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自民党総裁選、各派に何が求められるのか

 内需が冷え込んでいるのに加え、輸出が失速してきたことで、景気がピークを打ち、下降局面にあることが明確になってきたなかで、福田首相が突然、辞任を表明した。5人の候補者が総裁選挙に名乗りを上げて争った結果、麻生氏が新総裁に選ばれ、新首相に就任した。マスコミは経済政策で上げ潮派、財政再建派、積極財政派などに候補者を色分けしているが、総裁選の中ではそれら政策に基づく議論が明確ではなく、国民には評価しにくいというのが実情といえる。もちろん、評価してもほとんどの国民は総裁選に参加できないが、どの候補者が選ばれれば、自分達の生活がどうなるかを考える一助にはなる。


国債等推移
 今までは上げ潮派の小泉政権が続いたが、規制緩和がその基本とすれば、その本格的な契機は橋本政権による1998年の日本版ビッグバン(金融制度改革)になり、10年ほどの上げ潮派の経済政策が進められてきたことになる。基本的には小さな政府を目指して財政支出を抑制する一方、規制緩和、減税によって民間の活力を引き出すことで、日本経済を発展させ、財政を再建するという戦略である。そのシナリオは規制緩和、減税で企業活動、起業活動が活発化し、雇用も伸びて、民間設備投資、個人消費、住宅建設などが盛り上がり、日本経済が成長して税収が増え、支出抑制と合わせて財政収支が改善するとなる。


 今景気循環の景気のピークは内閣府によってまだ確定されていないが、私が今年の3月1日付のこの経済レポートに書いたように07年10月がピークとして、02年1月のボトムからほぼ6年にわたる戦後最長の景気拡大にもかかわらず、国の負債(国債、借入金、政府短期証券、政府債務保証の合計)は増加額がようやく頭打ちになってきた程度である。期待の内需が伸びず、輸出依存の経済成長で、成長率が低水準にとどまったことにある。輸出が伸びたのは上げ潮派政策で民間活力を引き出した効果というかもしれないが、この間の輸出を支えた産業は以前からのもので、特に政策効果で新しく育った輸出産業は見当たらない。輸出の拡大は米国を中心とする世界経済が成長した恩恵でしかない。


 上げ潮派政策が全面的に採用されてからそれほど時間が経っていないので、政策効果が出るまでには時間が掛かるため、これからという見方もできる。しかし、少なくとも芽でも見えなければ、説得力は乏しい。肝心の国の負債の増加額はこれから不況で税収が落ち込み、再び拡大の方向に向かうことが予想される。


 その一方で、規制緩和は企業が望む雇用形態を可能にしたことで、非正規の低賃金労働者を大量に生んでいる。現状政策が維持されれば、これらの現在20歳台、30歳台の労働者がそのまま50歳台、60歳台まで長期化し、増大することが予想される。結果、政策課題とされる出生率の上昇は達成できず、年金収入も見込めない層の増加は社会不安拡大要因になり、企業、国家にとってもそれが望ましい姿といえるか。また、個人間と同時に地域間の所得の拡大をもたらし、地方の不満が高まったことで、地方で積極財政派とされる麻生氏支持、ひいては総裁選出要因になっている。


 財政再建派とされる与謝野氏は補正予算を否定されていないので、景気の現状を楽観視はされていないようではあるが、財政再建派は財政再建を優先し、そのためには増税が必要ということだが、日本経済の現状が問題になる。引き続き上昇、またはもたつき程度の一時的な景況悪化と判断しているなら、財政再建を優先的に考えることはあり得る。ただし、次から次へと失政が重なり国民に政府への不信が強い状況で、福祉目的でも増税を実施できるかどうかは別である。


 すでに景気が転換していることを認識しないで、小手先程度の景気対策で済ますと、景気の悪化で税収が急速に減少し、目的とする財政再建が遠のくことが予想される。これは11年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を目標とする上げ潮派も同様である。


 積極財政派は当面の経済政策としては正しくても、その内容が問われる。財政支出の経済波及効果が低下している状態、つまり、従来のような財政支出の増加で企業活動が活発化、日本経済の回復は予想されないので、単なる一時しのぎの景気刺激でない政策が求められる。現実には米国経済の低迷が長引く可能性が高いため、日本経済の不況からの脱出も難しいと考えられ、中長期的に財政再建をどうするかが課題になる。何十兆円かの埋蔵金があっても、国の負債全体に比べれば小額であり、一時的財源でしかない。


 現実にはあり得ない上げ潮派の理想型でなければ、民主党の無駄な支出からの転用になるが、これもどこまで財源として確保できるか不明である。高齢化社会を考えれば、増税が不可欠になるが、そのためには国民の政府への信頼回復が必要になる。そうでなければ、いくら景気対策を行っても、国民の財布の紐は堅く結ばれ、内需主導の成長はいつまで経っても実現不可能である。麻生氏は増税を3年後頃と考えているようだが、その時には、国民は生活防衛から増税で少なくなった可処分所得から貯蓄を優先する行動を取るようになり、内需主導の成長はさらに遠のくことが予測される。


 景気政策以外にも、国民と地域の所得格差の解消も課題になる。例えば、景気対策で企業減税が取り上げられているが、人口減少率の高いところへの新規立地、正規雇用者数・比率に合わせて減税率を変えることが考えられる。地方への企業立地誘導で地域間所得と正規雇用化で労働者所得の両方の格差縮小効果を期待できる。後者の減税はでは既存の企業に対しても可能になる。もちろん、財政の所得再配分機能を使うことは基本である。


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| 2008年10月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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