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地域間経済格差問題を産業動向から考える

 自民党総裁選挙で石破氏が党員票で善戦したことから、地域間経済格差への関心が再び高まっている。地域間格差問題は以前から取り上げられ、1960、70年代は工場の地方分散や地方重視の公共投資の効果から、格差解消に向かうのではと期待されたこともあった。しかし、これは一時的な現象で終わり、80年代以降は為替レートの円高による国内生産の価格競争力の低下や、輸出品の国内生産から輸出先生産への生産戦略の転換などによって、工場の国内から海外移転が進んできた。また、財政問題から公共投資も抑制されるようになり、地域間経済格差が拡大し、再度、注目を集めるようになっている。

 今回の景気回復局面においては、国民全体への回復効果が波及せず、日本の人口減少下での格差拡大で、地域社会の存続を懸念しなければならないところも増えている。対策を考えるために、格差拡大要因を内閣府「国民経済計算」の経済活動別国内総生産の実質産業生産額から分析する。

 経済活動別国内総生産は暦年で発表されており、実質国内総生産(2011年価格)は先行ピークが2007年の504.8兆円になり、その後は2年連続で減少して09年の472.2兆円で底を打ち、10年は492.0億円に回復したが、11年には491.5兆円に微減になった。それ以降は回復、拡大を続け、13年に508.8兆円で6年振りに先行ピークの07年を上回り、16年は522.5兆円である。ちなみに、16年は先行ピークの07年比3.5%増、ボトムの09年比10.7%増である。

 主要な産業(実質生産額)では情報通信業、不動産業、教育、保健衛生・社会事業の4産業がこの間の景気変動に関係なく、趨勢的に着実に成長している。また、製造業、建設業は底の年がそれぞれ09年、19年と差はあっても、ほぼ景気循環に合わせて回復・拡大基調にある。これらの産業が今回の景気回復を支えてきた産業になる。これら以外では、金融・保険業が景気循環に沿った動向になっていたが、16年は前年比でマイナス成長になっており、政府の異常な低金利政策の悪影響が表面化している。

 これら6つの成長産業の要因はそれぞれ異なる。成長を続けている情報通信業は現代の技術革新の中核を担い、成長産業の代表である。今後も成長が期待される産業である。情報通信産業が集積しているのは人材が集まる大都市部になる。

 不動産業は金融緩和、異常ともいえる低金利政策、相続税対策で大都市部を中心に国内需要が増えている。それに加え、海外からも不動産投資が活発化しており、比較的高い成長が続いている。ただし、相続税対策の賃貸アパート・マンションは供給過剰が表面化し、18年にピークを過ぎており、中国からの不動産投資も冷え込み傾向にあるため、遅くとも09年には減少が予測される。

 教育は出生率の低下で若者人口が減少しており、受験や学校教育の分野の伸びは考えられないため、社会人や高齢者に対する教育産業による成長と推測される。となれば、これもユーザーが多く、その求めに応じられる幅広い分野の専門家が存在する大都市部に産業が集積する。

 保健衛生・社会事業の中身は医療、介護、社会福祉などで、高齢化時代に医療と介護が成長分野になっている。07〜16年間で30.8兆円から36.9兆円と20%増になっており、これらの産業の中で最も成長率が高い。ちなみに、2位は不動産業の56.9兆円から62.9兆円の11%増である。高齢化では地方が先行しているが、現在進行しているのは大都市部になり、需要の伸びも高い。

 つまり、これらのサービス産業は地域間格差拡大の促進要因になっており、不動産業を除いて景気循環とは関係なく、人口構成から今後も格差を広げる要因になる。

 景気によって変動している産業で、製造業は輸出の影響が大きく、リーマン・ショックの影響が終焉し、最近は世界景気の拡大で伸びが高まっている。それでも国内での大規模な新規工場建設は見当たらず、輸出増への対応は既存設備の能力増や既存工場での設備増強が中心になっている。地方工場の閉鎖も一巡傾向であり、輸出の増加は地方工場、地方経済にも波及効果はあると推測される。

 しかし、国内の製造業を支えているのは研究開発部門や高度な生産技術を要する分野であり、これらは大都市部かその周辺に立地している。製造業の成長は特に地域間格差を拡大しなくても、縮小させる効果は弱く、良くて中立的と考えられる。もちろん、製造業の生産が長期的に増え続けることは期待できず、世界の景気が転換して輸出が伸びない状況になれば、生産も減少する。

 建設業は11年の関東大震災後の復興投資で東北で需要が増加した。その後はオリンピック需要が東京を中心に、また都市再開発、住宅建設も活発化し、大都市部の中心地域で盛り上がっている。建設需要は最近の地域間格差の拡大要因と判断できる。ただし、住宅建設は18年には一巡傾向になっており、オリンピック需要も19年にはピークを過ぎる。一方、景気が順調といっても実質GDP成長率は年率1%台であり、政府は景気対策のために公共投資に積極的な姿勢を変えないと推測できる。それでも、財政難では限界がある。

 また、金融・保険業は資産運用の重要性が増していることから考えれば、成長が見込める産業だが、現実はそうではないのが生産額の推移から明らかである。今後の動向は不明だが、金融・保険業が成長するとすれば、人材が集まっている大都市圏、特に東京圏を発展させる要因になり、地域間格差拡大を促進することになる。

 以上から判断すれば、不動産業を除いて基本的に成長を続けている3つのサービス産業需要の特性から、人口が集積し、サービスを提供する人材が豊富な大都市部が相対的に成長すると予測でき、地域間格差の拡大が今後も続く見通しになる。もちろん、大都市部から地方に移住したい人や地方に住み続けたい人は存在する。また、この傾向が環境問題、国土保全、食糧自給などから望ましいは思えない。地方では仕事が少なく、所得水準も低ければ、現在の地域間格差拡大の傾向が続くことになる。対策が必要で、地方で生活したくなるように、低家賃の快適な生活ができる公共住宅の提供、公共施設の充実などの一方、地方でも作業が可能な国の仕事は、効率が悪くても地方企業に発注するなど、生活環境の改善と就労の場の確保が必要になる。

経済活動別国内総生産(実質、2011年価格)の推移

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| 2018年10月31日 | 地域経済 | comments(0) | - |

復帰40周年を迎えた沖縄県経済の現状と課題

  沖縄県普天間飛行場の名護市辺野古移転への県民の反対が強まり、久し振りに沖縄県の米軍基地問題が政治課題になっているところに、今年5月に復帰40周年を迎え、沖縄県に関心が高まっている。マスコミで取り上げられるのは米軍基地や観光地がほとんどで、返還後の沖縄県経済の評価には関心がないように思われる。一方、米軍基地がなくなると経済への打撃が大きいという意見も根強くある。それも単純に米軍関係の金額から主張しているだけで、マクロ面からの分析に基づく主張は少ない。今回は沖縄県の経済を取り上げる。

 まず、内閣府「県民所得統計」で1人当たり県民所得の全県計(全国)に対する沖縄県の水準は、復帰年の1972年度の58.1%から75年度の73.9%まで急上昇し、その後は一進一退の65〜73%で推移する低所得県である。この間、72年度が過去最低、75年度が過去最高記録になり、不況期に高く、好況期に低いという特徴があるが、これは低所得県で共通にみられる現象である。理由は、好況期には大都市部の所得が増え、不況期には逆になるためである。ちなみに、この統計の最近時の2009年度はリーマン・ショック後の不況期に当たり、73.3%と比較高い。

 沖縄県の1人当たり県民所得の全国での順位は最下位が多く、最下位を脱しても下から2番目か3番目で、長期的に低所得県である。同様の低所得には青森県、高知県、宮崎県、鹿児島県などがあり、いずれも地理的に中央から遠い県という共通項がある。産業構造は基本的に工業化が遅れている県になる。

 この推移からみると、復帰で沖縄県は所得水準が上がったものの、一時的な効果でしかなく、長期的に低位横ばいに留まっている。また、復帰時においても米軍基地が縮小し、基地経済効果が減少すれば、沖縄経済は悪化するという見方があった。実際、沖縄県の統計資料によると、県民総所得に対する軍関係受取(米軍用地料、軍雇用者所得、軍基地内での建設工事、米軍等への財・サービスの提供など)は72年度の15.5%から減少してきた。77年度には8.6%と10%を下回り、80年代末から90年代央は5%を割り込んだ推移で、その後は持ち直しても5%台前半の推移である。

 現状は、72年度からみれば10ポイントほども下がり、それでも県民所得から判断すれば、県全体としては経済への影響は軽微だったといえる。今後も、米軍基地が縮小してもなくなるわけではなく、縮小した水準から減少しても、県経済に深刻な打撃があるとは思われない。

 もちろん、復帰に伴う沖縄振興計画で公共投資が行われ、それが沖縄県経済を下支え、牽引してきた効果は否定できない。現在ではインフラ整備が進み、また財政難下でかつてのような公共投資効果は予想できないが、すでに公共投資の比重も低下しており、影響力は弱まっている。

 県内総生産(内閣府「県民所得統計」)に占める建設業の割合は90年代までは10%を越えていたが、2000年代に入って10%を割り込み09年度は8.6%である。ちなみに、同年度の全県計の建設業は5.0%と低く、沖縄県の建設業の高さが目立つが、これは他の低所得県でも同様である。

 一方、米軍基地のマイナスを埋め合わせる産業として観光に期待する意見もある。これも沖縄県統計資料で県民総所得に対する観光収入比率の推移をみると、沖縄国際海洋博覧会が開催された75年度の12.7%がピークで、これが1人当たり県民所得の対全県計比の最高記録をもたらした。最近は10%前後の推移であり、この状況では観光に沖縄県経済の牽引役を期待するのは難しい。

 沖縄県の県内総生産で比率を高めているのはサービス業で、09年度は29.1%を占めている。主要産業の中で最も高く、かつ、全県計の23.9%を大きく上回っている。沖縄県のサービス業は71年度は9.8%でしかなく、同年度の全県計は10.2%で09年度とは逆に沖縄県を上回っていたので、全国的にみても成長率も高い。一方で、サービス業に含まれる観光の収入は増えていないため、それ以外のサービス業が伸びていることになる。例えば、政策効果もあってコールセンターの沖縄県への立地が進んでおり、この点ではサービス業振興が一定の成功を納めている。

 ただし、1人当たりの所得が伸びていないことは、集積しているサービス業が低賃金労働を目的に立地している産業になる。それでも、米軍基地からの収入の落ち込みを補った公共投資に代わり、サービス業は県経済を支えてきたわけで、米軍基地のさらなる縮小を乗り越えられる自信にもなる。そして、今後は既存、新規を問わず、サービス業も含めて産業の付加価値を高め、所得水準の向上を図ることが課題になる。

沖縄県の1人当たり県民所得水準と県民総所得に占める米軍関係受取と観光所得の割

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| 2012年05月31日 | 地域経済 | comments(1) | - |
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