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輸出は2月が底でも、回復力が課題

 昨年秋以降、急落していた輸出は鉱工業生産と同様に2月が底に回復傾向にある。鉱工業生産の底打ちは減産による在庫調整の進展した結果だが、輸出が回復に転じた効果もある。輸出の動向は財務省「貿易統計」の輸出数量指数で推測できる。


 輸出数量指数は2008年6月に前年同月比で1.5%減と前年水準を下回り、翌7月は8.9%増と盛り返して浮上したが、8月の1.1%減以降は水面下に潜ったままである。それも、水深はどんどん深くなり、10月までは1桁台の減少だったが、11月には22.7%減、さらに09年1月には45.4%減とほぼ半減である。しかし、その後は2月を底に、3月41.1%減、4月35.9%減、5月36.0%減と減少に向かった時と比べれば遅々たる速度で、5月は回復中断気配がみられるが、減少幅は縮小傾向にある。



地域別輸出指数の前年比伸び率の推移
 輸出市場の主要国・地域別でみると、米国は07年から減少していたのが、08年8月以降は2桁台の減少になり、09年2月の55.5%減を底に、3月49.5%減、4月49.4%減、5月46.8%減である。また、EUは08年9月から減少基調になり、最大の落ち込みは09年3月の49.6%減で、4月42.8%減、5月40.2%減で、いずれも回復速度は遅くても回復基調がみられる。


 アジアはこれらの地域以上に顕著な改善がみられ、これが輸出全体の底入れを確実なものにしている。アジアは他地域よりも遅く08年10月から減少になり、09年2月が最大の落ち込みでも、40.6%減にとどまる。その後も、3月33.8%減、4月28.8%減、5月27.3%減と減少幅の縮小が目立っている。当然、アジアも今回の金融危機の影響を受けているが、中国にみられるように景気対策効果が現れており、日本の輸出にも波及しているといえる。


 08年度の輸出実績では、全体で71兆1,449億円、うち米国12兆876億円、17.0%、EU9兆7,071億円、13.6%に対し、アジアは35兆5,690億円、50.0%と半分を占めている。中国だけでも11兆7,612億円、16.5%もあり、中国は09年2月以降は米国を上回っており、今年度には米国を抜いて最大の輸出相手国になるのは確実である。
 米国、EUの景気回復、ひいてはこれらの国・地域への輸出に期待が持てなくても、少なくとも横這いであれば、半分を占めるアジアの回復で、輸出の減少幅の縮小、つまり回復傾向の持続が期待できる。今後は、輸出が前年水準を上回り、日本経済に景気回復を感じられるようになる時期に関心が移ってくる。


 ただ、日本からのアジア向け輸出の中身は、最終製品に組み立てて米国に輸出するための素材や部品などが中心、つまり間接輸出構造という問題がある。このため、景気対策による公共投資効果で、アジア地域の景気が回復しても、日本への輸出拡大効果は小さい。結果、同様に2月に底入れした鉱工業生産指数の回復力も弱いことになる。


 公共投資では鉄鋼やセメントの需要になり、鉄鋼やセメントの日本からの輸出は限定的だからである。公共投資主導の景気回復では、日本の輸出に結び付くのは公共投資関連の土木建設機械のほか、消費拡大による一部の消費財とその部品程度で、輸出への波及力に乏しい。結局、日本からのアジア向け輸出が本格的に回復するには、米国経済頼みの面がある。


 米国経済が回復することで、日本は米国への直接、間接の輸出が増え、景気回復感も出てくる。個人消費の比重の高い米国経済は、個人所得増や借入能力回復が必要条件になる。現状はまだ失業者増に歯止めが掛からない状態であり、個人消費、経済の回復が始まる段階にはない。米国経済がこのような状況では、輸出が底入れしたといっても、日本で回復感が広がるまでにはまだ時間が掛かる。

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| 2009年07月01日 | 貿易 | comments(0) | - |
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