スポンサードリンク

家計の資産運用は強い安定志向

 現在の経済危機からの脱出に民間の知恵を借りるため、各界の有識者83人が意見を述べる政府の有識者会議が、3月16日から19日を除いて21日までの5日間、開催された。その中で、有力な不況対策として、高齢者の金融資産を消費に回すようにするというのがある。資産を保有するのは高齢者が多いため、このような意見がでてくる。従来から、日本には個人の金融資産が1,500兆円もあり、これを経済活性化に利用しなければという意見は根強い。


 具体的にはグローバル化時代は直接金融でなければ経済が効率性できないとして、間接金融から直接金融への転換が必要とされた。そのためには、個人・家計はリスクは少ないが、金利の低い、ほぼゼロ金利の預貯金から、株式、投資信託などのリスクは高いが、高い投資収益が見込める金融商品で資産運用、いわゆる“貯蓄から投資へ”という主張である。効果として、個人は貯蓄のゼロ金利では資産は増えないが、投資収益で資産を増やし、老後は安心して豊かな生活を過ごすせるという。日本銀行の長期にわたる低金利政策は、国民を投資活動に向けるための支援にもなっている。


家計の金融資産残高の推移
 日銀「資金循環統計」の2008年末の数字が発表された。これによると、家計の金融資産は全体で07年末の1,520兆円から1,434兆円、86兆円、5.7%減と大幅減少になった。、04年以来の1,400兆円台に下落した株式・出資金が07年末の146兆円から、08年末は87兆円に、59兆円、40・4%もの大幅減少になったからである。この間の日経平均株価は1万5,307円から8,860円へと42・1%減であり、もちろん、日経平均と家計資産の株式・出資金が同一ではないが、ほぼ見合っている。また、比較的リスクの少ない投資信託は72兆円から48兆円へと33.3%減と小幅に留まる。


 一方、06〜07年末の下落幅は株式・出資金が11.1%減で、日経平均の26.6%減よりは減少幅は小さい。投資信託は逆に61兆円から72兆円へと18.0%増で、これらは株価との相関性は小さい。ちなみに、家計資産の株式・出資金のピークは最近時では、日経平均が1万7,228円で近年の年末時ピークになった06年末の199兆円である。


 一方、現金・預金は04年末の783兆円をピークに、05年末781兆円、06年末778兆円へと、2年連続で減少になった。この間、株式・出資金は117兆円から199兆円へと70.1%増、投資信託も35兆円から61兆円、74.3%増であり、預貯金から証券へと家計の資産運用に変化したということができるかもしれない。


 しかし、これはたまたま株の上昇期であったため、投資しないで保有する株式数は増えていなくても、額面が増えただけといえる。また、現金・預金の減少も証券に向けたのではなく、所得が増えないため、生活水準維持に取り崩したということもできる。


 逆に、07年末、08年末と2年連続で株式・出資金が減少する一方、現金・預金は784兆円、792兆円に増え、08年末の792兆円は過去ピークの04年末を上回っている。所得が増えない中で、預貯金を増やしていることがうかがえるが、株式の値下がり傾向から、投資資金を引き揚げて預貯金に回したといえる。しかし、これであれば、株式・出資金や投資信託の減少幅が日経平均からみて、もっと大きくなると推測される。むしろ、06〜07年末の投資信託は増えていたことから、投資資金を引き揚げたとはほいえない。


 家計の金融資産に占める現金・預金の比率は最も低い時で06年末の50・1%と過半数を維持している。ちなみに、08年末は55.2%である。同様に、安定資産である保険・年金準備金は金額で増え続けており、08年末には28.0%もある。現金・預金と保険・年金準備金を合わせれば、05年末でも75.7%と4分の3を占め、“投資の時代”と笛を吹いても、06〜07年末の投資信託が増えていることからその効果があったといえるが、それは一時的であり、国民の資産の安定運用指向は強いと考えられる。資産に十分余裕ある人は別として、このような行動は不思議ではない。


 年金制度もどうなるか解らない将来不透明状態で、雇用不安も生まれた環境で、消費抑制がより強化されている。そして、この間の株価の値下がりでリスクを感じた個人は、消費拡大よりも、より以上に現金・預金に向かう可能性が高い。結局、投資から貯蓄へであり、現在の金融危機をみれば、間接金融の見直される可能性がある。


※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
 PDFファイルにて経済レポートを入手した方は、こちらをどうぞ。



コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る
| 2009年04月01日 | 金融 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 家計の資産運用は強い安定志向 | 経済への視点. All Rights Reserved.