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2018年の地域別将来人口推計で東京圏集中から東京一極集中へ

 厚生労働省の試験研究機関「国立社会保障・人口問題研究所」が2017年に発表した日本の将来人口推計(中位の仮定、以下同じ)が15年の1億2,710万人から、40年1億1,092万人、45年1億642万人に減少する推計に基づき、地域別の将来人口推計を18年3月に発表した。日本全体の人口推計はもっと長期間だが、地域別には45年までの推計である。

 5年前の13年時点の人口推計は15年1億2,660万人、40年1億728万人であり、18年推計でわずかだが日本全体の人口は上方修正になった。上方修正の要因は生産年齢人口(15〜64歳人口)でも増えていることから、死亡率の低下になり、日本の少子高齢化の基調が基本的に変化したわけではない。

 少しでも人口推計が高くなったことは喜ぶべきことになるが、減少傾向に変わりはなく、今回の地域別推計では前回よりも、より一層東京一極集中が進む予測になった。地方の地域間経済格差に関しては、政府もその問題を認識している。14年12月の閣議で「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」が決定され、対策が講じられているが、その効果が政府機関によって否定されたことになる。

 前回の5年間隔の推計では、東京都は15年の1,135万人をピークに、20年から人口減少に向かう予測になっていた。都道府県別では出生率の高い沖縄県を除いて他はいずれも減少であった。その中で、東京都は相対的に減少率が低く、東京都の全国に占める割合は15年の10.5%から、40年には11.5%まで上昇になっていた。

これに対し、今回推計の東京都は15年の1,352万人から、20年には前回の減少から増加に転じて1,373万人になり、30年まで増加が持続して1,388万人でピークを打つ。減少に転じてもその速度が遅いため、東京都の全国に占める割合も上昇を続け、15年の10.6%から、30年11.6%、40年12.4%、45年12.8%へと着実に高まり、前回以上の速度で人口集中が進む予測である。

 沖縄県も同様にピークが30年になる。一方、両都県以外では15〜20年で埼玉県(726.7万〜727,3万人)、神奈川県(912.6万〜914.1万人)、愛知県(748.3万〜750.5万人)など増加に転じた県はあるが、いずれも微増程度に留まり、かつ20年がピークである。

 南関東(東京圏)の埼玉県、千葉県、神奈川県は東京都に牽引される形で、ベッドタウンとして人口集積が進んできた。すでに千葉県は15年には減少傾向にあり、埼玉県、神奈川県が東京都より10年早く先行して20年にピークになることは、東京都からの波及効果の低下、喪失を意味する。

 少子化による日本全体の人口の減少、日本経済の成長性の低下から東京圏の吸引力が低下していると推測できる。加えて、東京の湾岸地域の再開発で港区、中央区、江東区などで住宅建設が進み、人口が急増している。その背景には女性の就労増による職住近接ニーズ、また高齢化が医療や小売店が集積している都心の居住ニーズを高めており、都心、東京都の人口増をもたらしている。また、13年に決定した20年の東京でのオリンピック開催決定によって、競技施設も含めた東京再開発が活発化している影響もあると考えられる。

 ただし、この東京圏3県の人口が東京都より早く人口減少に向かっていても、日本全体と比較すれば相対的にその減少速度は遅い。このため、東京圏の1都3県の人口の全国に占める割合は15年28.4%、30年30.1%、40年31.3%、45年31.9%と着実に拡大している。それでも、15〜45年間で3.5ポイントでしかなく、うち、この間の東京都が10.6%から12.8%であり、2.2ポイントを占めていることから判断すれば、かつて言われた東京圏集中の時代は終わり、東京一極集中に向かっているといえる。

 地域間人口成長格差は高度成長期以来の日本の問題で、背景には経済発展格差がある。当時は地方から中卒者が就労の場を求めて東京圏への移動に加え、東京の大学への入学もあった。地方は教育コストを負担するだけで、その果実を東京圏に代表される大都市部に若者が流出することに不満があり、その対策が国の政策課題になった。

 これまでの過程で、高度成長による大都市部の労働力不足、工業用地不足によって、1960年代後半頃から工場の地方分散が進み、地域間格差が解消に向かうのではと期待を持たせる時期があった。ところが、国内の人件費の上昇に為替レートの円高が加わり、国内生産が困難になった分野から海外移転が始まった。80年代以降、国内工場は特に地方工場を閉鎖し、海外移転を進める動きが広まり、再度、地域間格差問題が深刻化してきている。

 最近の特徴はかつてとは異なり、日本の産業構造のサービス経済化で大都市圏の中で東京圏への一極集中が進んでいることが挙げられていた。それが衰退する大阪での橋下徹ブーム、維新の会ブームになったと推測できる。現実には府や市の制度、組織を組み替えたところで、産業をどう発展させるかの有効な戦略がない限り、大阪が発展し、人口が増えることは期待できない。

今回の地域別将来人口推計で東京圏の核、東京への一極集中が進んでいることが明らかになった。もちろん、13年と18年の5年間で推計が変化したように、今回の18年推計も今後の実績がどうなるかは不明だが、現状から見る限り、東京一極集中がより進む方向での変化は予想できても、逆に分散する方向への変化は予想し難い。

 政府は緊急経済対策で地域間格差問題の解消に取り組んでいるようだが、日本の課題となって半世紀以上になる。長期的に解決できなかった構造的な問題の答えが容易に見つけられる訳はない。現政権の重要課題として真剣に取り組む姿勢が見えない状態で、18年の推計が現政権の政策効果によって、結果として誤りだったということは予想できない。ただ、現状から政府に期待できないと判断し、自力発展を目指す地域が増えれば、その中から成功事例が出現し、それが広がれば、少しは期待が持てるようになるかもしれない。

日本の地域別将来推計(2013年3月推計と2018年3月推計)

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| 2018年08月31日 | 政策 | comments(0) | - |

団塊ジュニア世代が出産年齢を超え、出生数の減少が加速

 厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2016年に生まれた子供(出生数、概数値)は97万6,979人と100万人を下回った。これは1899年に統計をとり始めてから初めてで、前年比2万8,677人、2.9%の大幅減少にも拘わらず、注目度が低いのが不思議に思える。一般的には待機児童問題への関心が高いのに加え、少子高齢化が以前から言われ、出生数が減少しても当然と受け止められているためと推測できる。

 待機児童問題に関しては、厚生労働省の「待機児童及び待機児童解消加速化プランの状況について」によると、待機児童の多い1・2歳児童の16年児童数203.9万人中、保育利用児童数は83万7,949人、待機児童数1万6,758人となっている。1・2歳平均では待機児童は1万人以下で、83万7,949人の2.9%は2万人以上になるため、出生数の減少だけで待機児童問題は1、2年後には解消が見込める。

 もちろん、女性の就業率が上昇しており、児童数が減少しても保育利用希望数は増える可能性はある。それでも、就業率の上昇には限界があり、児童数が減少していけば待機児童問題の終結が期待できる。ただし、マクロ的にはそうであっても、出生数が多く、保育施設の新設が困難な大都市地域では長引くことは否定できないが、それは一部地域になる。国ベースの社会問題としては、数年の内に解消すると予測できる。

 それよりも出生数の減少、少子高齢化の深刻化が懸念される。出生率に関しては15年11月1日付けのこの経済レポートで取り上げたが、それから2年近く経って、団塊ジュニアの人口のピークが出産年齢を超えようとしているからである。16年10月1日現在の統計で、女性人口の年齢構成は43歳の98.4万人がピークになり、それ以下の若い年代は着実に減少している。

 図で分かるように、再生産年齢の「15〜49歳」(だたし、この年齢以外での出産も含まれる)で、晩婚化を反映してかつては出生率の高かった「20歳代」は70年以降、急激に低下し、「30歳代」と「40〜44歳」が増えてきた。ただし、「30〜34歳」は14年の100.5人(女性1,000人当たり)をピークに16年は99.4まで下がっている。

 一方、「35〜39歳」と「40〜44歳」はまだ増加傾向にあるが、高齢出産では限界がある。「35〜39歳」と「40〜44歳」の16年の出生率は55.8人と11.2人で低い。また、「45〜49歳」(50歳以上を含む)は増加しているといっても、16年の出生率は0.3人でしかない。これから団塊ジュニアによって人口が増えたとしても、ほとんど出生数に影響はない。ちなみに、日本産婦人科学会の1993年の定義によると、高齢初産は「35歳以上の初産婦」と定義されているが、それ以前は「30歳以上の初産婦」となっていた。

 出生数は人口と出生率の積になり、人口の下で出生率が増加すれば、出生数の低下を防ぐ可能性はある。しかし、その実現は考え難い。晩婚化が相対的に若い年代の出生数を減らし、高齢者を増やしても、最終的には一人の女性が一生に産む子供の平均数、つまり合計特殊出生率の問題になる。

 合計特殊出生率は所得や教育費負担も含めた子育て費用などの経済的要因以外にも、社会、政治などからの精神的、思想的な問題の影響も受けると考えられる。これらのうち、経済的な要因では安倍政権の経済政策、アベノミクスに期待が高まった時もあったが、この1、2年でそれはほとんどしぼんでしまっている。

 一方、社会的な不安は特に変化しているとは思えないが、政治面では国民が反対、またはよく理解できない法律の導入が続いており、この面では積極的に出産するような雰囲気ではない。期待できるのは待機児童問題の解消になる。このプラス要因だけでは、経済的要因による合計特殊出生率の引き下げ効果が大きいと予想され、合計特殊出生率が高まることは予測し難い。

 また、16年10月1日現在の女子人口は43歳の98.4万人から25歳の57.1万人まで減少し、その後は下げ止まり傾向がみられる。原因は「団塊ジュニアのジュニア」時代に入った影響と推測できても、団塊ジュニアのように顕著な増加現象の再現にはなっていない。下げ止まったという程度で、一進一退になった後、これから再生産年齢の中心になってくる19歳以下からは再度、着実に減少し、4歳以下は50万人を下回っている。

 これを男女計の出産数の推移でみると、団塊世代のピークの49年は269.7万人、丙午(ひのえうま)の影響を除いたその後のボトムが57年の156.7万人である。そして、団塊ジュニアのピークになった73年の209.2万人からは趨勢的に減少基調が続き、16年には100万人を下回った。

 合計特殊出生率や女性人口の推移から判断すれば、出生数が回復する可能性は全くない。むしろ、女性人口構成からは減少に加速が掛かると予測できる。もちろん、その一方で長寿命化が進むため、人口の減少は比較的穏やかに留まる。国の基礎が国民にあり、経済は現役世代が支えることから考えれば、出生数問題にもっと関心が集まって然るべきと思う。

年齢5歳階級別出生率の推移(女性人口1,000人当たり)

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| 2017年07月01日 | 政策 | comments(0) | - |

トランプ政策の自動車産業への影響を考える

 トランプ氏が新米大統領に就任した直後から選挙公約を実行し、それも矢継ぎ早である。すでに、就任前から為替レートを通して株式市場が大きく変動しており、当面、直接、間接を問わず日本経済、産業への影響は避けられない。特に、日本との貿易格差問題、なかでも日本の対米自動車輸出へのトランプ氏の批判は大きい。

 かつて、1970年代に発生した2度の石油危機で原油価格が高騰した効果で、燃費の良い日本の小型乗用車への需要が米国で急増し、70年代末に日米貿易摩擦の再燃を経験している。遡れば、日米貿易摩擦は古くは50年代に繊維製品であったが、日本国内では大騒ぎになっても、米国では一部の問題でしかなかった。しかし、70年代末の自動車は米国の代表的産業であり、深刻な事態になった。

 このため、日本は81年から自動車輸出の自主規制に追い込まれ、そして自動車生産で対米進出が本格化した。それまでの海外進出は労働集約型産業で、低賃金労働者を求めて発展途上国への工場進出が中心であった。結果的には、日本の自動車メーカーは米国で自動車生産を成功させたことで、日本の企業は発展途上国、先進国を問わず、積極的に世界展開を図る要因になった。自動車メーカーは対米戦略でも市場の米国だけでなく、賃金の安いメキシコにも米国への輸出基地として立地している。

 一般社団法人日本自動車工業会によると、2015年の米国での日本の自動車メーカーの生産台数は385万台にも達しており、トランプ氏の批判は的外れとする意見は多い。しかし、それが正論であっても日米間の貿易格差に基づくトランプ氏の判断を覆すのは難しい。

 それを米国商務省データでみると、米国から日本への物の輸出は15年で640億ドルに対し、日本からの輸入は1,343億ドルと輸入がほぼ2倍である。長期的にもこの2倍程度の格差で推移している。ちなみに、物にサービスを加えた15年の輸出は1,083億ドル、輸入は1,637億ドルで、格差は縮小しても、輸入が輸出を5割ほど上回り、格差が大きいことに変わりはない。

 日本の対米輸出では自動車が突出した最大の輸出製品で、約3割(15年財務省貿易統計)も占めており、自動車が標的にされるのは避けがたい。対米輸出台数(日本自動車工業会統計)は米国生産の本格化で1986年の343万台をピークに、96年には3分の1以下の110万台まで減少した。しかし、それをボトムに米国景気の影響で変動し、リーマンショック前の06年には226万台にまで回復し、15年は160万台である。ちなみに、米国以外の輸出台数は86年317万台、15年292万台で、300万台前後の推移である。

 一方、全輸入台数(財務省貿易統計)は増加傾向にあるが、15年でも40万台でしかなく、全輸出の1割にも満たない。特に米国からの輸入は2.1万台と、輸出と比較すれば無視できるほどである。長期的にも2万台前後で推移しており、輸入で増えているのは欧州からである。石油危機で原油価格の高騰から需要が増えた燃費の良い日本の小型乗用車に対抗し、かつて米国の自動車メーカーも小型乗用車の開発に乗り出したことがあったが、競争力のある車を開発できなかった。米国メーカーは日本市場開拓を放棄しているといえる。その結果が米国からの対日自動車輸出がほとんどゼロという現状をもたらしている。もし、日米間の自動車の輸出入が均衡化すれば、日米間の全体の貿易収支格差は半分以下に縮小できる。

 現実には、日本の自動車メーカーが大規模に工場進出しているにも拘わらず輸出が多いのは、日本国内の事情もある。日本の自動車生産(日本自動車工業会統計)は08年のリーマンショック時の1,158万台を最後に1,000万台の大台を割り込んだままである。翌年の09年の793万台をボトムに回復し、12年には994万台と1,000万台に近づいたが、その後は再び減少に向かい、15年は928万台である。

 今後は1,000万台の回復はあっても1,100万台は回復しないと予測される。その要因として2つ挙げられ、1つは輸出における対米工場進出も含めて国際的な工場展開、もう1つは内需の基礎になる運転免許保有者の減少の影響である。日本は人口が減少する時代に入っているにも拘わらず、減少は若年者で、高齢者の運転免許保有者数はまだ減少していない。しかし、それも限界に近づいており、近いうちに運転免許保有者減の時代を迎える。現在の自動車内需の減少は景気、所得の影響が大きいが、これからは景気が回復して所得が増えても、運転者が減少すれば、下降に向かうことが避けられない。

 自動車メーカーは国内雇用の維持のため、生産能力を保持しているが、それも困難になってくると考えられる。内外需共に見通しは厳しく、生産が横ばいであっても、生産性の向上があるため、雇用者数は減少する。つまり、雇用者数を維持するには、生産の増加が必要になるからである。

 トランプ氏が日米間の自動車貿易の不均衡を完全に無くすところまでは主張しなくても、大幅削減を実現させるとすれば、少なくとも現状より年間100万台程度の対米輸出減か、米国からの輸入増が必要になる。それは現在の生産水準を1割以上の削減になり、裾野の広い自動車産業の日本経済への影響は大きい。

 同時に、トランプ氏の貿易の均衡化要求を考慮すれば、それが実際に実施されるかどうかは別として、当面は全体像が明らかになるまで対米輸出比率の高い企業・産業では、日本での投資には慎重にならざるを得ない。結果、当面の設備投資計画に影響すると懸念される。

 ただし、個別産業とは関係なく、マクロ経済からみれば、米国の貿易赤字、経常収支の赤字は米国経済の消費過剰体質にある。これを改めない限り、日本との間で均衡化しても、その分は他の国との不均衡に移転するだけで、解決にはならない。

 また、トランプ氏は政策で雇用増を強調しているが、米国の失業者数は高くない。トランプ氏を支持した白人労働者の不満はかつての所得水準が維持できず、低賃金雇用が増えていることにある。雇用が増えても賃金が低いままであれば、支持者は騙されたと思うことになる。経営者出身のトランプ氏が賃上げ、例えば最低賃金の切り上げ政策を行うとは思えない。

自動車輸出入台数の推移

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| 2017年02月01日 | 政策 | comments(0) | - |

2017年度の経済成長率は16年度を下回る見通しも

 2015年度の日本のGDP統計が国際基準の改定に合わせて見直された。改定は幅広いが、その中では従来、GDPには入っていなかった研究開発投資を含められるようになり、GDP規模はそれまでの500兆円ほどから約30兆円増額修正された改定が目立っている。企業は生き残りのために研究開発を活発化させているため、この改定で経済成長率も高くなっているが、金額ベースで約30兆円、6%拡大しても、前年度比の成長率では影響は軽微になる。つまり、17年度の経済成長率予測では基本的に大きな変化はないと判断でき、統計の基準は変わったが、成長率はほとんど変化が無いとして比較する。

 16年度の日本経済は景気後退までには至らないが、引き続き穏やかな回復状態が続いている。この経済レポートで指摘してきたように、14年4月からの消費税引き上げによる個人消費の低迷状態から16年度も脱せない状況にある。1年前の各予測機関の16年度見通しでは、名目GDP成長率は2%前後、実質GDP成長率は1.5%前後のプラス成長になっていた。これに対し、現実の推移から今回の16年度の実績見込みは名目、実質共にGDP成長率は1%強へと下方修正を余儀なくされている。名目と実質の乖離がほぼなくなり、消費者物価の上昇率が予想より低くなったことを示している。

 消費者物価上昇率の1年前の見通しは1%前後の上昇であったのに対し、今回の実績見込みは逆に、何れも0.2〜0.3%減である。この要因としては、国際商品市況の底入れは予想されていたことから、為替レートの円高を見誤ったためといえる。ただし、物価は国際商品市況や為替レートによる輸入価格だけで決まるのではなく、需給の影響が大きい。それが物価抑制に働き、結局、消費者の将来不安、生活防衛による消費抑制心理を読めなかったと判断できる。

 また、前回の見通しは各予測機関共に、1.企業収益の増加で民間設備投資が横ばい基調から低い伸びでも着実に増加する、2.収益に加えて雇用増から賃金が増え、個人消費は回復し、特に、17年1〜3月期には消費税の再増税から駆け込み需要が発生する、3.輸出は穏やかでも米国主導で世界経済が回復することで伸び率が高まる、などのほとんど共通する判断に基づいていた。この中で、消費税の再増税延期による17年1〜3月期の駆け込み需要がなくなった影響があるとしても、それは小さい。つまり、消費者の将来不安が高まった結果と考えられる。

 前回の16年度成長率見通しは過去に例がないほど各予測機関間で乖離が小さかったが、今回も同様である。17年度見通しを需要項目別にみれば、それぞれ乖離が目立つ項目もあるが、名目GDP成長率は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの0.6%増を除けば、1.2〜1.5%増で、実質は全てが0.9〜1.2%増と、格差は0.3ポイントの範囲内に収まっている。これは前回の16年度予測よりも控えめで、成長期待は弱まっていると推測できる。

 また、15年度の実績を下回り、16年度実績見込みよりも低いところもあり、世界経済の回復・成長による高い輸出の伸びがない限り、日本経済は低成長を余儀なくされるということでは一致している。基本的に政府の経済政策効果は期待できず、景気対策とオリンピックに向けて建設本格化で、公的固定資本形成(公共投資)が増えても、波及効果は弱くなっている。逆に、建設分野では低金利や相続税対策需要などで高い伸びをしていた民間住宅建設が一巡傾向にあり、17年度は減少が見込まれる。輸出もトランプ米大統領の景気拡大策には期待できる一方、ドル高は発展途上国にとってはマイナスで、世界経済全体からみれば穏やかな回復が続き、輸出に牽引力が生まれないからである。

 結果として、17年度の経済成長率見通しは実質GDP成長率で1%前後に収まって格差が生まれず、いずれも低成長が続くという判断になる。それよりも17年度見通しの特徴的として、為替レートがトランプ当選後の急激な円安を受けて、1ドル=105.7〜115円の年度ベースで円安、消費者物価(生鮮食品を除く総合)上昇率がプラス上昇の0.5〜1.0%増になっていることが挙げられる。為替レートは投機があるため、その判断で幅があるのは当然でも、いずれも大幅な円安ではない。その一方で、賃金上昇率が高まることは予想できず、介護保険制度や税制による負担増を考慮すれば、国民の将来不安は高まりこそすれ、低下することは全く予想できない。

 つまり、消費者の消費抑制は続くと推測でき、このような環境下で商品・サービス価格の引き上げは困難になる。円安で物価上昇率はプラスになっても0.1〜0.2%増程度に留まると考えられる。もし、それが0.5〜1.0%増にもなるのであれば、国際商品市況の顕著な上昇、そしてその背景に世界経済の着実な拡大が必要になるが、そこまでの世界経済見通しは見当たらない。物価上昇率は課題見通しと考えられる。

 17年度においても日本経済は世界経済に依ることになる。その攪乱要因にトランプ新大統領の米国がある。新政権の経済政策は不明だが、トランプ氏が強調している米国第一主義からは、ドル高は矛盾になる。国力の象徴として通貨高を評価する見方はあっても、ドル高はトランプ氏のホテル業でも外国人客にはマイナスになり、貿易収支を悪化させ、工場の海外移転を促進する。時期は不明でもドル安への転換が予想される。

 また、ドル高もそうだが、トランプ氏を支持した白人労働者の期待に応えられる政策が実施できるかどうか疑問がある。労働者が求める雇用と賃上げ、特に賃上げは経営者出身のトランプ氏が実現するとは思えない。期待を裏切られた労働者によって政情不安が高まる可能性があり、17年度を楽観的にみることはできない。

2017年度の経済見通しの主要項目別一覧

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| 2016年12月28日 | 政策 | comments(0) | - |

消費の回復力が弱い原因は消費税増税だけか

内閣府から2016年1〜3月期GDPの1次速報値が発表された。これによると、実質GDP成長率(季節調整値)は前期比で0.4%増(年率1.7%増)と、前10〜12月期の0.4%減(同1.7%減)から持ち直した。この結果に対して、事前の成長率予測を上回ったため、予想外に良かったという意見と、うるう年による1日増効果を見込めば、ほぼゼロ成長で、不振状態が続いているという意見がみられる。

 いずれにしても回復からほど遠いことでは変わりはなく、その要因として、GDPの6割近くを占める最大需要項目の個人消費の低迷が大きいことでは一致しつつある。個人消費を家計最終消費支出(民間最終消費支出ー対家計民間非営利団体最終消費支出)でみると、1〜3月期の実質成長率の前期比は0.5%増である。これだけだけみれば悪くはないが、15年4〜6月期からの推移は0.9%減、0.5%増、0.9%減、そして1〜3月期の0.5%増と、回復力は落ち込み幅を上回らず、推移としては下降の方向になる。

 これは金額ベースで少し長期間観察すれば、よく理解できる。実質家計最終消費は景気回復で13年までは着実に拡大し、そこに消費税増税による駆け込み需要で、14年1〜3月期に急増した。当然、直後の4〜6月期はその反動で減少し、7〜9月期もほぼ横ばいになった。そして、10〜12月期、15年1〜3月期は回復の兆しがみられたが、その後は前述の通りである。

 実質家計最終消費額(季節調整値、年額)は12年4〜6月期から300兆円台に乗せ、14年4〜6月期、7〜9月期は300兆円を割り込み、10〜12月期、15年1〜3月期は300兆円台に戻した。しかし、これは一時的現象で終わり、4〜6月期以降は下回ったままである。この推移にみられるように、14年1〜3月期をピークとする山形のグラフになっているため、消費不振の原因を消費税増税にあるとする見方が強い要因となっている。

 しかし、そうであれば、消費者物価指数(総合)が14年5月の前年同月比3.7%増をピークに上昇率が下がっており、16年3月には同0.1減と、13年5月の同0.3%減以来のマイナスになった。今回は食料がなかなか値下がりしないため、消費者物価の推移ほどは消費拡大効果が現れないと推測できるが、少しは物価安定効果が現れてもおかしくはない。つまり、消費税増税に消費不振の原因を求めるのは単純過ぎると考えられる。

 このため、名目家計最終消費額をみると、物価が下がっていた2005暦年価格で実質を推計しているため、名目額が実質額よりも低いが、実質とほぼ同様の推移になっている。ただし、16年1〜3月期は乖離傾向が見られる。物価が安定してきた効果から、名目額の伸びを実質額が上回ようになるため、乖離は当然といえる。

 16年1〜3月期の実質家計最終消費額の0.5%増に対し、名目は15年10〜12月期の0.9%減に続いて、0.1%減と僅かだが2四半期連続のマイナス成長である。低い伸びでも一人当たりの賃金は伸び、雇用者数が増加し、勤労者全体の所得が増えている中で、消費者は消費の紐を締めていることになる。もちろん、株価下落の影響があるのかもしれないが、いずれにしても、もともと高くはない消費水準を切り下げる、つまり生活水準を切り下げる消費行動を取っている推測できる。

 消費増税の反動減を考慮しても、その影響から脱して1年半も経って2四半期連続の消費抑制は、他の原因の影響を考える必要がある。原因として、.▲戰離潺スの失敗が一般的にも認識されるようになり、回復期待が消失した、↓,箸盍愀犬垢襪、為替レートの円高で企業収益の悪化が予想されるようになり、収入増が期待できなくなった、社会福祉政策の後退、特に介護保険料の引き上げ、介護保健サービス、医療費の自己負担増などで高齢者の将来不安の高まり、などが挙げられる。

 ちなみに、名目家計最終消費額は15年10?12月期、16年1?3月期は283兆円台で、この水準は消費税増税の影響で落ち込んだ14年4?6月期の285兆円、さらに遡れば、13年4?6月期の284兆円をも下回る。消費者の将来不安はかなり深刻と考えるべきであろう。

 また、4月の熊本地震は1〜3月期には関係はないが、5年前の東日本大震災の記憶が強い中での発生で、震災への懸念を強めることは確実である。具体的には、地域への直接的な影響よりも、将来不安から国民全体により一層の消費抑制の影響をもたらすと思われる。これから考えれば、消費税の再増税を実施するかどうかよりも、国民の将来不安を解消できる政策と国民の政府への信頼性の確立が重要になる。



家計最終消費支出額の推移

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| 2016年06月01日 | 政策 | comments(0) | - |

安倍政権の3年間の経済成長実績を採点すると

安倍政権が発足したのは2012年12月、そして 黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任したのが13年3月、日銀が大規模な金融緩和、いわゆる異次元の金融緩和に踏み切ったのはその2カ月後の5月だった。金融政策は別だが、新政権が発足して新たな経済政策を導入しても、それが効果を発揮するには時間が掛かり、3月までの予算は前政権のものに依る。

 このため、安倍政権の経済政策効果の始まりが問題になるが、日銀の金融政策も含めて13年度から安倍政権下の経済、アベノミクスの結果と判断して差し支えないだろう。当初の2年間で消費者物価目標の2%上昇は達成からほど遠いことは、現実の実績から当事者も認めざるを得なくなっている。では、経済成長はどうか。実質GDPは民主党政権下の12年度は519.5兆円、前年度比4.8兆円、0.9%の増加に留まり、東日本大震災の後遺症があったとしても低成長であった。

 これに対し、安倍政権になった13年度は529.8兆円、前年度比10.3兆円、2.0%の増加になり、成長速度が加速した形になっている。しかし、これには14年4月からの消費税引き上げ前に発生した駆け込み需要が含まれている。駆け込み需要は家計最終消費支出に注目が集まるが、建設に時間が掛かる民間住宅は早くも13年7〜9月期には顕著に盛り上がっていた。当時はアベノミクス効果と見る向きが多く、駆け込み需要の可能性は議論にならなかった。しかし、現時点でこの間の民間住宅の推移から判断すれば、その影響は大きかったといえる。

 駆け込み需要の規模は13年度を通して家計最終消費で2兆円以上、民間住宅で1兆円以上、その他にも金額の推計は難しいが民間設備投資も駆け込み需要があったと推測できる。これらを総合的に考えれば、13年度の経済成長はその効果を差し引けば、減速していることはないが、12年度より加速したとは言い難い。

 13年度の日本経済はアベノミクスの効果が広がり、順調に景気回復・拡大と判断した専門家が多かった。つまり、判断を見誤ったことになるが、消費税引き上げに向けた駆け込み需要が予想以上の大きかったのに気づかなかったためである。それが14年度になって実態を認識させられることになった。実質GDPの前期比成長率は4〜6月期、7〜9月期と2カ月連続のマイナス成長で、特に、実質家計最終消費は駆け込み需要の反動減で大きく落ち込んだ4〜6月期から、持ち直しが予想された7〜9月期はほんの僅かだが2四半期連続のマイナス成長になったことで、消費への評価が一変した。

 安倍首相は為替レートの円安で収益が好調な企業に対して賃上げを求めているが、企業はそれに応えていない。企業としては需要が伸びて生産活動やサービス提供が活性化すれば、積極的に賃上げに踏み切るかもしれないが、そうでなければ長期的な固定費負担増になる賃上げは難しい。その背景には、収益拡大要因の円安が長期的に続く保証はないという判断もある。

 消費の不振は収入面だけでなく、税・社会保険料負担が増大する一方で、社会保障水準が切り下げられているため、将来不安が拡大しており、生活防衛から当然である。将来不安では、物価が現実には上昇しなくても、政府や日銀の消費者物価上昇の主張や、これは16年になるが、マイナス金利の導入も影響すると推測される。

 結果、14年度の実質GDPは13年度の529.8兆円から524.7兆円、前年度比5.1兆円、1.0%のマイナス成長になった。実質家計最終消費は8.6兆円の減少で、駆け込み需要の反動減だけでなく、生活防衛のための消費抑制も否定できない。一方、名目でみれば家計最終消費は2.1兆円の減少に留まるが、消費税の引き上げによる物価上昇で、生活を切り詰めても限界があったというのが実態であろう。

 このような状況は15年度も同様で、年度額ベースで発表される四半期の季節調整値の推移は、実質GDPは4〜6月期527.5兆円(年額、以下同じ)、前期比1.8兆円、0.3%と10〜12月期(1次速報)527.4兆円、1.9兆円、0.4%の何れも減少になり、15年度は一進一退の推移である。ちなみに、この2四半期の実質家計最終消費はそれぞれ2.7兆円、2.6兆円の減少で、消費不振の影響は明らかである。

 昨年末に民間の予測機関が16年度の日本経済予測を発表し、それをこの1月1日付けの経済レポート欄で取り上げた。その時の各民間予測機関の15年度の実績見込みは、10〜12月期、1〜3月期は穏やかな回復が続くとして、実質GDP成長率で1%程度、名目で2.5%程度の増加になっていた。ところが、発表時の10〜12月期が速報値だが予想より低い結果になり、足元の1〜3月期も大きく立ち直る見通しにはなく、現状では15年度の実質GDP成長率は0.5%を少し上回る程度、名目は2%を下回る可能性が高い。実質GDP成長率はプラス成長とはいえ横ばい圏水準である。

 金額では実質が527兆円台、名目が500兆円を少し下回り(実質は2005年価格を100としているため、その後の物価の下落で名目が実質を下回る)、安倍政権以前の12年度実績のそれぞれ519.5兆円、474.4兆円からは3年間で1.5%、5%強程度の伸びでしかない。もちろん、まだ確定しているわけではないが、速報値でも10〜12月期まで発表されており、最終実績がこれから大きく乖離することはない。

 この3年間のGDP成長率は年率でみれば実質0.5%、名目1.7〜1.8%程度になる。円安と消費税の引き上げで膨らんだ名目でも平均で2%増にも達しない。最近になってようやくアベノミクスに懐疑的な見方が広がってきたが、GDP成長率の実績からみても効果がなかったことは明確である。この実績から採点すれば、及第点からはほど遠いことは誰の目にも明らかであろう。

 安倍政権や黒田日銀は目くらまし的に次々と政策を打ち出しているが、手詰まり感が出てきている。少なくとも課題の個人消費回復にマイナス金利幅の拡大は逆効果でしかない。預貯金金利のマイナスまでは予想されないが、現実には金庫需要が増えているという報道がある。消費者はその対策として預貯金の引き上げを考えているようである。政策効果は期待通り進めば良いが、現実はそうではないことが証明されているにもかかわらず、責任を避けるためか、その認識がないようにみえるのが16年度に向けての国内経済の最大懸念材料である。


名目と実質のGDP・家計最終消費支出額の推移

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| 2016年03月01日 | 政策 | comments(0) | - |

合計特殊出生率は上がるか

 1人の女性が生涯に何人の子どもを産むのかを推計した合計特殊出生率は人口動態統計で、2014年は1.42、前年を0.01ポイント下回った。合計特殊出生率は05年の1.26を底に横ばい、または微増していたが、9年ぶりに低下した。一方、安倍首相は合計特殊出生率の目標を20年代半ばに1.8にすると発表している。日本の国力向上に力を入れている安倍首相が、人口対策から合計特殊出生率の回復を目指すのは当然といえても、現実をみる限りその可能性はかなり低い。

 年齢5歳階級別の女性人口千人に対する出生数の推移をみると、かつては200人を超えて最も多かった25〜30歳の女性が急速に低下し、最近では半分以下の80人台にまで減少している。また、より若い20〜24歳も減少傾向にあるのに対し、30歳以上が増えている。特に、35〜39歳は20人を下回っていたのが、2倍以上の50人ほどにまで増えている。増加率では40〜44歳の方が高いが、まだ10人にも達しない。

 全体として若い年齢増の出生数が減少し、高齢者で増えているが、若い人の減少幅が高齢者の増加よりも大きいため、全体として合計特殊出生率は長期的に低下傾向を続けてきた。その中で、14年の合計特殊出生率の減少が9年振りというのは、1人の女性が生涯に何人の子どもを産むのかを推計する合計特殊出生率の定義と人口構成にある。

 人口の多い団塊ジュニア、第2次ベビーブーマー世代が生まれたのは1971〜74年で、この世代が30歳代時代に女性の人口当たりで出生数を増やした結果、合計特殊出生率も全体として僅かだが引き上げた。そして、2000年代後半から10年代初めにかけて出生数が大きく下がる40歳台になり、その効果が一巡したことで、合計特殊出生率は再び減少傾向に陥った。出生数全体も14年は100万3532人に留まり、13年より2万人以上も減少した。まだ100万人台は維持しているが、15年度は100万人の大台を割り込む可能性が高い。

 14年10月1日現在の総務省統計局の人口推計によると、団塊世代ピークの65歳221万人、団塊ジュニア世代ピークの41歳202万人と比較すれば、現状の政策を前提にすれば、これから日本を支える人口は半分以下になると予測できる。この実態に安倍首相が危機感を抱くのは理解できても、政策が合計特殊出生率の回復と矛盾しているところがあるため、成功するとは思えない。

 合計特殊出生率の低下が女性の高学歴化、就労化による晩婚化と未婚化にあることは、一般的に認識されている。晩婚でも高齢での出生数が増えていることは、出産しても働ける対策が現実に実行できるかどうかは別として、実施されば有効と考えられる。

 一方、最近になって未婚化の大きな原因になっている生計の問題は、政策と矛盾している。結婚して生計を安定的に維持するためには、一定の所得が得られる安定した雇用や社会保障が重要になる。ところが、現実の政策は逆で、低賃金の非正規雇用が増え、それを促進する政策を採っている。また、税・社会保険料の負担を増やし、社会福祉給付は削減しており、「企業が世界一活動しやすい国」とは言っても、「国民が世界一暮らしやすい国」とは言わない。国民、特に若い人がこれから結婚し、子供を生んで育てる環境作りとは逆転している。

 円安で景気回復して収益が上がった企業に対し、賃上げや設備投資の拡大を求めるのは景気拡大から考えて正当といえる。しかし、賃上げは大企業が行えても、円安の恩恵を受けない中小零細企業は困難で、かつ、企業が拡大する非正規労働者の賃金にまで配慮するとは思えない。また、人口減少による国内需要の減少と同時に、生産の担い手になる30代以下の急速な減少が避けられない状況で、企業は長期的な戦略から行う設備投資は抑制せざるをえない。

 合計特殊出生率が改善したとしても、それが日本経済に効果をもたらすのは20〜30年先になり、それまでに日本の経済、国力を顕著に改善したければ、外国人労働者の導入しかないと考えられるが、それには別の新たな課題があり、政治的に判断するしかない。

 個々に掲げられる政策や目標はそれぞれ単独では理解できても、それらの政策や目標が相互に矛盾しているため、現状は既に行き詰まるか、これからそうなるだけである。それを糊塗するために新しい政策や目標でごまかすしかないのが実態といえる。今のところ批判する専門家は一部に留まり、矛盾は表面化していなくても、いつまで持つか。



出生総数と人口当たり年齢5歳階級出生数の推移


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| 2015年11月01日 | 政策 | comments(0) | - |

事実上のアベノミクス失敗を認めた政府の2015年度経済見通し

黒田東彦日銀総裁が1月21日、金融政策決定会合後の記者会見で、2015年度の消費者物価見通しをすでに14年10月時点で1.7%増と2%上昇の実現困難としていたが、さらに下方修正し、1%増とした。これによって、 黒田総裁がアベノミクスの実現が遠のいていることを認めたと報道し、マスコミは14年にはまだ期待が強かったが、ようやくアベノミクスの実現性に懐疑的になってきてきた。

 下方修正の理由として原油価格の値下がりを挙げているが、もともと雇用は増えても非正規雇用で、かつ賃金も安い。加えて、社会保障も切り下げられる方向にあり、将来不安が高まっている。アベノミクスは円安で物価高が予想されるようになれば、消費が活発化するという考えに基づいている。確かに、消費税の増税前には駆け込み需要が盛り上がったが、その後の反動減は駆け込みで膨らんだ以上に大きかった。つまり、全体としてみれば、消費者、国民は将来不安からより一層、消費抑制をむかっている。

 この状況では、為替レートの円安や国際市況の上昇によるで輸入コストの値上がりで物価は上昇しても、円安が止まり、国際商品市況の上昇も一服、または値下がりに転じ、輸入コストの値上がりが一巡すれば、消費者物価はもとの横ばいから微減に戻る。原油の国際価格は12年頃から天井になっており、値下がりしなくてもより一段の円安がない限り、物価引き上げ要因ではなくなる。原油安は物価値上がりの抑制力を強化しただけで、本質的には変わりはない。下方修正の言い訳の材料になはなった。

 黒田総裁の会見以前に、1月12日に閣議決定された政府経済見通しは事実上、アベノミクスの失敗を認めたといえる。政府経済見通しは例年、年末に決定されるが、昨年の年末選挙のため越年した。ここでは14年度の実質GDP成長率実績見込みが0.5%減とマイナス成長になったことに注目が集まったが、もともと経済成長は循環し、上下変動があるため、1年で高い低いと評価してもあまり意味がない。

 もちろん、景気回復と言いながらマイナス成長は問題だが、消費税増税の影響がなくなり、経済の立ち直りを期待する15年度の実質GDP成長率見通しが1.5%増になったことも同等かそれ以上の失敗認定要因になる。それも、政府は民間最終消費を引き上げるため、企業に15年春闘賃上げを要請し、榊原定征日本経済団体連合会会長もそれを受け入れ、賃上げ環境が改善しているにも関わらずである。これは期待するような賃上げが実現するとしても、一部の大企業に偏り、全体への拡がりが少ないと認めたことになる。

 一方、前月のこの経済レポートで取り上げたように、民間予測機関の経済見通しはこの政府と大差はない。従来、政府経済見通しは経済政策責任者として、高めの経済見通しを発表していたが、それは無理とあきらめたのか、民間の見通しが甘すぎるのかのいずれかになる。最近の結果をみると後者の可能性が高い。

 例えば、1年前の政府経済見通しでは、13年度の実績見込み2.6%増、14年度の見通し1.4%増だった。これに対し、民間予測機関は13年度実績見込みは今回と同様に政府とほぼ同じ2%台半ばだが、14年度見通しはプラス成長でも0%台で、高くても1.1%増であった。つまり、政府が最も楽観的とはいえ、0.5%減になるかどうかはまだ不明でも、プラス成長は見込めない状況にあり、民間も含めて全滅状態である。

 その前に13年度の2%台半ばの見込みに対し、実績は2.1%増にとどまっっている。2%台半ばであれば、95年度と96年度の2.7%増、03年度の2.3%増以来の比較的高い成長と言えるが、2.1%増であれば、特に評価できるような成長率ではない。また、この間の実績見込みと実績、見通しと実績見込み間の格差は、1年前が13年度は特に公的固定資本形成の過大評価と輸入の過小評価にあり、14年度はいずれの需要項目も過大評価だったためである。

 ちなみに、政府見通しは成長率だけで、実額が発表されないため、実質GDPを伸び率で推計すると(例えば、14年度実績見込みの0.5%減は0.45以上〜0.55未満%減の幅があるが、問題になるほどの大差にはならない)、12〜14年度実績見込みの2年間平均の成長率は0.8%増、12〜15年度見通しの中期見通しになる3年間平均は1.1%増である。この成長率では底上げされたとはいえず、金融緩和の後始末がより困難になり、後世への付けを膨らましただけである。また、以前から指摘されているように、金融緩和の実体経済への効果はなく、公共投資(公的固定資本形成)は一時的にGDPを引き上げても乗数効果はないことを再確認しただけである。

 いずれにしてもアベノミクスで目標としていた2%成長にはほど遠いことを認める結果となっている。結局、輸入物価上昇のコストアップで消費者物価が上昇しても、需要が弱いデフレ状態下では、輸入物価の影響(14年度には消費税増税もある)が一巡すれば、消費者物価の上昇は終焉を迎える。つまり、政府経済見通しの実質GDPの低成長見通しと黒田日銀総裁の消費者物価上昇率の下方修正はメダルの裏表の関係になる。

 日本経済の活性化に魔法を期待するのではなく、地道な取り組みが基本になる。アベノミクスの失敗が確認されれば、それが認識されることが期待できる。ただし、その時には日本経済が大混乱という可能性もある。

政府の2015年度経済見通し

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| 2015年02月01日 | 政策 | comments(0) | - |

何故今、地域創生か

 安倍政権による経済政策、いわゆるアベノミクスは金融緩和で為替レートの円安から株高をもたらし、当初は先行き明るい雰囲気を作り出すのには成功した。しかし、雰囲気だけでは一時的な効果しかなく、今年度に入ってその化けの皮がはがれてきたところで、今度は地域創生を強調しているが、その目的が分かり難い。

 一部にはアベノミクスで中央と地域の経済格差が拡大したため、その対策という意見がある。日本経済の長期低迷がバブル経済崩壊の1990年代初めからになるのに対し、地域間格差は1960年代の高度成長期以来の超長期的な課題になる。いずれも構造的問題で、一時的な対策で解決できる問題ではない。一時的でも評価された日本銀行の金融緩和のような政策が可能なわけではなく、地域間格差の解消には政策が不十分だからである。ただし、本来の目的が単に来年の統一地方選挙対策であれば、少しは効果があるかもしれない。

 高度成長期の重化学工業化政策による日本経済の発展は、首都圏に代表される大都市圏が高成長する一方、地方の成長性が低かったため、地域間で経済格差をもたらした。地方は国内市場向けの農林漁業や鉱業、化学、金属精錬などの資源立地型産業が中心で、構造的に低生産性や資源量の問題があった。

 逆に、重化学工業は原料が輸入資源に切り替わることで、地方の資源立地型から大都市圏の消費地立地に移行し、地域間格差をより一層拡大する方向に働いた。結果、地域間格差の解消が政治の課題になり、その解消のために地方に公共投資を行い、建設業が地方の経済を支える産業の一つになった。

 60年代半ば以降、大都市圏は成長の結果として徐々に人手不足、土地不足の傾向が強まり、労働集約型産業の地方への移転、工場の地方分散が始まった。最初は低賃金労働者に依存する繊維、電気・電子部品が中心で、その後は成長性の高い機械産業全般に広がり、地方は工場誘致で経済発展に期待できるようになった。

 ところが、70年代から企業は立地戦略が海外進出に向かうようになり、80年代に入るとその傾向が強まってきた。さらに、その影響が国内工場の閉鎖にまで進むと、経済基盤の弱い地方の打撃が大きくなる。

 この間の工場従業者数を経済産業省「工業統計(従業者数4人以上)」でみると、日本全体では過去ピークは第一次オイルショック時の73年の1,196万人になる。その後は減少したが、90年に1,117万人まで盛り返し、それ以降は減少傾向が続いている。

 全国10地域に分け地域別でも、80年代までは地方、特に東北、九州は着実に増加していた。それ以降は工場の海外移転で何れの地方も減少で、それも顕著な減少傾向にある。工場従業者数の増加から減少への変化は経済基盤の弱い地方に与える影響は大きく、地域創生の重要性は増している。ちなみに、82〜2012年の30年間で関東臨海が239万人から123万人へとほぼ半減になっており、減少率は最も高い。それでも、関東臨海の人口は増えており、工場従業者減の影響は軽微といえる。

 また、工場従業者数の減少と同時に財政問題から公共投資が抑制されるようになり、高度成長期以降の地方経済を支えてきた建設業も構造的衰退期を迎えた。70年代、80年代は地域間格差が解消に向かっていたとまではいえなくても、悪化に一定の歯止めが掛かり、地方も希望が持てた時代であった。

 90年代以降は再び地域間格差が拡大を始めたわけで、今回のアベノミクスと関係はない。逆に、財政難下での東京オリンピックの開催は当然、東京を中心に公共投資が行われることになり、その分公共投資の減額が予想される地方の不安を高める要因になる。

 地域間格差の中でも深刻な過疎地域の振興に関しては、すでに総務省の「地域おこし協力隊」、農水省の「都市農村共生・対流総合対策」、国土交通省の「集落活性化推進事業」などがあり、行政が立案する地方創生も似た政策になると考えられる。これらが効果を発揮する政策であれば、地方創生による新たな政策は必要ないからである。

 結局、地方がそれぞれの地域の資源を生かした独自の政策で頑張るしかない。これに関しては、1979年に当時の平松大分県知事が提唱し、全国、さらには海外にも広がった地域振興政策「一村一品運動」があり、成功事例も数多く報告されている。しかし、それで大分県経済全体が発展している訳ではない。一部でも成功すれば運動の意味はあるが、それが地域全体の経済水準を引き上げられるわけではなく、ましてや日本経済にまで及ぶわけではない。

 最近は、田舎暮らしを希望する若者が増えているという報道もあり、それに期待する識者もいる。地方に若者が増えて活性化するのは望ましいが、もともとそれらの若者は高い所得を求めて地方に移住するわけではない。つまり、日本経済の活性化にはほとんど効果はないが、子育てしやすい地方の環境が少しは出生率の低下速度を緩和し、それが間接的に日本経済にプラスになる期待は持てる。いずれにしても、地方創生の目的を具体的に示さないと評価のしようがない。

地域別工場従業員数の推移


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| 2014年10月04日 | 政策 | comments(0) | - |

消費者物価上昇は今がピーク

 9月の消費者物価上昇率が前年同月比1.1%増と、2008年11月の1.0%増以来、約5年振りの1%台上昇率になった。脱デフレを消費者物価上昇率に求める人には朗報だが、あまり評価する声は聞こえない。「生鮮食品を除く総合」では0.7%増に上昇率は下がり、さらに「食品(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」になると、前年同月と同じに留まる。つまり、夏の異常高温と残暑による生鮮食品の高騰とエネルギー価格上昇を除けば、脱デフレと言えないことがその理由になる。

 08年は世界的なバブル景気による原油や穀物価格の上昇がリーマンショックで一巡し、消費者物価上昇率が下降に向かう中での11月の1.0%増で、食品(酒類を除く)とエネルギーを除けば横ばいであった。今回とは下りと上りの方向が逆になるが、今回はそろそろ上昇はピークを打ちそうである。

 その理由は為替レートにある。今回の物価上昇は原油価格が世界経済の持ち直しで12年後半頃から上昇を始め、そこに政権交代期待とその実現で年末頃から為替レートが円安に転じ、異常気象が加わったのが物価上昇要因である。

 ところが、米国は金融緩和政策の転換を決断できないように、米国経済の回復力は弱い。また、EUもようやく底入れといわれる段階で、世界経済の回復はもたついており、シリア情勢も欧米の参戦が避けられる見通しになったため、原油価格はバレル当たり100ドルを上回る水準から、10月は徐々に下方に向かっている。

 もともと、原油価格は変動はあっても11年央からほぼ高水準の横ばい圏である。消費者物価上昇の要因として取り上げられるエネルギーの高騰は、為替レートの円安による。為替レートは政権交代期待が現実化し、かつ異次元の金融緩和で、月平均では12年9月の1ドル=78円を円高のピークに徐々に円安基調になり、年明け後は円安に加速が掛かった。しかし、円安傾向が長期化することはなく、5月の1ドル=100円台を円安のボトムになり、その後は一時的現象は別として100が円安の壁になっている。

 この間の20円ほどの円安が原油のドル建て国際価格はほぼ横ばいであっても、国内エネルギー価格を引き上げている。つまり、この間の消費者物価の上昇要因は基本的に円安にあり、そこに季節的要因が変動として加わる構造である。本来の脱デフレ、つまり需給の均衡化にはまだ遠いというのが実態である。

 現状では、円安が再加速する状況にはなく、原油も含めて国際商品市況も弱含み、少なくとも安定と予測される。円ベースの輸入物価指数の前年同月比上昇率は9月まではまだ高い伸びでも、前年の10月以降に円安が加速していたことを考えれば、7月の18.7%増がピークと判断できる。輸入物価からの消費者物価上昇圧力は低下すると考えられる一方、10月は台風の影響で生鮮食品の一段の上昇も予想される。このため、9月と同程度の消費者物価上昇率になる可能性はあるが、消費者物価上昇率は今がピークになり、11月には縮小傾向が明確になろう。

 中東に問題が生じて原油価格高騰というような異常事態は別として、国際商品市況が安定していれば、輸入物価が消費者物価上昇圧力なるには再度、円安になる必要がある。少しは物価上昇期待が雰囲気として広がっているとしても、現状が「食品(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」の上昇率は横ばいであることを考慮すれば、前回と同程度の20円ほどでは政府の求める2%上昇には全く不足と考えられる。そして、それ以上の円安が実現する状況になれば、それはそれで別の問題を抱えることになる。



消費者物価、輸入物価、原油価格、為替レートの推移(前年同月比)

※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
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| 2013年11月02日 | 政策 | comments(1) | - |
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