金1億円以上の大企業と、同1千万〜1億円未満の中堅、中小企業に分けると、前者は49兆円から63兆円、28.6%増、後者は43兆円から69兆円、60.5%増である。

  一方、資本剰余金と利益剰余金を合わせた剰余金は各年末の全企業で、この20年間に140兆円から389兆円へと、2.8倍に急伸である。ただし、この間は年ベースでは一直線増加だが、四半期ベースでは不況による企業収益の悪化で、0812月末と09年3月末に2四半期連続で減少している。ちなみに、09年の従業員給与総額は資本金1千万〜1億円未満企業が同1億円以上企業を上回っているのとは逆に、09年の剰余額は1千万〜1億円未満企業の120兆円に対し、1億円以上企業は2倍以上の269兆円である。

 剰余金の増加はこの間に誕生した企業の剰余金増効果はあると推測されるが、89年段階で20年以上の歴史のある企業でみても、近年は積極的に剰余金をため込んだと推測できる。

 日本経済の成長性が低下しているため、設備投資を抑制したことが剰余金急増の要因の一つに挙げられるとしても、従業員の給与を抑制してきた効果は否定できない。特に、資本金1億円以上の大企業は「法人企業統計」から給与を抑制し、その分を余剰金として貯めている構造が窺える。

 企業が一定の剰余金を必要とするとしても、急速にこれだけの剰余金を貯め込む理由は分からない。資本金1億円以上の大企業の剰余金は89年の従業員給与総額の2倍程度から、09年は4倍以上に増えている。これから考えれば、長期的な給与水準の切り上げになるとしても、何%かの賃上げを実施できるだけの体力はあるといえるのでは。

従業員給与総額と剰余金の推移
JUGEMテーマ:ビジネス


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| 2010年04月01日 | 所得 | comments(0) | - |
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