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消費者物価上昇の個人消費への2つの影響

 原油価格の高騰はようやく止まり、小麦の国際価格も値下がりに転じているが、政府の小麦売り渡し価格は値上げ幅を圧縮しても2008年10月も引き上げられることになっており、発表される消費者物価には国際商品市況の値下がりはまだ反映していない。07年10月の小麦価格の改定を契機に、食料品価格の値上げ発表が相次ぎ、また、ガソリン税問題もあって、08年の年明け後、マスコミで物価問題を取り上げることが増え、国民の消費者物価への関心は高まっている。
 インフレを懸念する声は以前から強いが、実際の消費者物価指数の上昇率は前年同月比で2007年10月からプラス基調が定着するようになっただけで、07年を通してみれば前年比横這いである。年明け以降は物価上昇率が徐々に高まっていても、5月までは前年同月比1%前後の増加でしかなく、6月2.0%増、7月2.3%増である。今までのマイナス、横這いの推移からみれば大きな変化といっても、2%台上昇ではインフレというにはほど遠い。また、原油価格や穀物価格が頭打ち傾向になっているため、物価上昇率は現在の基調で高まっていくことは予想されない。それでも、7月の上昇率が消費税率引き上げの影響を除くと、2.5%増であった92年6月以来、ほぼ16年振りと報道されると、不安感が生じることになる。

 7月の前年同月比上昇率を主要品目でみると、生鮮食品を除く食料3.8%増、光熱・水道9.3%増、自動車等関係費8.4%増などの上昇が目立っている。一方で、家庭用耐久財の2.3%減のように、技術革新の効果と企業間競争からマイナスが続いている品目もあり、全体として2%台の上昇率に留まっている。原材料価格が上昇しても、個人消費が低迷から冷え込みをみせる中では、流通業界は値上げ抑制を余儀なくされており、メーカーの値上の発表よりも小売価格の上昇は抑えられている。
 今回の原油と穀物の国際市況の上昇で、ベトナムのように2桁台の消費者物価上昇になるほどインフレ状態の国もアジアにはみられる。ただし、それらの国は経済政策の失敗もあるが、需要圧力が強く、経済成長率が高い国である。逆にいえば、日本は物価上昇が低水準であっても、経済成長率が低い、つまり需要が弱いことが消費者物価上昇を低くしている面もあり、必ずしも評価できない。

 また、物価上昇率が低いことで、景気への影響は軽微とはいえない問題がある。物価上昇が個人消費に与える影響は所得面と心理面の2つある。所得面は、賃金、所得が増えない状態で、少しでも物価が上昇すれば、実質所得・消費にはマイナスになることである。名目の所得の伸びがゼロの状態では、1、2%の物価上昇でもそれだけ実質ではマイナスになる。それよりも、今回は心理面の影響の方が大きいかもしれない。消費者物価指数の上昇率が低くても、それと消費者の物価実感が乖離している懸念があるからである。
 現実は、家庭用耐久財が値下がりしているといっても、たまにしか買わない家庭用耐久財の値下がりの恩恵を感じる機会は少ない。ところが、値上がりが顕著な食料品は毎日購入するため、家計を預かる主婦には日々、肌身に感じる。かつ、節約を心がける主婦には特売が欠かせないが、特売は消費者物価指数には反映しない。ところが、値上げを進めるメーカーは特売用商品の提供を控える傾向にあり、この影響も無視できない。

 原油価格が1バレル=100ドルを超えて歯止め無く上昇し、食料価格の値上げが続いている状態でも、2%台の物価上昇率であり、マクロ的には景気への影響は軽微という見方もできるかもしれない。ところが、主婦の実感では2桁台とまでは思わなくても、10%に近い上昇率と感じている可能性がある。少なくとも、生鮮食品を除く食料の3%台の上昇率よりは高いであろう。主婦は所得の伸びが期待できない環境下、生活防衛の強化に努めていると推測される。

 それが07年10月をピークに景気が後退局面に入ることになった主因と考えられる。消費者物価上昇率は前年同月比で9月までのマイナス基調から10月にプラスになったといっても0.3%増でしかない。つまり、消費者物価がそれほど上昇していない段階で消費に変調をきたしたことになる。主婦の消費行動はマクロの物価上昇を先取りしているといえるのではないか。



消費者物価の前年比推移



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| 2008年09月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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