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出生数の景気の影響と子供手当の効果

 民主党政権が成立したことで、中学生以下の子どもに月額2万6000円を支給する子供手当が来年4月から実施される可能性が高くなった。育児費用を国が負担する子供手当は、出産を増やす少子高齢化対策と内需拡大による景気対策の効果が期待されている。景気対策面では、支給開始時に刺激効果になっても、その後は手当を増額しないかぎり、景気拡大効果は一時的で、景気を引き上げ続けるわけではない。

 民主党政権が子供手当を長期的に支給する主たる目的は、出生数の増加にある。出生数は出産年齢の女性人口と女性の生き方、そして景気に影響される。人口に関しては、当然、一夫多妻制でなければ、男性人口も女性同様に関係するが、通常は男女比率はほぼ一定になる。出産年齢の女性人口は人口が増えていれば増加するので、人口の増加が出産年齢の女性人口を増やし、逆も同様で、相乗効果で増加や減少を加速する。ただし、生産年齢は女性の健康状態や社会習慣などによって変わるため、生産年齢人口比率は明確ではない。

 また、生き方に影響を与える要因にもいろいろあるが、ここでは経済的要因を取り上げる。育児期間の長さから考えれば、出生数は長期的な家計、つまり経済展望が影響する。ただし、長期的といっても、長期の現実の経済ではなく、出産・育児を考える時に、国民の雰囲気が長期的にどうみているかによる。といっても、実態は短期的な景気循環による経済の推移、その時々の景気と見通しが国民の長期的な雰囲気を形成、つまり景気がよい状態が続けば、長期的にも楽観的になり、逆も同じと考えれば、短期か短・中期的な経済状況に依る。
出生率の推移

 結局、出生数は短期的な景気による雇用・所得の影響を受けて短期的に変動する。それが積み重なって景気による長期の影響になる。もちろん、妊娠期間があるので、出生にまで反映するまでには景気から遅行する。加えて、景気循環から景気実感が遅行するのを考慮すれば、景気と出生数の時間のずれ、タイムラグはかなり大きくなると推測できる。近年、企業は収益が好転しても、労働者の賃上げや一時金に反映させるのを遅らす一方、収益悪化は直ぐに反映させるため、景気回復時にはタイムラグは長く、後退時には短くなる。

 実際の出生数は長期的な趨勢として減少傾向のなかで、1990年代は年間120万人前後で推移していた。ところが、2000年代にはいって、顕著な減少傾向になり、05年には106万2,530人まで減少し、06年に109万2,674人に増えている。02年1月の景気の底から4年ほども経って出生数が増えたが、景気回復の実感が広がってきたのが04年頃であったことから考えれば、不思議ではない。

 逆に、景気の天井は07年10月だが、出生数は07年108万9,818人、08年109万2,000人とほぼ横這いである。07年はまだ景気が良かったわけで、それまでの出生数からみて、07年はまだ低過ぎるといえ、むしろ増えるのが自然である。出生数が増えないのは所得格差拡大、正規雇用の採用抑制による雇用不安などがその背景にあると推測される。07年10月までの景気拡大が戦後最長であっても、国民は長期的な経済の見方を明るくみれなかったわけで、出生数を増やす効果には限界があった。

 また、08年の出生数を月ベースで07年と比較しても、特に減少せずに推移している。ところが、09年で発表されている8月までをみると、09年は6月を除いて08年を下回っている。上回っている6月も08年の9万107人に対し、9万231人で、124人上回っているに過ぎない。1〜8月の平均では08年の9万2,892人に対し、09年は9万1,066人、前年比2.0%減となっている。これを年ベースにすると、09年は107万534人になり、減少傾向は明らかで、景気が下降局面に入ったのを反映している。ちなみに、07年の1〜8月の平均は2万2563人である。

 このような出産・経済環境下、月額2万6000円の子供手当が支給されることになるが、子供の居る家計には収入面でプラスになり、個人消費拡大効果は見込める。一方、出生数の増加効果はあっても11年からになる。ただ、子供手当を目的に出産する人は例外と考えられるので、育児を含めた生計を考えれば、長期的に雇用が保障されるような職場で、賃金が平均より少し安い程度の人に効果が予想される。しかし、現実には長期的に雇用が保障されるような職場は、少なくとも平均的な賃金は保証されている。

 つまり、雇用が保障される正規雇用を増やすために、出産数を増やすためには派遣社員を制限する政策は正しいといえる。しかし、現実に景気が安定的に成長する見通しがなければ、企業も正規雇用の拡大には踏み切らない。政府が雇用拡大といっても、正規雇用の国家公務員を増やすことは可能でも、民間が増やすようになるには経済成長を高めるしかない。ところが、国家公務員でも非正規雇用が増えているのが実態で、このような状況であれば、将来に希望の持てる国民を増やせない。子供手当は出生数を増やす効果はあるしても小さく、長期的な出生率の低下を食い止めることはできない。当然、これから正式に手当の支給が決まっても、10年は出生数が減少基調で推移するのは避けられない。


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| 2009年11月01日 | 政策 | comments(0) | - |
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