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消費税増税で実質収入を維持するのに必要な賃上げ率は5%弱

 消費税の増税実施の可能性が高まるのに伴い、景気、特に消費への影響を巡って消費税と賃金に関して議論が高まっている。以前から、脱デフレを目指す安倍政権は賃上げを期待する意向を表明しておる。これを受けて賃金問題への関心は高まっているが、賃金の実態を踏まえない議論が多い。政府の目指す2%の消費者物価上昇分を含めなくても、残業代や一時金等を別にすれば、3%の消費税増税で一般労働者の定期的な収入を維持するには、現状の賃金構造から考えると、来春闘は5%近い賃上げが必要になる。

 厚生労働省「毎月勤労統計」(事業所規模5人以上)の現金給与総額(月間1人当たり)は、パート労働者、一般労働者を合わせた全労働者で前年比でマイナス基調で推移していた。ようやく、2013年度に入って、4月横這い、5月0.1%減と2カ月連続でほぼ横這いになり、6月が0.6%増、4〜6月期でも0.3%増になり、漸く明確にプラス基調に転換したと思われた。ところが、7月は0.1%減の微減でもマイナスで、基調がプラスに転換したとはいえない。 ただし、これは低賃金のパート労働者が増加しているためで、一般労働者では13年に入って、3月が0.1%減になっただけで、7月も0.6%増のプラス成長である。一般労働者の四半期ベースでは1〜3月期0.4%増、4〜6月期0.9%増であり、プラス成長が定着してきたといえる。

消費者が安心して消費支出水準を維持・拡大するには、現金給与総額のうち、決まってほぼ確実に受け取れる所定内給与の増加が必要条件になる。通常、所定内給与は春闘の賃上げ額を反映すると考えられるが、全労働者で長期にわたって微減基調が続き、最近時の7月も0.9%減である。

 これは低賃金で、かつ春闘賃上げの対象にならない1日当たりの労働時間が短いか、または週の労働日数が少ないパート労働者が含まれているためである。近年、パート労働者比率が高まっており、この影響は大きいと考えられる。これを除いた一般労働者では7月が0.4%減と減少が顕著になっているが、基調としてはほぼ前年水準で推移している。

 一方、春闘賃上げ額(含む定昇)は近年、低額が定着していても、率では2%近い。一般労働者の所定内給与のゼロ上昇とはそれだけ格差が生じているが、以下のような要因が考えられる。  第一に、一般労働者にはパートと同様に春闘賃上げの対象にならない長期の契約社員や臨時労働者が含まれている。

 第二に、春闘の調査対象が毎年、春闘交渉が行われる比較的大手企業で、最近のように低額春闘では、多くの中小企業は賃上げが実施されていない。

 第三に、給与体系では賃上げが行われても、賃金の高い高齢者が退職し、代わりに入社する低賃金の若手が相対的に多くなれば、平均賃金は上昇しない。人口の多い団塊の世代が定年年齢を迎え、一方で、正規労働者の採用を控えていることから推測すれば、この影響も大きいと考えられる。

 一般労働者、全労働者の現金給与総額が小幅でもプラスになってきたのは、景気回復に伴う残業増や一時金の増加による。臨時的であっても収入増は消費を引き上げる効果はあるが、消費税増税を控えて消費者が安心して消費拡大させるところまでは期待できない。

 物価への消費税増税の影響を別にすれば、来春は前年比で今春の為替レートを上回る円安は予想しにくいため、為替レートからの物価上昇要因は解消していると予測できる。つまり、世界景気の拡大で国際商品市況が上昇しない限り、海外要因からの消費者物価上昇はゼロ、またはマイナスに戻る。

 その状況で消費税増税でも実質で収入が減少しない、つまり賃金が維持されるには、全ての製品・サービスに消費税がかからないこと考慮しても、賃上げと所定内給与との2%近いギャップを考慮すれば、5%近い賃上げが必要になる。そして、賃上げはサービス価格や流通コストに反映することで、逆に5%近い賃上げで政府の2%消費者物価上昇予想が実現する可能性は高くなる。しかし、来春闘で5%賃上げを考えている経営者はどれだけいるだろうか。

図 現金給与総額の推移(前年比)

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| 2013年10月02日 | 所得 | comments(0) | - |

賃金は引き上げられないか

 今春闘の大企業の回答が出始め、予想通り賃上げは厳しい結果で終わりそうである。現状では、大企業は定昇のみで賃上げはない代わりに、一時金、ボーナスは少し増やす程度に留まる見通しになる。これでは中小企業を含めた勤労者全体の所得増はほとんど期待できない。

 景気は200710月をピークに下降に向かい、昨年の09年2月をボトムに回復している。昨年までは景気回復に懐疑的な声があり、また、今年は2番底を予想する見方もあったが、ボトムから1年ほど経て、回復力は別として、当面は景気回復が続くということではほぼ意見が一致してきた。景気回復は企業収益に顕著に現れており、日本銀行「全国短期経済観測調査(短観)」でみても、08年度下期をボトムに急回復している。ただし、企業収益が急回復といっても、09年度下期見通しでも利益水準は低い。

 企業収益からみれば、今春闘の結果は仕方がないように思える。しかし、企業収益はフローであり、ストックの企業余剰金の積み上がり状態からは別の姿がみえる。財務省「法人企業統計」(除く金融保険業)の従業員給与総額(含む賞与)は資本金1千万円以上の全企業で、90年に100兆円に乗せ、99年に138兆円まで増えた、これをピークにその後の不況で減少になった。

 そして、02年からの長期的な景気拡大で再上昇なったものの、今回の景気後退で07年の142兆円がピークなった。09年は133兆円で、これは9596年の15年ほど前の水準である。また、四半期別の前年同期比でも最新データの091012月期までマイナスである。結果、従業員給与総額8909年の20年間で44.6%増になる。ピークの07年の18年間でも54.3%増である。

 また、20年間を資本金1億円以上の大企業と、同1千万〜1億円未満の中堅、中小企業に分けると、前者は49兆円から63兆円、28.6%増、後者は43兆円から69兆円、60.5%増である。

  一方、資本剰余金と利益剰余金を合わせた剰余金は各年末の全企業で、この20年間に140兆円から389兆円へと、2.8倍に急伸である。ただし、この間は年ベースでは一直線増加だが、四半期ベースでは不況による企業収益の悪化で、0812月末と09年3月末に2四半期連続で減少している。ちなみに、09年の従業員給与総額は資本金1千万〜1億円未満企業が同1億円以上企業を上回っているのとは逆に、09年の剰余額は1千万〜1億円未満企業の120兆円に対し、1億円以上企業は2倍以上の269兆円である。

 剰余金の増加はこの間に誕生した企業の剰余金増効果はあると推測されるが、89年段階で20年以上の歴史のある企業でみても、近年は積極的に剰余金をため込んだと推測できる。

 日本経済の成長性が低下しているため、設備投資を抑制したことが剰余金急増の要因の一つに挙げられるとしても、従業員の給与を抑制してきた効果は否定できない。特に、資本金1億円以上の大企業は「法人企業統計」から給与を抑制し、その分を余剰金として貯めている構造が窺える。

 企業が一定の剰余金を必要とするとしても、急速にこれだけの剰余金を貯め込む理由は分からない。資本金1億円以上の大企業の剰余金は89年の従業員給与総額の2倍程度から、09年は4倍以上に増えている。これから考えれば、長期的な給与水準の切り上げになるとしても、何%かの賃上げを実施できるだけの体力はあるといえるのでは。

従業員給与総額と剰余金の推移
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| 2010年04月01日 | 所得 | comments(0) | - |

地方間で広がる工業集積格差

 この5月1日付け経済レポートで、経済産業省「工場立地動向調査」(敷地面積1,000岼幣紊旅場と研究所)の新規立地が関東内陸・臨海、東海、近畿内陸・臨海の大都市圏に回帰していることを書いた。ただし、工業生産力は新規立地に既存の立地分を合わせたものであるため、新規立地だけでは工業が大都市圏に再集積しているとはいえないことも指摘した。


 工業集積・生産力を何で判断するかは問題で、〇業所(工場)の数では工場規模が反映されない、⊇抄伴埒瑤任郎廼瓩里茲Δ忘鏝困進み、変化の大きい時代には判断を誤る、出荷額では物価(価格)変動の影響を受ける、などの問題がある。このため、ここでは生産活動が行われる工場の敷地面積や延べ建築面積で地域別の比較を行う。

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| 2007年11月01日 | 所得 | comments(0) | - |

「法人企業統計」にみる好調な企業収益と増えない給与-拡大する企業規模間格差-

 日本経済の成長力に力強さが欠ける要因として、個人消費の不振が取り上げられるようになった。その要因として企業が高収益を上げているにもかかわらず、消費の源泉である給与所得が増えないことが問題点として挙げられている。企業収益と賃金・給与の関係を議論する場合、個別には、企業収益は日本銀行の「企業短期経済観測調査(短観)」、上場企業の決算報告書、賃金は厚生労働省の「毎月勤労統計」などが使われる。しかし、できれば両方を統一的に集計される資料の方が望ましい。

 そのような統計資料として財務省「法人企業統計」がある。これには四半期毎と年1回の調査があり、四半期調査は速報性に優れているが、対象企業が資本金1,000万円以上と小零細企業が含まれないのに対し、年1回調査は小零細企業も含まれるが、発表が年度終了後、半年ほど後になり、それぞれ一長一短がある。ここでは最近時の統計を調べるために2006年10〜12月期まで発表されている四半期調査を使い、バブル発生前の1985年から06年までを対象として暦年ベースで集計、分析する。
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| 2007年04月01日 | 所得 | comments(0) | - |
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