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景気効果は賃上げより正社員化

 今年も春闘の季節がやってきた。日本の景気は2007年度後半から08年度にかけての急落から、09年度にはいって回復基調にあるが、急落とは対照的に回復は穏やかである。この間、企業収益は08年度に減益、なかでも製造業は過去に例がないほど大幅な減益になった。09年度は増益傾向でも景気を反映して回復力は弱く、水準としてはまだ低水準に留まっている。


 このため、経営側の姿勢は厳しく、労働側も弱気で、賃上げに関しては、すでに勝負は付いた感がある。もともと、景気の良いときでも低い賃上げしか実現できず、個人消費の回復力は弱いままだった。今回は賃上げどころか、定期昇給も中止の雰囲気である。定昇は勤務年数による経験を能力向上として評価している面があり、これから考えれば、定昇の中止は実態としては賃下げである。


春季賃上げ率と現金給与総額の伸び率の推移
JUGEMテーマ:ビジネス
  近年の低い賃上げ率は、大企業の主要企業で02年から1%台の賃上げ率が続いている。景気の長期上昇で賃上げ率が上がったといっても、ボトムの03年の1.63%から、ピークになった08年でも1.99%でしかなく、2%にも達していない。

 かつては、先行する大企業の賃上げ率を基準に、中堅企業、中小企業が決まるという構造があった。大企業で1%台の賃上げ率では、中堅企業、中小企業はほとんどゼロになる。

 一方、春季賃上げ率と実際の給与とは乖離現象が生じており、春闘の影響力は低下している。中小企業が低いといっても、この間は中層企業も含めた賃上げ率がプラスになっているのに対して、厚生労働省「毎月勤労統計」で、中小企業も含まれる5人以上事業所の現金給与総額の前年比伸び率は、01年からマイナス基調で推移している。05、06年はプラスだが、それぞれ0.6%増、0.3%増でしかない。特に、09年は3.9%減の大幅マイナスで、09年の主要企業の春闘賃上げ率1.83%との乖離幅は5ポイント近い。09年1〜3月期は08年度になることを考えれば、実際の乖離幅はより大きくなる。

 乖離の要因は、残業手当や一時金が景気の影響を受けて、大きく変動することが挙げられる。もちろん、賃上げ率と現金給与総額の伸び率は、景気によって上下が入れ替わる。ところが、常に現金給与総額の伸び率が賃上げ率より低くなっている。これは、低賃金の非正規雇用増という構造的な雇用形態の変化を反映している。

 日本経済は外需主導から内需主導への転換が求められ、そのためには個人消費を伸ばす必要があるというのが、労働側の賃上げ要求理由の一つになる。しかし、内需拡大には賃上げでなく、現実に労働者が受け取る現金給与総額の拡大が必要条件になる。

 過去の推移から明らかなように、賃上げは現金給与に反映していない。賃上げよりも、パート、期間工、派遣等の非正規労働者の正規化、正社員化の方が現金給与総額拡大になる。

 当然、非正規労働者の正社員化は人件費増になる。経営側は強く抵抗はするため、実現するには正社員の賃下げが必要になる。もちろん、それで全体の賃金が下がっては意味がない。それでも労働者全体では現金給与総額を増やす戦略が求められる。実現不可能にみえるが、正社員の賃下げを前提に契約社員を正社員にして、全体の賃金が増えた広島電鉄の例がある。

 春闘の最中にトヨタのリコール問題が発生し、賃上げにはマイナス要因になる。一方、品質問題の背景に非正規労働者増を指摘する意見もある。身分の違う労働者が一緒に働いて、品質の良い製品が作り難いことは十分予想される。非正規労働者の正社員化にとっては好機と考えられる。最後は、広島電鉄のように賃下げを覚悟して経営側に当たれるかどうか、組合員の賛同を得るために執行部が腹をくくる覚悟が問題になる。


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| 2010年02月28日 | 雇用 | comments(0) | - |
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