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景気循環による景気回復と実感ー景気の方向と水準

 短期の景気循環は在庫調整によるため、生産に反映される。鉱工業生産指数が2月に底打ちしたことで、景気は2月が底と判断できる。政府も6月頃から景気は回復に向かっていると発表しているが、景気の底打ち、回復しているという見方には批判が強い。一つは、景気回復の実感はないという見方で、マスコミに多い。これには政府が衆議院選挙を控えて景気回復を宣伝することで、選挙を有利にするためという推測もある。もう一つは、今の景気回復は一時的で終わり、再度、景気は下降する、またはその可能性が強く、2番底があるという専門家の意見である。


 最初の景気回復の実感がないのに、景気回復といわれても信じられないというのは、景気循環による回復と実感に差があるためである。これは特に、不思議なことではない。例えば、企業は収益が大幅な赤字から、赤字でも赤字幅が縮小すれば、収益はプラスの方向にあるので、統計でみれば、底入れになる。しかし、企業は赤字であれば、回復感はなかなか生まれない。やはり、黒字、それも黒字状態が定着しなければ、回復感が出てこない。個人であれば、残業が増えて、残業代で収入が増える、さらにはボーナス、基本給が増えるところまで行かなければ、景気が良くなったとは言わない。景気の底入れから回復を感じるまでには時間が掛かる。



法人企業統計・企業収益

 つまり、景気の上下は方向を示し、低水準でも景気が上向けば底入れになる。これに対し、景気の実感は景気の水準による。ある程度水準が上がってこなければ、景気回復を実感できず、乖離状態が長引くことになる。また、産業・企業間の跛行性が大きく、一部の産業・企業が好況で景気を牽引しても、多くの産業・企業が不況状態であれば、全体として好況感が広がらないということもある。当然、回復の速度によって乖離状態の解消までの年月は変化する。近年、経済成長率の低下によって乖離状態は長期化する傾向にある。


 前回の景気循環では、2002年1月を底に回復したが、今回と同様に当初は回復という判断に批判が強かった。私の記憶では、回復が一般的に認められるようになったのは04年以降で、それまでと比べても解消までの年月は長かった。これを財務省「法人企業統計」(金融業、保険業を除く全規模企業)の営業利益でみると、前年同期比で01年10〜12月期の31.1%減が最も落ち込み幅が大きく、景気の底入れを映して02年1〜3月期は16.6%減である。そして、02年7〜9月期には11.7%増とプラスになっているが、まだ景気回復感は広がらなかった。


 営業利益は季節によって変動があるが、同7〜9月期の営業利益は7.8兆円で、それ以前の好況期には10兆円前後あり、回復していても営業利益の水準はまだ低かった。そして、年度末で利益額の多い03年1〜3月期に11.2兆円になったが、続く4〜6月期、7〜9月期には8兆円台に下がり、10〜12月期以降は10兆円台で安定的に推移するようになった。これ以降、景気回復が広く認められるようになってきた。


 営業利益のピークは07年1〜3月期の16.3兆円で、07年10月に景気がピークを打ったのを反映して、07年10〜12月期以降は前年水準を下回っている。景気が底になる09年1〜3月期は80.8減の2.7兆円でしかない。これから回復感が広がると推測される約4倍の10兆円の水準になるには、かなり時間がかかる。当然、4〜6月期、7〜9月期に回復感がでてくることは予想されず、景気が底入れ、回復しても、実感が伴わないのは今までと同じである。


 これから考えれば、政府は「景気は底入れした。しかし、国民が実感できるまでには至っていない。今後も景気回復を確かなものにし、国民が実感できるように経済政策を行う」、または「景気回復力が弱くても、国民が安心して暮らせるように年金、保険制度を改革する」と説明し、その実行が求められる。現実には、その可能性はない。


 一方、専門家が懸念している2番底の可能性は少ない。2番底を予測する主たる理由は、現在の景気回復が政府の政策効果による需要の先取りでしかないというものである。効果が出尽くせば、再び、需要が反動で低下し、2番底になると判断する。当然、政策効果一巡によるマイナスの影響は予想されるが、それでも09年2月の水準を下回るような減産が再度発生することは考えられない。一方、輸出が力強さに欠けても、回復に向かっている。内需が弱含みになっても、外需による下支え効果が期待できる。急上昇している鉱工業生産が再び減少しても、小幅でせいぜい1四半期の減少程度にとどまり、2番底という事態には落ち込まないと考えられるからである。


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| 2009年08月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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