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4〜6月期の実質GDP統計からみる回復の条件

 2020年4〜6月期の実質GDP成長率(1次速報値、季節調整値)は前期比7.8%減、年率で27.8%減と内閣府から発表された。前期比で19年10〜12月期1.8%減、20年1〜3月期0.6%減に続いて3四半期連続のマイナス成長で、すでに景気下降が顕著になりつつあったところに、コロナウイルスの影響が加わった影響で大幅な落ち込みになった。一般的にGDP統計では方向性を把握しやすいため、季節調整値を使う例が多いが、水準は理解し難い問題がある。ここでは原数値の前年同期比で現状を判断し、回復の条件を考えたい。

 原数値の実質GDPは18年1〜3月月期以降、上下はあるもののほぼ前年水準並みの推移で、年間の成長率は18年度0.3%増、19年度横ばいでしかない。四半期別の前年同期比成長率は19年10〜12月期に4四半期ぶりの0.7%減のマイナス成長になり、20年1〜3月期1.8%減、そして4〜6月期は9.9%減である。つまり、原数値でみれば、10〜12月期、または1〜3月期まではほぼ前年並であったが、コロナウイルス禍で1割ほど水準が下落したことになる。

 需要項目では輸出の23.3%減が最も大きく、次いで民間最終消費支出の10.9%減になる。この2つは19年度で民間最終消費が実質GDPの56%、輸出が同17%を占める1、2位の需要項目で、4〜6月期のこれら2つの減少額はそれぞれ8.0兆円、5.3兆円、合わせて13.3兆円になり、実質GDP全体の減少額13.0兆円を上回る。また、実質GDPの16%を占め、輸出に次いで3位の民間設備投資(前年同期比4.3%減)は民間最終消費や輸出の需要の影響を受けることを考えれば、結局、GDPは民間最終消費と輸出が拡大しなければ、回復は期待できない。

 輸出に関しては6月1日付のこの経済レポートで、4月までの貿易統計から中国向けが先行して回復傾向にあることを指摘した。その後、中国向けの輸出指数が7月(速報値)には前年水準を上回り、輸出全体では前年同月比で5月を底に回復傾向がみられる。つまり、季節調整値の輸出は7〜9月期に前期比増加になる可能性は高い。ただし、中国向けは19年度で輸出全体の2割を占めるだけであり、中国向けだけが底入れして前年比プラスになっても、4〜6月期の輸出全体の大幅減少から回復して前年水準を超えるかどうかは世界経済次第になる。コロナウイルス禍の現状からは当面は厳しい。

 世界の感染者数の増加はピークを打ち、多くの国で感染対策規制の緩和が行われるようになっており、日本と同様に世界的にも景気の最悪期を脱しているといえる。その一方で、感染拡大中、または規制緩和で感染者が再び増加に転じる国・地域もあり、期待されるコロナウイルス治療薬・ワクチンの開発はまだ話題先行の感がある。世界経済がコロナウイルス禍を克服し、着実な回復基調に戻り、回復感が広がるのは来年以降になるのではないか。このため、日本の輸出は底を打って回復に転じたと期待はできても、前年水準を上回り、さらに季節調整値で過去ピークを上回るところまでは時間が掛かる見通しになる。

 また、民間最終消費は97%を占める国内家計最終消費で耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスの4形態分類で統計が公表されている。ちなみに、国内家計最終消費全体の前年同期比伸び率は19年10〜12月期2.2%減、20年1〜3月期3.2%減、4〜6月期12.4%減で、特に4〜6月期は民間最終消費との減少幅の乖離が大きいが、要因は日本に居住する家計の海外での直接購入の減少、つまり、コロナ禍による海外旅行の大幅な減少による。

 4〜6月期の国内家計最終消費の前年同月比12.4%減を4形態分類でみると、耐久財13.6%減、半耐久財10.0%減、非耐久財4.6%減、サービス16.1%減となっている。交通、通信、外食・宿泊などのサービスと自動車、家電などの耐久財の大幅減少と、食料、飲料、電気・ガス・水道などの非耐久財の小幅減少が対照的である。

 3密を避け、外出の自粛からサービスが縮小しているのは、7月1日付のこの経済レポートで取り上げたサービス供給側の第3次活動指数で、生活娯楽関連サービス業、鉄道旅客運送業などが不振であったことと見合っている。一方、耐久財ではテレワークや自宅学習の増加で、パソコン、テレビ、エアコンなどの家電関係が好調と報道されているのと消費支出減は矛盾しているように受け取れるが、自動車需要不振の影響が大きい。

 減少が比較的軽微だった非耐久財は日常生活に欠かせない物やサービスであり、当然ということもできる。それでも、自宅滞在時間・日数の増加は非耐久財支出増加要因になることから考えれば、減少幅は大きいといえる。そして、その要因として雇用の削減が始まって将来不安が高まり、生活防衛意識が強まった影響と推測できる。

 夏のボーナスは19年度下期の企業業績がピークを過ぎてもまだ水準が高かったため、小幅の減額で済んだが、冬のボーナスは企業業績を反映して顕著な減額になると予測される。コロナ禍対策による外出・旅行や営業などの自粛が緩和されているため、民間最終消費は4〜6月期を底に回復するのは確実と考えられる。4〜6月期の大幅な落ち込みの反動で7〜9月期は大きく盛り返し、延いては実質GDP成長率も高くなることは誰もが予想している。問題は10〜12月期以降になるが、労働市場の悪化にボーナスの減少が加われば、回復に頭打ち感が生じるのは否定できず、短期的な消費復活は見込み難い。

 輸出と民間最終消費は当面、回復スピードは別として同様の推移が予想される。年明け以降は世界経済と新政権の経済政策次第になるが、国内の経済政策に関しては安倍政権の大きなツケが残っており、日本経済を改革して経済成長力が高まる効果的な政策は期待できない。結局、日本経済は世界経済次第だが、短期的には厳しいと予想される。

主要需要項目別実質GDP成長率(原数値、前年同期比)の推移

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| 2020年09月01日 | 景気 | comments(0) | - |

コロナを個人関連の業種別に見る

 昨年は輸出が頭打ちから減少傾向になっていたところに、10月の消費税の10%への引き上げの影響が加わり、景気が下降傾向になっているのが明確になった。今年の春以降はコロナ禍から個人消費が一段と冷え込み、明るい業界を探すのが難しい状況にある。マスコミは話題性のある深刻な事例を取り上げる傾向にあるが、当然、全てが悪いわけではなく、影響は業種間で異なる。特に、悪い中でも営業自粛要請の対象業種が厳しく、個人消費関連の業種、産業統計では第3次産業に分類される個人関連業種の減少が大きいと予想され、このレポートではそれを第3次産業活動指数(2020年=100)で調べる。

 ただし、第3次産業活動指数には自動車賃貸業の自動車レンタル業が自動車レンタル業(法人向け)と同(個人向け)と、事業所と個人の対象によって分けられているのは例外で、ほとんど一緒に集計されている。小売業のように販売対象が個人であっても、事業所も購入する業種、もともと対象が明確でない宿泊業のホテルや鉄道旅客運送業などもあるが、ここでは個人需要の比重が高いと思われる業種を取り上げる。

 ただし、第3次産業活動指数の対象になる事業所、特に個人関連では小零細事業所が多く、廃業、新規開業が活発で、もともとどこまで把握できているのか疑問がある。また、今回の政府や自治体による営業自粛要請にもかかわらず、営業しているところもある。なかでも闇営業であれば、売上高を回答しているとは考えられず、指数の精度に問題があることに留意する必要がある。

 全体の第3次産業総合では前年同月比で2019年10月以降マイナスが続いているが、20年2月までは微減程度に留まっていた。3月からコロナの影響が現れ始め、3月の5.3%減から、4月は11.5%減と急速に減少幅が拡大している。ただし、5月中旬には自粛要請が部分的でも緩和され、その後も徐々にでも緩和の方向にあり、5月からは減少幅が縮小に向かっていると推測できる。

 主に個人を対象とする主要な第3次産業業種を見ると、ほとんどの業種が3、4月に減少幅が拡大している中で、水道業が2月の4.9%増から3月0.1%増、4月1.9%減と、前年度とほぼ同水準の推移である。2月はうるう年効果で比較的高い伸びになっているだけで、水需要は景気やコロナの影響はほとんどみられない。

 また、医療・福祉もこの3か月間、1.9%増、2.2%減、0.3%減となっており、同様に前年並みの推移である。病院に関してはコロナの影響による来院が減少している一方で、コロナ患者の受入のために病室、ベッドを空ける必要があって収入が減少するだけでなく、備品の確保・充実などの対応でコストが掛かり、大幅赤字という報道もある。ところが、第3次産業活動指数には現れていない。要因として、医療・福祉事業所の収入の時点で統計に反映されるとすると、保険による支払いが後払いになるためと考えられる。

 その一方で、減少幅が大きいのは自粛要請の直接、間接の影響を受けた業種を多く含む生活娯楽関連サービスになり、4月は50.8%減とほぼ半減である。なかでも宿泊業77.3%減、飲食店・飲食サービス業56.7%減、その他の生活関連サービス業61.1%減などは半分以下である。

 さらに、細分類ではより深刻な業種がある。その他の生活関連サービス業に含まれる娯楽業の劇場・興業団のうち、プロ野球、サッカーなどのプロスポーツ興業は100%減、つまり興業はゼロになっている。これは極端としても、その他の生活関連サービス業の旅行業95.6%減、同冠婚葬祭業の結婚式場91.5%減、同遊園地・テーマパーク98.0%減などはゼロに近い。これらは自粛要請されているか、3密を避けると事実上営業できない業種になる。

 その一方で、同娯楽業のパチンコホールは自粛要請対象にもかかわらず61.8%減と、半分以下でも相対的に減少幅は小さい。この数字は開業ホールの割合ではなく、売上高であり、開業ホール数は少なくても、そこに客が集中し、売り上げが伸びた可能性が高い。パチンコホールでは闇営業は難しいため、この数字の精度は高いと判断できる。つまり、開業ホールの名前を明らかにするのは、逆にPR効果になるだけという批判があったが、それが現実になったといえる。

 これらの業種の中間にあるのが小売業で、4月の減少は14.4%減に留まったが、細分類では他の業種と同様に格差は大きい。各種商品小売業43.3%減、織物・衣服・身の回り品小売業54.4%減などが半分前後に落ち込んでいるのに対し、食料品小売業1.5%増、その他の小売業の医薬品・化粧品小売業1.5%増などは前年並み水準を維持している。生活必需品の購入は変化していないのに対し、各種商品小売業は業界団体の販売統計では、百貨店がインバウンド需要減と営業の自粛で大幅減であるのに対し、主に食料品や日用品を販売するスーパーは、第3次産業活動指数の食料品小売業と同様に前年水準を維持しており、各種商品小売業の大幅な落ち込みは百貨店の影響である。

 小売業の数字は当然の結果で、消費者は日常生活に必要な物・サービスはコロナに関係なく購入し、そうでないものは営業自粛もあって大幅に抑制するか、それが余儀なくされている。抑制されてきた物・サービスは自粛や規制が緩和されれば持ち直しが予想されるが、それは一時的な効果と考えられる。基調として元の水準に戻るまでには、景気回復が必要で、それには時間が掛かると予想される。世界的に短期的にコロナ禍が解決する見通しはないため、輸出主導の回復が期待できず、国内は政策が手詰まりになっているからである。

 これは第2次の感染拡大を想定していないが、第2次が発生し、再度の自粛要請が行われれば、4月のような異常ともいえる落ち込みの再来が避けられない。今回は乗り越えられたところも、今度は持ち堪えられずに縮小、廃業、倒産する企業が一気に増加することが懸念される。

 それを避けるにはパチンコ業界のような不公平が生じないように、休業指示と同時に持続化給付金の充実と早期実施支給が求められる。第1弾の対策はまだ完了していないものも多いが、この経験を踏まえて早期実施・完了でないと、企業の減少でより景気回復が遅れることになる。その時、何事に対しても責任があると言うだけで、責任を取らない政治では、残念ながらあまり期待できそうにもない。

図 第3次産業の主要個人関連業種別活動指数 2020年2、3、4月の前年同月比伸び率
| 2020年06月30日 | 景気 | comments(0) | - |

コロナ禍後の景気回復力を考える

 3月の鉱工業生産指数(速報値、季節調整値)は前月比3.7%減の大幅な落ち込みになった。1〜3月期では前期比0.4%増のプラス成長だが、前年同月比では4.5%減になり、2019年10〜12月期の同6.8%減より減少幅は縮小しても大幅マイナスである。一方、4月の製造工業予測指数は前月比1.4%増の持ち直す見込みになっている。調査は毎月10日現在であり、4月7日の新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言後になるが、それ以前に回答、またはその後であっても見直さずに回答している企業も多かったのではないか。企業・産業の動向から判断すれば、今回のコロナ禍の影響を織り込んでいない数字と推測でき、4月実績は2か月連続の大幅減が予測される。

 鉱工業生産は前期比、前年同期比で19年1〜3月期以降、減少傾向にあり、景気のピークは18年10〜12月期だったと考えることもできる。そうでなくても、19年10〜12月期実質GDP成長率(第2次速報値)が前期比1.8%減のマイナス成長になっており、遅くとも19年7〜9月期がピークと判断できる。

 新型コロナ感染の拡大スピードに頭打ち傾向が見られ、緊急事態宣言は早ければ5月中、遅くとも数ヶ月以内に終結に向かうだろうが、そうなれば、その後の景気回復力に関心が移ってくる。一時的にはこの間に抑制された消費が買い替え需要を中心に盛り上がり、1、2四半期程度は前期比で高い伸びが見込める。しかし、コロナウイルス感染の第2波、第3波(現在を第2波と考える人には第3、4波)の大波が来ないとしても、力強い回復力が維持されて1、2年程度で元の水準を回復することは期待し難い。

 内外需別に考えると、まず外需面ではリーマンショック後の世界経済の回復を牽引した中国のような国の出現は期待できない。海外市場では中国が先行して最悪期を脱して生産回復に向かっているといわれている。しかし、欧米や日本、東南アジアの経済が正常化しない限り、世界の工場となった中国が、国内経済対策だけで復活するのは容易ではない。欧米は部分的に経済活動が再開され始めた段階であり、このような状況では日本が外需主導の景気回復になったとしても、力不足は否めない。それは外需主導となっても、弱い内需の伸びを外需が上回るだけで、全体としての成長力は乏しい。

 力強い回復には内需、特に個人消費が課題になる。店舗の閉鎖や外出の自主規制で抑制された消費は、例えば、乗用車や家電などは繰り延べられた買い替え需要を中心に、新規需要も含めて復活することは期待できる。しかし、繰り延べられた需要のほとんどが復活するところまでは期待できない。

 雇用・所得環境が一変しているからである。大企業の正社員とその他の非正規労働者、個人事業者などの間で格差は大きいが、大企業の正社員は雇用が保障されているとしても、所得面では厳しい状況が予想される。最近の企業の賃金政策は企業の収益増を長期的な負担増になる賃金体系には反映させず、一時金、ボーナスを増やすことで対応する政策を採っている。結果、正社員の収入は昨年末の冬までは企業収益の好調を反映して高い伸びになってきた。

 大企業の今夏の一時金は減額になっても、まだ2019年度後半の収益に基づくため、微減程度の高水準が見込まれている。それが今冬は大幅な減少が避けられない状況にある。また、少なくとも来夏も今年が高水準になったことから推測すれば、幅は別として減少は避けられない。その前に、来夏の予想は難しくても、足下の仕事が減少し、企業収益が下降線にある状況から、今冬の厳しさは誰でも想定する。これから考えれば、今夏が高水準でも財布の紐を締めざるをえない。かつ、企業環境が厳しい状況下で、最近の企業の雇用政策を考慮すれば、大企業であっても雇用が保証されていると安心できる人はどれだけいるか。予定していた買い換えを中止する消費者は少なくないと考えられるからである。

 一方、非正規雇用の雇用削減は始まっている。3月の有効求人倍率は1.39倍と1を大きく上回っているが、基本的に労働市場は景気に対して遅行指標であり、今回のように景気が急速に悪化すれば、労働指標と実態とのずれが従来以上に乖離していると想定できる。労働指標では見え難い仕事の保証のない個人事業者も厳しく、小零細のサービス業、商業の倒産が増大し始めている。

 また、パート賃金は近年の人手不足状況下で少額でも時給が増え、少しは明るい見通しが持てるようになってきた。ところが、労働需給が一変したことにより、賃上げの可能性はほとんど無くなっている。ただし、世界的な景気悪化による需要の減少は、原油価格の下落に見られるように物価の値下がりを通して実質所得を引き上げる効果はある。

 景気が厳しくなる中で、政府は新型コロナウイルスの被害への緊急経済対策として、条件付きでの現金30万円給付の生活支援臨時給付金(仮称)を出している。その後、30万円給付の条件が厳しいため、コロナ禍で困窮している世帯に支給されるのか疑問が出され、批判が強かった。結果、対応が遅いながらも住民一人当たり一律10万円を給付する「 特別定額給付金」が実現した。しかし、この状況が長期化した場合の対応は不明である。

 以前から、このレポートで国民は政府を信頼していない考えを示してきたが、今回も国民に寄り添った政策とは言い難い。世界的なコロナ禍は世界で対策に取り組まれているため、その政策、金額や支払いまでの日数などが諸外国と比較されるため、日本政府が国民生活を配慮していないことがより明確になっている。この結果、政府への信頼度は一段と低下することが避けられず、景気が底を打って回復に向かって雇用が増加し、所得が増えても、国民が積極的に支出するようになるとは思えない。

 もちろん、低所得者は貯蓄できる余裕もないため、収入≒支出になるとしても、精神的には消費抑制になる。一方で、景気の影響をほとんど受けない高所得・資産家の人もいるだろうが、それは一部でしかない。全体としては所得、支出が増えず、つまり消費の回復力が弱い中では設備投資や住宅建設も期待できない。加えて、公共投資の波及効果も低下しており、その中で高齢化による年金生活者支出の下支え効果は見込める程度で、明るい材料に乏しいのが実態である。

鉱工業生産指数の推移

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| 2020年05月01日 | 景気 | comments(0) | - |

今回の消費税の引き上げの住宅建設への影響は小

 2019年10月からの消費税の引き上げは、前回の5%から8%(108/105=1.029、2.9%)と比べると、今回の8%から10%(110/108=1.019、1.9%)は小幅で、かつ軽減税率の導入もあり、物価への影響は少ないと予測されていた。現実に、個人消費の駆け込み需要とその反動減も小規模で終わったことが、関連指標の推移から明らかになってきている。一方、住宅需要への影響として引き上げ率は低くても、住宅価格は高額なため、2%でも額は大きく、影響を懸念する見方があった。

 ただし、住宅の場合、引き渡しが10月を越えても請負契約が3月末までに行われていれば、8%が適用される経過処置があり、引き上げの影響が見え難い問題がある。また、最初は10%への引き上げを15年10月に予定していたのを、14年11月に17年4月まで延期、また、それを16年6月に今回実施の19年10月に再延期すると発表された経緯もある。そして、19年10月に実施すると表明したのは18年10月である。ただし、3度目の延期もあり得ると考えていた人は少なくない。

 延期の発表は実施予定月の1年近く前と早く、駆け込み需要の発生はほとんどの商品では無い、事実、起こらなかったといえる。しかし住宅の場合、金額が大きく、かつ一生に一度の買い物になる消費者も多く、購入の準備に少なくとも数ヶ月以上も前から取り組むのが一般的である。その準備を始めていれば、急に延期を発表されてもいずれ引き上げ実施が予想され、希望に添う物件が見つけていて、購入を中断する消費者は多くはないと推測される。つまり、住宅需要への規模や時期の評価は困難だが、一般の商品とは異なり、一定の影響を受けると考えられる。

 前回の14年4月からの消費税の引き上げでは、住宅への影響を新設住宅着工戸数で見ると、引き上げ1年前の13年の5月から前年同月比2ケタ台の伸びになり、その状態がほぼ14年1月まで9か月間続いた。結果、13年度の新設住宅着工戸数は前年度比10.6%増の大幅な増加で、1年も前から影響が出るのは建設期間が長いためである。

 その反動で、引き上げ前月の14年3月から15年2月まで前年同月比で減少になり、うち急増と同様の期間の5月から1月まではほぼ2桁台の減少で、14年度では10.8%減になった。この2年間の戸数の増減はほぼ同数の10万戸ほどになる。結局、着工ベースでの駆け込み需要は引き上げの2か月前までで終わり、明け込み効果とその反動減は1年ほど続いたことになる。この消費税引き上げ前後の変動は、図に見られるように持ち家で顕著に表れるのが特徴である。

 一方、14年11月に消費税の引き上げ実施を15年10月から17年4月へと1年半の延期が発表されたが、この時は4月の引き上げによる反動減中であり、減少幅を縮小するような駆け込み需要への発表の影響は見えない。ところが、16年6月に行われた17年4月からの実施を19年10月への延期発表に関してはその影響が推測できる。

 延期予定の1年ほど前になる16年4〜6月期と7?9月期の2四半期の前年同期比伸び率がそれぞれ7.1%増、7.9%増になった。その前後が1桁台の低い方の伸びであったことから考えれば、6月からの引き上げに備えて準備していた消費者が、延期発表に影響されずに住宅着工に動いたと考えられる。これは前回の影響が1年ほど前から顕在化していることと相応する。ただし、延期発表から今回の10月の引き上げ実施まで1年4か月も空いており、この間の駆け込み需要と反動減は解消していると考えられる。

 そして、今回の引き上げでは19年3月の前年同月比10.0%増、1~3月期で5.2%増が目立つ程度で、総数では駆け込み需要はほとんど見えず、消費税の引き上げ率が低い影響と思える。しかし、利用関係別ではそうではない。貸家の影響が大きいためである。貸家も建設費の影響があるのは当然だが、それよりも転貸を目的とした一括借上のサブリースの落ち込みがある。当初予定していた家賃収入が保証されないとして、16年末に家主がサブリース会社を集団提訴したのがサブリース問題の始まりになった。

 この頃からサブリースへの不安が高まり、シュアハウスでも同様の問題が発生し、また、住宅融資の不正利用も広がっていることが明らかになった。これを受けて金融機関は住宅融資審査を厳しくしている。この影響の浸透で貸家の減少傾向が強まり、住宅着工全体の推移を歪めて見え難くしている。

 貸家はサブリース問題で17年6月、四半期では7〜9月期から前年水準を下回るようになった。その後、問題拡大に伴い徐々に減少幅が拡大し、四半期では19年1〜3月期までの前年同月比1桁台の減少から、4〜6月期からは2桁台に減少幅が拡大している。総数でも19年4〜6月期から減少になっているが、この主要因は貸家にある。戸数ベースでは貸家が総数の4割を占め、この影響が大きいためで、貸家を除けば7?9月期までは前年を上回り、10〜12月期も総数では9.4%減だが、貸家を除けば5.5%減に留まる。また、貸家は1戸当たりの面積は小さいため、総数を床面積で見れば減少であっても同様に小幅になる。

 一方、戸数ベースで全体の3割を占める持ち家は、前年同月比で19年2月から6月までの6か月間10%前後の増加になり、8月から減少に転じている。前回の消費税引き上げの14年4月前後と比較すれば、マイナス効果はまだ終焉段階を迎えたとまではいえなくても、影響は短期化、小幅化していると判断できる。また、最近の特徴として、分譲住宅のマンション着工戸数の変動が大きいことが挙げられる。近年のマンション着工戸数は総数の1割強の年間10戸強、月間では1万戸程度の数量になる。人気が高まっている超高層の大規模マンションには、1棟で1,000戸を超える大規模なものがあり、その着工の有無がマンションの大きな変動要因になることが挙げられる。

 今後の住宅着工に関しては、超高層マンションも水害問題から見直す雰囲気が見られ、そのブームの一端を担っていた中国からの投資は一巡し、住宅価格の高止まりの一方で景気悪化による所得の伸びの鈍化傾向が出始め、明るい要因は見当たらない。全体として貸家の減少はまだ続くと予想され、持ち家や分譲住宅は結局、景気動向次第になり、現状では期待し難い。それでも、貸家の落ち込みが大きいため、戸数ベースの減少幅より金額ベースのGDP統計へのマイナス効果は軽微になる。

利用関係別新設住宅着工戸数の前年同期比伸び率の推移

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| 2020年02月01日 | 景気 | comments(0) | - |

2020年度の経済成長率は3年連続で低成長の見通し

 2018年度の日本の実質GDP成長率は0.3%増に留まり、17年度の1.9%増から回復が中断した形になった。15年度までの3年連続の2%台成長から16年度に0.7%増へとブレーキが掛かり、17年度は持ち直したが、18年度は12年度の0.1%増以来の低成長である。

 一方、各民間予測機関の1年前の19年度経済見通しにおける18年度実績見通しは、世界経済の成長鈍化を受けて実質0.6〜1.0%増と減速を見込んでいた。ところが、成長鈍化判断は間違いではなかったが、現実はより厳しい結果になった。世界経済の影響による輸出の伸びの鈍化を大きくは見誤らなかったものの、GDPの過半数を占める個人消費(民間最終消費支出)が0.1%増とほぼゼロ成長になった影響が大きい。18年度の個人消費実績見通しを各民間予測機関は0.5〜0.7%増と控えめにしていたが、実績はその伸びをさらに下回ったからである。

 1年前の実績見通しは年度上期の2四半期、半年分の実績を踏まえた結果であり、18年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の実績は0.8%の上昇になったのに対し、実績見通しの上昇率は0.8〜1.0%増とGDPの個人消費より乖離は少ない。また、18年度中は雇用環境も大きくは変化していないため、結局、消費者の将来不安の高まりで、消費抑制が強くなるのを読めなかったといえる。

 18年度の実績を踏まえたことで、今回の19年度の実績見通しと20年度見通しでは、18年度に見られた消費不振が考慮された個人消費見通しになっている。前回の19年度見通しでの実質GDP成長率0.7〜1.0%増に対し、今回の19年度実績見込みは0.8〜1.0%増とほとんど変化はない。ところが、個人消費は同様に0.3〜0.7%増から0.1〜0.5%増に下方修正され、低い方のニッセイ基礎研究所やみずほ総合研究所の0.1〜0.2%増は低迷状態が続く予測になる。それでも、19年度の課題になる消費税増税の影響は引き上げが2%と小幅で、消費税対策の効果でその影響は少なく、景気の悪化による所得の伸びの鈍化が下方修正要因として挙げられている。

 一方、世界経済の成長鈍化傾向が明確になり、日本の輸出に波及している。影響が大きいと考えられる米中貿易摩擦問題の交渉内容は明確ではないが、日本の輸出動向からみると中国経済の変調が顕著になり、その影響がアジア地域に広がっていると推測できる。いずれにしても、対中国輸出を中心に輸出全体が減少基調にあり、前回の19年度実績見込みの輸出は高くても3.3%増と穏やかな増加の見込みだったが、いずれもプラスの増加見通しであった。ところが、今回の輸出実績見込みは0.9〜1.7%減のマイナスに見直されている。

 個人消費や輸出が下方修正されているにもかかわらず、19年度の実質GDP成長率実績期見込みが変化していないのは、公共投資(公的固定資本形成)にある。公共投資は前回の0.2〜2.9%増、多くは0%台の増加から、今回は3.1〜3.5%増へと上方修正になったためである。つまり、政府は景気は穏やかに回復を続けているとしている裏で、名目は災害対策であっても景気対策から公共投資で景気対策を行っていることになる。

 18年度は実績と前回の実績見込みの乖離が顕著な年になったが、19年度が同様の事態になる可能性は少ないと考えられる。GDPで比重の大きい個人消費の実績見込みは既に低くなっており、マイナスでも1%に近い減少にならなければ、GDP全体に影響するほどの引き下げ効果を持たないからである。当然、最近の景気動向からは逆のプラス効果になる環境にはない。その他の主要項目は個人消費より金額が少なく、かつ高い伸び率を予測していないため、GDPに大きく影響する要因にはならない。

 GDPの成長率が大きく変化する場合で考えられるのはバブルの崩壊である。日本の株価はピークを打っているが、世界的な金融緩和で地価や株価が高騰しており、その発生の可能性を懸念する専門家は多い。ただし、その発生を予測できても時期は不可能である。当然、20年度見通しではその事態は想定せず、米中貿易問題は今後も続くとしても深刻な問題にならないとして、世界経済は持ち直し、日本の輸出はプラスに転じるが、低い伸びに留まる見通しで一致している。

 20年度の実質GDP成長率を政治的に決める政府の1.4%増は別として、民間の予測機関は日本総合研究所の1.0%増以外は0.5〜0.6%増で一致している。日本総研とその他の機関が乖離しているように見えるが、日本総研は公共投資をはじめ個人消費、民間設備投資、民間住宅投資など各需要項目の伸び率が少しずつ高目の見通しから、それらが合わさって全体として1.0%増になっている。両者間で日本経済に対しての見方が基本的に異なっているわけではない。

 そのなかで、主要項目で格差が目立つのは個人消費で、日本総研が20年度も19年度と同じ0.5%増と横ばいの伸びをしている以外は、20年度の伸び率は19年度を下回る見通しである。なかでも、20年度の三菱総合研究所は0.1%減のマイナス成長である。最近の人手不足状態の解消までは至らなくても、この経済レポートで指摘しているように労働市場は緩和の傾向にあり、かつ、企業収益の頭打ちと労組側の姿勢から判断して、来春闘の賃上げ率は低下する見通しである。収入が増えない環境では個人消費の増加は期待できない。

 ただ、三菱総研の個人消費がマイナス成長になる要因として消費者物価(生鮮食品を除く総合)上昇率が、他予測機関の20年度は19年度の横ばい、または低下しているのに対し、逆に0.8%増から1.1%増へと0.3ポイント高まる見通しになっていることが挙げられる。人件費の上昇率が低下し、為替レートが1ドル=108円から106円へと僅かでも円高になる見通しのなかで、物価上昇率が高まるとすれば、国際商品市況の上昇になる。しかし、世界経済の回復力が高まらない見通しの下では、穀物の不作が考えられるが、そのような事態は予測し難い。20年度の消費者物価上昇率が19年度の横ばい、または低下になれば、三菱総研の個人消費も他と同様に低い伸びのプラス成長になると考えられる。その場合、実質GDP成長率見通しは0.1〜0.2ポイント高まる。

 いずれにしても、20年度は世界経済が予想以上に力強い回復になり、輸出主導の成長が実現しない限り、以前の実質GDP成長率の2%成長はほど遠く、3年連続の低成長見通しになる。

2020年度の経済見通しの主要項目別一覧

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| 2020年01月06日 | 景気 | comments(0) | - |

消費の低迷は低い収入の伸び、税金・社会保険料負担増と、高齢化の下で   貯蓄率増による

 10月1日からの消費税増税の消費への影響に注目が集まっている。今回は8%から10%へと小幅の引き上げであり、また軽減税率制度や消費税還元ポイント制度の導入などの効果で、従来と比較すれば増税前の駆け込み需要は少なく、全体として影響は軽微という見方が以前から強かった。現実に、小売店の販売動向で駆け込み需要は一部にとどまり、増税後の急激な消費の縮小は避けられる可能性が高い

 消費を考えるうえで増税の一時期な影響よりも、基調が重要になる。消費の基調が強ければ、増税の前後で変動があっても、その影響は直ぐに吸収されて安定した成長路線に戻る。現実には、以前から消費の基調が弱いため、小幅であっても消費税増税の影響が懸念され、その弱い要因から先行き不安が大きいことが問題になる。

 消費の基調を内閣府「国民経済計算」で、今年8月から新たに集計、公表されるようになった「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報(参考系列)」からみる。家計最終消費支出の原資になる「可処分所得」(名目、以下金額は全て名目)の2005年度から18年度までの13年間の推移は、07年度の297.8兆円をピークに、13年度の291.7兆円まで減少し、これをボトムに18年度の307.5兆円までは増加で推移してきた。この5年間で16兆円ほどの増加だが、伸び率では5.4%増、年率1.1%増でしかない。この間はアベノミクスの時期と重なるため、この時期を中心に取り上げる。

 まず、収入は従業員の現金給与以外に、現物で支給された物品、雇用主が負担する社会保険料などを含む「雇用者報酬」、個人経営の小零細企業の「営業余剰・混合所得」、預金、有価証券、土地・建物などの資産から生まれる「財産所得」などを合わせて「雇用者報酬・営業余剰・財産所得等」でみると、09年度の312.7兆円をボトムに、12年度の315.1兆円まで微増の後、18年度の346.7兆円まで着実に増加している。それでも6年間で10.0%増、年率1.6%増に留まる。ちなみに、13年度の317.6兆円からの5年間では、それぞれ9.2%増、1.8%増である。増加しているのは、所得の8割ほど占める雇用者報酬(18年度は全体の82%)が低い伸びでも一定の賃上げが実施されて増え、雇用者数が増えているためである。

 これに高齢化で着実に増加している現金による社会保障給付、年金基金による社会給付等の「現物社会移転以外の社会給付」を加えれば、ほぼ全収入(これら以外に変動の少ない3兆円程度のマイナス額の「その他の経常移転」がある)になる。現物社会移転以外の社会給付は13年度の77.6兆円から18年度78.6兆円へと増えているが、高齢化の進展を考慮すると増加額は少ない。公的年金の受給開始年齢が60歳から65歳へと延期された影響と推測される。これらを合計した全所得は13年度392.1兆円、18年度422.3兆円、7.7%増、年率1.5%増になる。そして、これから税金・保険料を差し引いたのが可処分所得になる。

 伸び率で雇用者報酬・営業余剰・財産所得等を可処分所得は下回っているが、原因は「税金・保険料負担」の増加にあり、これが13年度の100.4兆円から18年度は114.7兆円、14.3兆円、14.2%増にもなっているからである。ただし、税金・保険料といってもその負担増の中身は保険料になる。社会保険料の引き上げが続く一方、収入が増えなければ所得税は増えない。この間の14年度に消費税が引き上げられていても、消費税は国民経済計算では企業の税金に計上される。

 もちろん、個人の負担にならないわけではなく、消費税は価格に転嫁されて物価上昇の形で負担することになる。結果、名目よりも実質に影響する。ちなみに、13年度の家計最終消費支出の伸び率は駆け込み需要があって名目3.1%増と比較的高い伸びで、実質でも2.8%増と高く、乖離は0.3ポイントである。これに対し、14年度は駆け込み需要の反動減もあって名目0.3%減になり、実質2.5%減と物価上昇によって乖離が2.2ポイントに拡大している。

 全収入に近年は1兆円を下回る企業年金や退職一時金の負担と給付の差額「年金受給権変動調節」を加えた額で、貯蓄額を除したのが貯蓄率になる。貯蓄率は1999年度までは2桁台と高かったが、それ以前から上下変動があっても趨勢的に低下傾向が続き、13年度は0.6%減と僅かだがマイナス、つまり可処分所得を支出が上回った。

 通常、若くて働いているときは将来に備えて貯蓄に努め、高齢化して働かなくなった時にはそれを取り崩して生活するのが一般的である。このため、高齢化が進むのに伴い貯蓄率が下がるのは当然であった。現実に1999年度までは2ケタ台の伸びを維持していたが、その後は急速に下がって13年度には0.6%減とマイナスを記録した。ところが、高齢化が着実に進んでいても、貯蓄率がマイナスを記録したのは13年度だけで、その後はプラスに戻り、18年度には3.2%まで高まっている。

 以前から何度かこの経済レポートで指摘してきた高齢者の就業の増加は、働く意欲が強いこともあるが、基本的に将来不安から少しでも収入を増やして貯蓄しておきたいと考えているからと推測できる。それが近年の人手不足によって、高齢者にも就労機会が増えて実現でき、貯蓄率を低下から増加へと反転させたといえる。13年度からの18年度までの5年間で3.8ポイントの上昇は、単純計算で年平均0.8ポイントほどになり、成長率が低下している家計最終消費支出、延いては民間最終消費支出の伸びを引き下げる効果は小さくない。ちなみに、駆け込み需要で膨らんだ13年度から18年度の消費の成長率は年率で、家計最終消費支出は名目0.3%増、実質0.1%減、民間最終消費支出は名目0.4%増、実質0.1%減になり、この5年間はほぼゼロ成長である。

 今年6月に金融庁が公表した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」で、老後資金は2,000万円不足しているとして国民の間で話題になった。この影響から将来不安はより一層高まり、19年度以降の貯蓄率の上昇傾向が強まると予想される。かつ、この10月からの消費税増税がその傾向を促進することになる。

 以上から、消費の低迷は低い収入の伸び、社会保険料負担増、貯蓄率増の3つが消費が盛り上がらない要因として挙げられる。そして、19年度以降はより厳しいと予想される。人手不足状況は続くとしても、労働需給の逼迫はピークを打ち、企業収益も減益に向かう状態で、来春闘の賃上げは低下が避けられない。また、保険料の負担を増えて可処分所得の伸びは鈍化が予測されるなかで、貯蓄率の上昇が予想されるが、横ばいでも家計最終消費支出の伸びは一段と鈍る。中・長期的には政府が国民の将来不安を除けるかどうかに掛かるが、それを期待できない現状が国民として残念と言わざるを得ない。

                              主要な消費関連指標の所得、税金・社会保険料、家計消費支出支出、貯蓄率等の推移

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| 2019年11月01日 | 景気 | comments(0) | - |

GDPの4〜6月期の予想外成長の要因になった消費増に10連休効果はない

 マイナス成長も予想されていた2019年4〜6月期の実質GDP成長率は、1次速報値で前期比0.4%増(年率1.8%増)の予想外の成長になった。需要項目別でみると、民間最終消費支出同0.4%増と民間企業設備投資同1.5%増が比較的順調な伸びである。民間企業設備投資は米中貿易戦争の影響がまだ表面化せず、一方、民間最終消費は今年だけ導入された4月末頃から5月初めにかけてのゴールデンウィークの10連休効果を挙げる意見が多い。

 民間企業設備投資は企業には資金があり、投資の必要性があれば行われるのは当然で、米中貿易戦争が本格化する前であり、増加しても理解できる。ところが、民間最終消費は春闘で少しは所得が増えていてもその額は少なく、長寿命化は将来不安を高め、政府の福祉政策を信頼できないため、ほとんどの国民が10連休で財布のひもを緩めるとは思えない。もちろん、所得水準の高い人はいるわけで、休みを取れなかった高所得者がこの間、積極的に消費行動したと想定できる。事実、海外旅行者はゴールデンウィークで最高記録になっている。ただし、海外での支出はインバウンド消費の逆で、GDPの民間最終消費支出には含まれず、輸入項目になり、GDPではマイナス要因である。

 つまり、民間最終消費増の要因として10連休を挙げるのは疑問が生じる。これを判断するために、国内家計最終消費支出の各項目を4つの形態(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)に分類した形態別国内家計最終消費支出でみる。民間最終消費と国内家計最終消費の関係は、民間最終消費から居住者家計の海外での直接購入を加え、非居住者家計の国内での直接購入、インバウンドを差し引いたのが国内家計最終消費になる。18年度の実績(名目)で家計最終消費支出2,975兆円に対し、国内家計最終消費2,999兆円と0.8%上回っているが、無視できるほどの差であり、前期比と前年比の伸び率で差はほとんど生じない。

 また、国内家計最終消費の内訳は、約6割を医療、輸送、電話、レジャーなどのサービス、3割近くを食料、電気・ガス、新聞・本などの非耐久財、1割弱を家具、家電、自動車などの耐久財、5%ほどを衣料、ゲーム・玩具などの半耐久財が占める構成になっている。

 形態別国内家計最終消費は季節調整値も発表されているが、消費は季節変動が大きいため、原系列の前年比の推移でみる。最近は物価が安定しているため、国内家計最終消費の名目と実質の伸び率の解離は小さい。以下、全て実質ベースの前年比伸び率で、国内家計最終消費は16年10〜12月期以降、微増で推移しているなかで、19年4〜6月期は1.0%増と17年10〜12月期の1.6%増以来の7四半期ぶりの高い伸びになった。

 国内家計最終消費全体の推移の中で、4〜6月期は低成長の中でも比較的高い伸びといえるが、形態別で特に目立つのは耐久財の5.8%増である。もし、10連休効果が大きいとすれば、輸送、レジャー、外食・宿泊などのサービスになるが、4〜6月期のサービスは0.8%増に留まっている。耐久財を除けば相対的に高成長といえても、過去の推移と比較して特別に高いわけではない。18年度の伸び率0.7%増並みで、18年10〜12月期1.2%増、19年1〜3月期1.0%増からみれば、むしろ下降していることになる。前年の18年4〜6月期が0.6%増と高い伸びではないため、前年水準が高いために低くなる要因もない。

 一方、高い伸びの耐久財に10連休効果の可能性はある。特に、耐久財に含まれる乗用車はレジャー関連製品になるが、日本自動車工業会の乗用車国内販売台数による前年比伸び率の推移は18年7〜9月期1.4%増、10〜12月期6.7%増、19年1〜3月期1.4%減、4〜6月期1.9%増であり、4〜6月期に効果があったとは言えない。10連休は土曜日の4月27日から始まり、また、それが18年の11月の閣議決定で決まったことから考えれば、4〜6月期よりも1〜3月期の乗用車需要に影響すると判断できる。それが前年水準を下回っていることからも、乗用車需要には反映しなかったことになる。

 結局、4から6月期の耐久財の伸びは好調な電気製品需要による。近年、女性、特に高齢者女性の就労率が上昇しており、それは家事労働の節約志向を高める。それはどの家庭にも冷蔵庫や洗濯機などはあっても、大型冷蔵庫、全自動や乾燥機能付き洗濯機などの買い換え需要要因になり、買い替えれば台数ベースでは増えなくても1台当たりの価格は高くなり、金額ベーズでは増加することになる。また、最近の夏の高温化はエアコン需要を増やし、かつ、エアコンの性能向上は電力コストの低下から買い替え需要を促進する効果をもたらしている。

 耐久財は19年4〜6月期だけでなく、他の財が低迷、または盛り上がらない中で、16年度以降、上下はあっても基調として比較的高成長を維持している。女性の就労増要因が効いているが、その状態が3年を超えている。さらにこの状況が何年も続く保証はないが、この4〜6月期の伸びを見る限り、その勢いが衰える兆しは見えない。結果、耐久財需要が国内家計最終消費、民間最終消費の下支え、引き上げを期待できる一方、10月からの消費税引き上げの影響でどうなるか楽観はできない。

 いずれにしても、耐久財も含め10連休の民間最終消費拡大効果はほとんどなかったと判断できる。所得の現状、将来不安などから当然の結果といえるが、むしろ、正規雇用でない労働者はこの10日間の収入がゼロの人も多いと推測できる。非正規労働者比率は4割近くになっており、このマイナスの影響は無視できない。

 結局、小手先の政策で景気を引き上げられないことを、今度の10連休の消費の実態が明らかにした。やはり、現状の所得の改善と将来不安の解消を基本戦略にするしかない。

形態別国内家計採取消費支出の前年同期比伸び率の推移

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| 2019年08月31日 | 景気 | comments(0) | - |

民間設備投資の19年1から3月期マイナス成長をどう評価するか

 2019年1から3月期の実質成長率はマイナス成長の予想が多かったが、1次速報値ではあるが前期比0.5%増、年率2.1%増と内閣府から発表された。プラス成長にはなったが、GDP統計でマイナス項目になる財貨・サービスの輸入が前期比4.6%減の大幅マイナスで、これがGDPにはプラス要因になるため、これを除けばマイナス成長になる指摘が多く見られ、先行きを楽観視する見方は少ない。

 また、景気の先行きの懸念材料として、実質民間設備投資が前期比0.3%減と、2四半期前の18年7から9月期の同2.5%減ほどではなくても、マイナス成長になったことが挙げられている。以前から企業収益が好調にもかかわらず、民間設備投資がそれほど増えないのに対し、企業を批判する意見が少なくなかった。企業は賃金を挙げず、設備投資を抑えて収益を貯め込むだけの経営で、これが経済成長率が高まらない一因になっていると考えられるからである。 ちなみに、実質民間設備投資の成長率は15年度1.6%増、16年度0.5%減、17年度4.5%増、18年度(1から3月期は1次速報値)3.2%増である。17年度の4.5%増は比較的高い伸びだが、財務省「法人企業統計」の経常収益の16年度9.9%増、17年度11.4%増と比較すれば低い。ちなみに、17年度の名目民間設備投資は7.8%増と実質を上回るが、名目との比較では乖離幅は縮小しても、基本的には変わらない。また、18年度は四半期で7から9月期、1から3月期に前期比マイナス成長になっても、年度ではプラスになっているのは前年度の下駄をはいているためで、この効果がなくなる19年度は低成長、さらにはマイナス成長もあり得る。

1から3月期の民間設備投資がマイナス成長になり、弱含み傾向がみられる一方、民間設備投資の先行指標になる内閣府「機械受注統計調査」の4から6月期の民需(船舶・電力を除く、季節調整値)の見通しは前期比13.5%増と高い伸びで、2ケタ台の伸びは公表されている05年度以来初めてである。これから1から3月期の民間設備投資のマイナスは一時的で、4から6月期はプラスに戻るという見方もある。ただし、民間設備投資に含まれる建設投資は機械受注の対象外であることに留意する必要はある。それでも、過去の実績では先行指標として信頼性は高い。 また、見通しと実績は異なる訳で、4から6月期見通しで高い数字が出ても結果は別である。このため見通しを実績と比較した達成率(実績/見通し)からその実績を考える。ただし、実績と見通しは季節調整値であるのに対し、達成率は原数値を使っている。

 一般的に見通しと実績の関係は、景気回復期には見通しよりも実績が上回り、達成率は100%を超え、そして、次の見通しはさらに高まる循環なる。当然、景気後退期は逆になる。ところが、経済成長率が高く、景気にメリハリがつている状況ではそうなっても、低成長下では異なる。現在のように景気の後退期入りの論争になかなか決着が付かない時代には、この見通しと結果の関係は明確には見え難い。

 機械受注の民需の見通しや実績の15年1〜3月期からの推移は、図に見られるように17年4〜6月期に見通し、実績共に顕著な前期比減少がみられ、この期以外でも時々落ち込んでいる。この4年ほどは趨勢としては微増基調で、民間設備投資の穏やかな回復を先取りしてきたといえるが、18年度末には変調が見られる。実績は10〜12月期と1〜3月期の2四半期連続で減少になり、見通しは10〜12月期は増加だが、1〜3月期は減少である。

 

 また、達成率を100%を基準に判断すれば同様の推移で、15年度の回復傾向から16年度は中だるみ状態になったが、17年度には持ち直した。そして、18年度は下期が2四半期連続で100を下回り、平均では100%を下回った。それも4〜6月期の102.3%をピークに、その後は100.1%、94.2%、94.3%で、下降傾向が顕著である。年度毎の平均達成率は15年度102.4%、16年度100.2%、17年度102.1%までは100%を上回っていたが、18年度は100%を下回る97.7%である。

 ところが、4〜6月期の見通しが1〜3月期までの推移と一変、前期比13.5%増の高い伸びを示したことで、今後の予測が困難になっている。調査時点の3月末は米中の対立が現在ほどではなくても、厳しいとの見方が強まっていたため、企業は米中問題をある程度織り込んでいたと推測できる。その後の米中対立の激化から、達成率が10〜12月期と1〜3月期より一段と低下して90%程度になったとしても、実績は前期比プラスになる。

 4〜6月期の見通しからは民間設備投資の回復が期待できる。それは景気が変調しても企業収益はそれほど悪化していないため、一定の投資は行われることを示しているのではないか。つまり、景気回復期でも積極的な投資は行われないが、景気下降期に入っても当初はある程度維持され、景気の影響を受けにくくなっていると推測できる。

 一方、輸出は引き続き減少が予想されに対し、輸入が一段と減少してプラス効果を発揮することは見込めない。結果、消費税増税に向けて駆け込み需要で個人消費が盛り上がらない限り、民間設備投資が弱い状況では、GDPがプラス成長になることは期待し難い。

                             機械受注(船舶・電力を除く民需、季節調整値)の見通しと実績、見通し達成率(原系列)の推移

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| 2019年06月02日 | 景気 | comments(0) | - |

労働生産性では日本は対OECD平均で低水準の横ばいで推移

 アベノミクスが話題にならなくなって久しいが、替わってこの間の経済政策の評価が取り上げられるようになっている。当然、安倍政権側は日本経済は順調で、特に労働需要増による人手不足状態になっているように、経済政策効果が表れていると主張する。先々月、先月のこの経済レポートで指摘した景気変調に対しては、一時的なもので、景気は下降に向かっていないという見方を示している。

 一方、評価しない側はこの間の実質GDP成長率は高まっていない。人手不足も労働力人口減によるもので、賃金は上昇していないことを指摘する。結果、消費は回復せず、景気も世界経済の成長率が鈍化傾向になっている影響で、日本経済の景気拡大は終焉したという判断になる。

 ただ、景気は循環するため、不況に入っただけではそれまでの経済政策を否定できない。また、経済成長率、つまり実質GDP成長率は需要面からは人口、供給・生産面からは労働力人口の影響を受けるため、人口、労働力が減少している日本経済を、経済成長率だけで判断すると誤る可能性もある。米国が比較的順調に経済成長しているのは不法移民を含めて人口、労働力が増加している要因も無視ある。

 このため、国際競争力評価の基礎になる労働者1人当たりの労働生産性で評価するのが適切と考えられる。これは金額で算出することになり、そのままでは為替レートの影響が大きくなる。これに関しては日本生産性本部が購買力平価に換算したUSドルによる1人当たり労働生産性(以下、生産性)を発表しており、これを使うことで国際比較を比較的正確にできる。

 日本生産性本部のデータはOECD加盟国が対象で、現在の加盟36か国の統計になったのは2000年からになる。最新は17年で、加盟国中の日本の順位を2000年から18年の推移をみると、36か国中で05年と12年の20位、06年、08年、09年の22位以外は21位であり、ほぼ横ばいの推移といえる。ただし、日本より低いのは東欧、中東、中南米の国であり、欧米先進国の定義は難しいが、欧米先進国との比較では最下位水準での底這い状態での推移になる。

 

 また、金額水準でのOECD36か国平均(単純平均)との比較では、2000年の日本は5万2,810ドル、36か国平均は5万7,714ドルで、日本は平均の88.2%でしかない。この間の比率の推移をみると、20〜22位の順位を反映して87%、88%前後で、16年に89.2%と00年を上回ったが、17年は88.0%と低下している。

 一方、最も生産性の高い国と比較すると、図からも明らかなように日本の低下は否めない。17年世界1位のアイルランドの51.0%でしかなく、数年内に半分以下になる可能性がある。ただし、アイルランドは人口が480万人ほどしかなく、14年まで1位であったルクセンブルクは60万人弱であり、これらの人口小国との比較はあまり意味がない。

 人口の多い国で上位にあるのは米国になり、上位の2?4位で推移し、近年の15年から17年までは3位である。米国との比較では、日本は1990年の76.5%から、95年74.3%、00年には70.5%と急速に低下していた。そして、00年代に入って低下速度は穏やかになり、05年69.2%、10年66.0%でほぼ下げ止まっている。10年代はほぼ横ばいで、最も高いのは13年の67.3%、低いのは11年の65.3%であり、17年は66.1%であることから、横ばいの推移の点では対OECDと同じである。つまり、米国経済が順調といっても1人当たりでは経済成長率はOECD平均並みで、経済成長が良く見えるのは人口増要因が大きいことを示している。

 結局、生産性で比較して日本経済、産業の相対的な競争力低下は00年代までであり、10年代には下げ止まっていることから判断すれば、アベノミクス、現政権の経済政策は成果を上げたとはいえない。逆に、失敗とはいえないが、この間に大幅に膨らんだ国の財務残高、公費で買い支えている株価の正常化、収益が低下している金融機関などをどうするか宿題はむしろ増えている。

 当然、現状のように生産性がOECDの中でも36国中20〜22位程度で良いわけがなく、それを引き上げことも必要になる。これに関しても、政権がすでに長いことを考慮すれば、期待できない。少なくとも現政権が成果を上げていると威張れる状況ではない。

日本と主要国の1人当たり労働生産性の推移 (購買力平価換算USドルベース)

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| 2019年04月01日 | 景気 | comments(0) | - |

2014年度は景気後退、戦後最長の景気拡大ではないのでは

 2012年11月を景気のボトムに始まった今回の戦後第16回目の景気拡大は、19年1月で74か月になる。これは過去最長の景気拡大期間であったいざなみ景気と言われる02年1月から08年2月までの73か月を抜き、最長記録なるとして注目を集めている。その一方で、この間の経済成長率は実質GDPで平均1%台と低く、各年度の実績は最大でも13年度の2.6%増でしかなく、逆に最低は14年度の0.4%減のマイナス成長である。また、為替レート円安の恩恵を受ける企業の収益は良くても、それが賃金に反映されない。このため、所得の増えない一般国民は景気拡大を感じていないとして、マスコミは最長記録に疑問を投げかけている。

 国民からみれば、低成長で景気拡大しても所得が増えなければ、景気拡大が長期間続いても評価できない。それよりも短期間で景気が変動しても、景気拡大、好況期に賃金、所得が伸び、不況期の横ばい、減少を補って長期的に増えている方が望ましいと思うのは当然で、マスコミの見方に賛成する人が多いようである。

 短期の景気循環は在庫循環といわれ、例えば、景気拡大からピークを打って縮小への転換は、何らかの要因で最終需要が減少することが契機になる。この需要の減少で生産過剰状態になって在庫、「意図せざる在庫」がたまる。この過剰在庫の整理を目的として減産が行われる一方、不況対策の景気拡大策で需要が回復に減じれば、過剰在庫は整理される。結果、在庫の減少から生産が回復に転じ、景気はボトムを打って拡大が始まる。

 つまり、基本的に生産・在庫動向によって景気循環が決まることになるが、景気判断はその他の景気指標も含めた景気動向指数によって行われる。日本の場合、内閣府の経済社会総合研究所に設置した専門家による景気動向研究会で、景気動向指数の推移から決定することになっている。このときに政治的な配慮によって判断が変えられる可能性がないとはいえない。通常、経済政策に責任を持つ政府は景気拡大状態が望ましいわけで、景気後退、不況になったと判断するのはなるべく避けたいわけで、最近のはやりの言葉で言えば政府への忖度が働くことになる。

 今回の景気拡大が始まる前の12年からの鉱工業生産指数の推移をみると、前回の第15循環は12年にギリシャの債務危機の欧州財務危機への拡大、米国のオバマ政権と米議会の対立による連邦債務のデフォルト(債務不履行)危機などで景気に陰りがみられるようになったことで景気拡大が終焉を迎えた。欧米景気の先行き不安による円高も加わって輸出が減少し、この影響で12年3月が景気のピークになった。その後、欧州中央銀行(ECB)による支援、米国のオバマ政権と米議会の妥協によるデフォルト危機回避、中国の景気対策などで、世界景気が最悪期を脱した。輸出が回復する一方、国内では11年3月に発生した東日本大震災の復興需要も加わり、12年11月をボトムに景気は回復に転じた。

 この間の推移は図からも明らかなように、鉱工業在庫指数(季節調整値、末期値、以下いずれの指数も季節調整値)は4半期の推移で12年7〜9月期をピークに減少し、反対に生産指数は同年10〜12月期をボトムに回復に転じている。第2次安倍政権は同年の12月の景気回復後に就任し、景気対策に力を入れた効果もあって、その後、生産指数は着実に増加してきた。

 ところが、回復してきた生産指数は14年1〜3月期の103.6をピークに、4〜6月期は100.6、前期比2.9%減と大幅な減少である。その後も7〜9月期100.1と続落し、10〜12月期100.2のほぼ横ばい後、16年1〜3月期99.7、4〜6月期99.0と2四半期連続の減少で、7〜9月期にようやく101.7に持ち直した。これに対して、在庫指数(四半期末値)は14年1〜3月期の95.3をボトムに同年10〜12月の102.5まで3四半期連続で増加し、ようやく4四半期目、1年後の16年1〜3月期から減少に転じた。

 生産指数が落ち込んだ要因は14年4月に実施された消費税の5%から8%への引き上げにある。当初、消費税増税によって、特に民間最終消費支出は1?3月期に駆け込み需要が発生し、その反動で4?6月期に減少することは予想されていた。それは一時的で、7?9月期からは徐々に増税の影響が解消し、生産活動も回復基調に戻ると期待されていた。ところが、現実には国民の将来不安が予想以上に強く、民間最終消費支出が前期比でプラスに転じたのは1年後の15年4?6月期である。このため、14年度の実質GDP成長率は09年度の2.2%減以来の5年振りの0.4%減のマイナス成長になった。

鉱工業生産指数とGDPの推移から、何月かの判定は無理だが14年4?6月期から15年4?6月期頃まで1年以上の景気後退期があったと判断できる。ちなみに、いざなみ景気の第14循環の景気拡大期は、鉱工業生産指数に四半期ベースの前期比の減少はあってもそれは一時的で、年ベースの減少はなく、実質GDP成長率は四半期ベースでも前期比でマイナス成長はなかった。

内閣府の景気動向研究会が忖度したかどうかは不明だが、それがなければ景気動向指数からの評価は消費税増税で景気後退は生じなかったとしても、鉱工業生産指数とGDPからは景気後退がなかったとするのは無理がある。景気動向研究会が間違っているとすれば、景気動向指数に選択している景気指標が適切でないと推測できる。もちろん、最近のように国の統計に疑問が生じている状況では、指標が問題で、景気動向研究会は正しい可能性がある。それでも、鉱工業生産指数は基になる企業のデータが製造企業の経営に不可欠であり、企業の協力が得やすいと考えられ、相対的に精度の高い統計と推測でき、景気後退は否定し難い。

つまり、現在の第16循環が戦後最長の景気拡大ではないことになるが、もし景気動向研究会が正しいとしても、2018年11月がピークになって拡大期間は72か月に留まり、記録を更新できなかった可能性もある。理由は18年12月の鉱工業生産指数(速報)が104.7、前月比0.1%減と、11月の同0.1%減に続いて2か月連続のマイナス成長になり、製造工業生産予測指数も良いとは言えないからである。

2か月連続のマイナス成長でも、10~12月期では前期比1.9%増の高い伸びで、製造工業生産予測指数は19年1月見込同0.1%減、2月見込み同2.6%増と持ち直す見通しになっている。一時的な減少と期待もできるが、12月の実現率、1月の予測修正率はそれぞれ3.1%、2.4%のいずれも下方修正であり、実績はマイナス成長が続く可能性がある。米中対立の影響が中国経済に顕在化し、米国経済も息切れ傾向が出ており、主要輸出先市場が急速に厳しくなっている。今後も予測指数から実績の下方修正が続けば、鉱工業生産は減少基調になり、景気がピークを過ぎたことになるからである。

鉱工業生産・在庫指数の推移

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| 2019年02月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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