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1月の鉱工業生産の急減を考える

 2018年1月の鉱工業生産(季節調整値、速報)は17年12月の106.5から99.5、前月比6.6%減と急減した。ところが、経済産業省が製造工業生産予測指数が2月に持ち直しているため、一時的要因として生産の基調に大きな変化はないと発表しているのを受けて、ほとんどのマスコミは平静である。行政が発表に当たって、平静を装うのは通常で、実態を検討する必要がある。

 図に見るように5月にも鉱工業生産は大きく落ち込んでおり、一時的に急減することはあるが、この時は3.6%減である。過去には東日本大震災時に2桁台の前月比減少を記録したことがあるが、6.6%減は滅多にない減少幅である。景気の基調が変化する可能性を検討する必要がある。

 1月に鉱工業生産が大きく落ち込んだ主因として輸送機械工業の大幅減少が挙げられている。自動車主体の輸送機械は鉱工業の19.1%の比重があり、これが1月に前月比14.1%も減少し、これだけで鉱工業を2.7ポイント、減少幅の4割も占めている。業種別では同様に、はん用・生産用・業務用機械7.8%減、電子部品・デバイス6.3%減、電気機械7.9%減と、日本経済を支えてきた機械・電気・電子関連業種が軒並み急落である。

 在庫水準は高くはなく、これらの減少要因はまだ不明だが、例えば、自動車は主力の米国市場がもともとローン金利の影響を受けやすく、金利引き上げは需要のマイナス要因になる。金利引き上げ当初は金利引き上げが続く過程での駆け込み需要が発生する。結果として、初期には金利引き上げの影響は小さくても、いずれは効いてくる。かつ、今回はリーマンショックで落ち込み後の需要回復が一巡する時期に当たり、米国での自動車需要見通しは厳しくなる。ただし、日本の輸出統計で1月段階では乗用車輸出に顕著な変化は見られない。2月以降が注目される。

 今後に関しては、足元の2、3月は製造工業生産予測調査が参考になる。これによると、2月は1月の反動もあって前月比9.0%増になり、3月は同2.7%減だが、この2月の急回復を経産省が大きく基調変化が生じているわけではないとする論拠になっている。業種別では輸送機械が同13.6%増に留まり、高い伸びでも12月水準を回復しない予測になっている。一方、はん用・生産用・業務用機械12.2%増、電子部品・デバイス16.0%増、電気機械9.9%増と、いずれも12月水準を回復する予測である。

 これらの数字をみる限り、悲観的になる必要はないが、最近の予測指数は下方修正傾向にある。例えば、1月の鉱工業生産指数発表時に公表された12月調査の1月予測指数は4.3減と大きく減少する見込だったが、実績はそれをも上回る減少幅になった。また、2月予測指数は12月調査の5.7%増から、1月調査は9.0増と伸び率を高めているように見える。しかし、それは1月の実績が低くなったためで、12月調査予測値からは0.7%減と小幅ながら生産水準としては下方修正である。

 それでも2月実績は1月の生産水準が下がったため、下方修正であっても伸び率が高くなるのは確実である。この間の鉱工業生産の推移は12月が2.9%増であり、1月の大幅減少、2月の急回復予測からは小幅に見えても、2.9%増は高い伸びになる。つまり、この間の変動は大幅過ぎる。

 一般的に景気が回復、上昇期には、事前予測を実績が上回る上方修正、頭打ちから下降期には、その逆の下方修正になるのが通例であった。ところが、最近は長期的に景気上昇が続いているにも拘わらず、予測値の伸びを実績が下方修正になることが多い。要因としては、現状の生産水準が低いため、予測調査に対して期待値として高めの数値を回答する傾向にある。または、明るい雰囲気作りを求められていると感じ、それに応えるために高い回答をしていることが考えられる。

 これらの事情があったとしても、生産活動は設備や人員を変動し難いため、コストから考えれば、安定的生産が基本になる。1月に急減させ、2月の実績はまだ不明だが、急回復というのは異常と言える。

 これから考えると、マスコミを通して景気は良いという意見が流され、明るい雰囲気作りがなされている。足元は危うい状態が続いており、1月の鉱工業生産はその実態を垣間見せたとみることもできる。もちろん、数か月すれば、1月の数字も忘れられるような着実な回復基調にある可能性もあるが、楽観しないほうが良いのではないか。

鉱工業生産指数と輸送機械工業生産指数の推移

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| 2018年03月08日 | 景気 | comments(0) | - |

消費者物価上昇率見通しの希望・期待と現実

 2013年3月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏は、脱インフレの象徴として消費者物価上昇率2%を目標に掲げ、当初は2年程度で実現するとして大規模な金融緩和を続けてきた。その後も2%上昇は実現するとしてきたが、5年近く経った現在でも実現していない。この経済レポート欄で所得が増えない一方、税・保険料負担が増え、社会保障政策の改悪が進む状況で、将来不安が高まっているため、国民の消費抑制傾向が続く。結果、消費者物価は上昇せず、2%上昇は実現しないと主張してきた。

 実際、2%目標は未達成のままで、当初は実現を信じていたとしても、最近はそれを信じる人はほとんどいなくなったと思う。それでも、それを信じて期待していた政府関係者や政権支持者は、その旗を降ろした影響が経済だけでなく、政治的にも怖くて、上げた旗は降ろせないのが実態ではないか。

 ところが、最近になって新たに2つの意見がみられるようになっている。1つは2%上昇でなくても脱インフレは実現し、1%台で十分としてハードルを切り下げる、もう一つは、消費者物価上昇率が高まりつつあり、2%上昇が近く実現するというものである。

 もともと、需給が悪化し、物価が下がる現状をデフレというが、需給が悪化しなくても物価が下がることはある。日本では為替レートの円高時に輸入物価の値下がりを通して消費者物価が下がる経験がある。円高になると輸出採算が悪化し、輸出を増やし難くなるため、輸出産業は大騒ぎして社会全体として景況感は悪くなる。しかし、実際の景気はそうではなかった最近の例では、2008年の1ドル100円台から11年の70円台までの円高時に、09年3月を景気のボトムに、12年3月のピークまで景気は回復、上昇していた。この間、13年5月まではほぼ前年同月比でマイナスであった。つまり、需給悪化、不況と物価の下落はイコールではない事例である。

 この意味から消費者物価に拘らない考え方はあり、2%上昇になれば脱デフレと決める根拠はない。つまり、1%台で脱デフレと判断することは可能である。ただ、目標の引き下げは金融緩和のマイナス面の影響が顕在化してきたためで、金融政策転換をし易くするのが目的という批判もある。

 また、16年末ごろから消費者物価上昇率は穏やかでも上昇傾向にあり、総合指数で17年12月の前年同月比は1.0%増になった。変更の大きい生鮮商品を除く総合も11月に続いて2か月連続の0.9%増で、水準が切上がりつつあるようにみえる。しかし、生鮮食品と、消費者物価への影響が大きくて価格上昇の激しいエネルギーを除く総合では、12月も0.3%増に留まる。物価の基調が変化したとは言い難い。

 エネルギーは輸入原油の比重が高い影響が現れたが、すでに輸入原油価格高騰の波及効果は一巡しつつある。それは消費者物価指数と国内企業物価指数、輸入物価指数との関係から分かる。まず、国内企業物価は16年年央頃の前年比マイナスから徐々にマイナス幅を縮小し、17年に入って同プラスにまで上昇し、これが消費者物価にまで波及してきた。国内企業物価上昇の背景には輸入物価指数の高騰がある。

 輸入物価指数の統計には円ベースと契約通貨ベースがあり、当然、円ベースの輸入物価が国内企業物価、さらには消費者物価に直接、影響するが、契約通貨ベースと比較することで、契約通貨ベースでみられる国際商品市況とそれに為替レートの影響のいずれによる価格変動か判断できる。

 契約通貨ベースは16年央頃の大幅な落ち込みをボトムに急回復し、17年3月の前年同月比12.6%増をピークに落ち着き、上昇は一巡傾向にある。上昇の要因は中国が低価格の鉄鋼製品の輸出を抑制し、また、世界景気の回復で非鉄金属の価格が回復したことで、金属製品価格全体が上昇した。加えて、原油が産油国の減産による需給の改善と政情不安があり、1バレル当たりの原油価格は30ドル台から60ドル台にまで大幅値上がりしてきた。ただ、上昇一途というわけではなく、頭打ち傾向にあるため、前年比上昇率は頭打ちから低下傾向にある。特に、原油は現状以上に値上がりすると、米国のシェールオイル・ガスの生産が拡大する可能性が高く、それが重しとなって最近の水準は限界にきている。消費者物価への影響の大きい原油価格の頭打ちが契約通貨ベースの上昇一巡をもたらしている。

 円ベースの輸入物価指数は契約通貨ベースから7カ月遅れて10月がピークである。契約通貨ベースから遅れた要因は為替レートの円安にあるが、今年は年明け後、為替レートは円高である。円高が今後も進むかどうかは不明だが、トランプ大統領の貿易赤字対策から判断すれば17年水準を超えるような円安は考え難い。以上から判断すれば、輸入物価を通しての消費者物価上昇は予想できない。

 となれば、国内要因による消費者物価上昇の可能性が問題になる。これに対して、労働需給のひっ迫が賃金上昇をもたらし、それが商品・サービスの値上がりに繋がるとする2%目標の実現を予想する新しい意見が現れてきた。実際、パート、アルバイトの賃金は上昇傾向にあるが、労働需給統計のひっ迫状況からみれば、上昇率は低い。

 賃金の上昇に加えて原材料費の値上がりを理由に値上げを実施した飲食業もあるが、一部に留まっている。逆に、大手小売企業はプライベートブランドを中心に製品値下げに力を入れており、消費者の財布の紐は相変わらず固いと判断している。多くの消費者を顧客にしている大手小売業の方が、全体の実態を認識しているとみるのが正当であろう。

 また、政権の3%賃上げ要請に対して応える大手企業も存在するが、広がる気配はない。むしろ、年明け後の円高は円安で潤った輸出企業に賃上げ抑制に向かわせる可能性もあり、税・保険料負担が増える状況で、どれだけ実収入が増えるのか見通しは厳しい。

 消費者物価の2%上昇どころか1%台の上昇も当面予想できないが、長期の異常な金融緩和のマイナス面を問題にする主張が広がり始め、金融政策の転換を求める声が強まりつつある。それに対して、低金利による株高が政権を支えているため転換できないという見方もあり、そうであれば現在の異常な金融緩和が長期的し、そのツケは貯まる一方になる。

消費者物価と企業物価指数の推移(前年同月比上昇率)

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| 2018年01月31日 | 景気 | comments(0) | - |

2018年度の経済成長率は輸出の伸び鈍化で17年度を下回る見通し

 昨年度の2016年度の実質GDP成長率は実績で1.2%増だった。伸び率の高かったのは民間住宅建設の6.2%増と財貨・サービスの輸出の3.4%増で、民間住宅建設は輸出より高い伸びでも金額は少なく、寄与度では0.2ポイントでしかない。結局、輸出主導の成長になるが、海外経済の回復力は力強さに欠け、為替レートが15年度の1ドル=120円から、16年度は108円へと円高になった影響もあって、輸出の伸びは低かったため、GDP成長率も低成長になった。ちなみに、15年度は1.4%増であり、減速したことになる。また、16年度の名目GDP成長率は1.0%増に留まり、実質を下回った。

 17年度の実質GDP成長率実績見込は、17年7〜9月期のGDP二次速報を受けて発表された民間の予測機関が1.7〜1.9%増、政府は1.9%増であり、下期の見通しに殆ど差がないことになる。16年度より成長率が高まるのは確実だが、1%台成長であれば、低成長から脱したとは言い難い。同様に、名目も政府の2.0%増に対し、民間は1.6〜2.0%増であり、乖離は小さい。

 成長率が高まった要因は民間最終消費と輸出にある。16年度に成長が高かった民間住宅建設は頭打ちになっているが、中国が共産党大会に向けて積極的に景気対策を行ったことや欧米の景気回復で、輸出は16年度より伸びている。また、民間最終消費が低い伸びでも平均賃金と雇用の増加効果で、僅かでも回復力を強めているからである。当然、民間最終消費は所得面からみれば輸出増の恩恵があり、この点でも輸出主導といえる。前回のこの経済レポートで、海外経済によって日本の景気が変動する構造を指摘したが、基本的にこれが17年度も変わらないことを示している。

 1年前の17年度経済見通しを需要項目別にみれば、それぞれ上下に乖離が目立つ項目もあるが、名目GDP成長率は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの0.6%増を除けば、1.2〜1.5%増で、実質は全てが0.9〜1.2%増と、格差は0.3ポイントの範囲内に収まっていた。いずれにしても、政治的判断が加わる政府の名目GDP成長率を除けば、17年度は実績が見通しを上回る可能性が高い。原因は輸出にあり、為替レートは見通しと実績見込にほとんど差がないため、中国の政策効果や欧米、特に欧州の経済見通しが過小評価にあったといえる。

 18年度見通しでは、輸出が17年度とは逆の効果が予測されている。実質GDP成長率の政府見通しは民間への賃上げ要請効果を見込んでいるためか、民間最終消費の伸びが下支えして1.8%増と、17年度実績見込とほぼ同水準である。これに対し、民間の予測機関見通しは1.0〜1.3%増と成長減速予測である。もともと、政府見通しが民間の見通しを上回るのが通常で、前年の17年度の見通しと比較すれば、今年の18年度見通しは両者間の乖離が少し拡大している。政府は経済成長の鈍化は予測しづらいからからである。

 要因として、中国は党大会対策がなくなるのに加え、欧米がまだ低水準でも金利引き上げに動いているため、世界経済の成長率が低下し、輸出の伸びが鈍化する影響が大きい。また、民間の為替レートは17年度の112円程度から、18年度は112.5〜116.2円でいずれも小幅の円安基調の見通しであり、為替からの輸出増加効果もほとんど期待できない。

 もちろん、安倍首相の民間企業への賃上げ要請が影響力を持てば、賃上げによる収入増で民間最終消費の伸びが高まり、GDP全体を下支えする政府見通しが実現する可能性も考えられる。しかし、民間予測機関は賃上げ率が高まると予測していないため、輸出の鈍化と共にGDP成長率も低下する見通しになる。加えて、現実には増税や社会保険料負担の増加による可処分所得へのマイナスもあり、民間最終消費の回復、拡大は期待し難い。

 一方、18年度の名目GDP成長率見通しは政府の2.5%増は別として、民間は1.2〜1.9%増と乖離が大きい。この差の要因として物価見通しがある。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は0.5〜1.2%増と幅広い。国際商品市況や雇用ひっ迫による人件費の上昇が物価に波及するかどうかの判断が異なるためである。

 これは、雇用者所得の伸びの鈍化、低い民間最終消費の伸びとは矛盾すると受け取れる。しかし、賃上げ率は低くても、企業、特に小売・サービス企業が人件費を含めてコストを企業努力で吸収するのは限界にきていると判断すれば、比較的高い消費者物価上昇の予測とは矛盾しない。現実に、小売価格の値上げを発表する企業は増えている。

 ただし、低成長下で生産性が上昇せずに物価が上昇すれば、名目GDP成長率が高まるだけで、実質GDP成長率は高まらない。現在のように失業率が低い状態で国民の生活を豊かにするには、各企業・産業の生産性を向上させるか、生産性の高い産業の比率を高める方向へと産業構造の転換を進めるしかない。最近の議論では労働生産性、産業構造の視点が抜けているため、説得力が弱い問題がある。

2018年度の経済見通しの主要項目別一覧

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| 2017年12月29日 | 景気 | comments(0) | - |

日本経済の成長構造は変わったか

 2012年12月に第2次安部政権が誕生してから5年近く経った。覚えきれないほど経済政策のキャッチフレーズが出されているが、経済成長率で見る限り前民主党時代から高まっていないことは、各方面から指摘されている。もちろん、マクロの経済成長率では特に変化がなくても、その構造が変化していれば、今後の成長率の高まりに期待を持てる。

 しかし、残念ながら本質的に構造変化が見られないことは、発表された7〜9月期のGDP統計(1次速報)の以下のような特徴に典型的にみられる。

 実質GDP成長率は前期比で0.3%増(年率1.4%増)と最近では特に高くも低くもなかった。GDP成長率全体を引き下げた要因は、15年10〜12月期以来7四半期ぶりに0.5%減のマイナス成長になった民間最終消費支出にあることは誰の目にも明らかである。もともと、個人消費が盛り上がらない中で、前期が0.7%増と比較的高い伸びをした反動と夏の天候不順の影響と推測できる。これからみれば、個人消費に特に変化はないと考えられる。

 また、民間住宅も10月1日付のこの欄で予測した通り、同様に7四半期ぶりのマイナス成長だが、絶対額が小さく、全体に与える影響は小さい。

 一方、民間企業設備は4四半期連続プラス成長だが、0.2%増でしかなく、企業収益が高水準を維持しているにも関わらず、16年10〜12月期の1.9%増を除けば低い伸びが続いている。企業は長期的に国内需要、輸出も含めて国内生産が増えることは考えず、設備新増設投資は抑制し、最低限必要な設備更新、競争力維持・強化に必要な合理化・省力化投資に留めていることが窺える。この姿勢が変わることは期待し難い。

 以上のように国内需要が低迷し、特に民間最終消費のマイナス成長によって、内需全体が実質GDP成長率の0.2%の引き下げ要因になったのに対し、外需が0.5%引き上げ、全体として0.3%成長になった。

 財貨・サービスの輸出が4〜6月期の0.2%減から1.5%増へと持ち直すと同時に、GDPの控除項目になる財貨・サービスの輸入が反対に1.4%増から1.6%減になり、両要因からGDPを0.5%引き上げる効果になった。ちなみに、4〜6月期は内需が0.9%の引き上げ、外需が0・2%の引き下げであったのと比較すると、4〜6月期の内需主導の成長から、7〜9月期は外需主導の成長へと全く真逆になる。

 以上の説明やグラフからも明らかなように、個々の各需要項目の四半期別の推移は大幅に変化する。これは季節調整の精度の問題も考えられるが、それは別として、たまたま各重要項目が高い伸びになれば、それを積み上げたGDPは比較的高成長になる。逆であれば、低成長、マイナス成長になる。

 7〜9月期は外需の伸びが内需のマイナスを補い、最近のGDP成長率の基調程度の成長になった。10〜12月期は民間最終消費が天候要因の好転で反動増が見込める一方、外需の財貨・サービスの輸入も反動増が考えられ、内需主導の成長に戻ると予測できる。いずれにしても、四半期の動向に一喜一憂しても仕方がない。よれよりも基調の評価が重要になる。

 以前から、この経済レポートで日本経済は内需が所得の伸びや人口減少から低成長を余儀なくされる状況で、外需、輸出、つまり海外経済によって日本の景気が変動する構造になっていると指摘してきた。海外経済は好転していても、欧米の金融政策の転換を事前の予想より遅れていることは、需要の伸びが弱いこと示し、それが日本経済の成長力に波及している。

 結局、7〜9月期までのGDP統計をみると、安部政権の経済政策の効果はなく、日本経済の構造はほとんど変化がないと判断できる。今年も年末を迎え、民間の予測機関から来年度の日本経済の成長率見通しが発表されるが、海外経済に期待が持てなければ、日本経済は低成長が続く見通しになる。

主要需要項目別GDP成長率(前期比)

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| 2017年12月03日 | 景気 | comments(0) | - |

民間住宅の盛り上がりは一巡

 最近のGDP統計では民間住宅の高成長が目立っている。2016年度の実質GDP成長率1.3%増に対し、実質民間住宅は6.6%増の高い伸びである。17年4〜6月期(2次速報値)も同様に前期比でそれぞれ0.6%増、1.3%増となっており、民間住宅は好調を維持している。

 ただし、民間住宅は高い伸びでも、金額は16年度の名目GDP538兆円中17兆円、3%でしかなく、直接的なGDP成長への寄与度は低い。それでも、新しい住宅を購入すると、家具や家電製品などが更新される効果があり、この間接的な影響を考慮すれば、寄与度は大きくなり、景気判断ではGDPに占める比重が低くても注目すべき項目になる。

 民間住宅の動向を国土交通省「住宅着工統計」の新設住宅着工戸数でみると、15年3月から回復を始め、前年度比伸び率で14年度の10.8%減から、15年度4.6%増、16年度5.8%増と15年度から顕著に回復している。ちなみにGDPの実質民間住宅成長率は14年度9.9%減、15年度2.8%増で、GDP統計は進捗ベースであるため、着工から完成まで年月が掛かる住宅では、変化の影響は遅れて現れる。

 今回の住宅建設の特徴として、利用関係別で貸家が15年度7.1%増、16年度11.4%増と突出して高い伸びになっていることが挙げられる。貸家の16年度の着工戸数は42.7万戸、全体の97.4万戸の43.8%を占めている。かつては持ち家の方が多かったが、最近は貸家が最大になっている。ちなみに、16年度の持ち家は29.2万戸、マンションを含む分譲住宅は24.9万戸である。

 一方、建設投資額でみれば、貸家は1戸当たりの面積が狭くて小さくなり、16年度工事費予定額は全体の13.9兆円のうち、貸家は3.6兆円、25.9%にとどまる。それでも約4分の1であり、全体に与える影響が小さいわけではない。ちなみに、持ち家は6.3兆円、分譲住宅は4.0兆円で、貸家を上回る。

 住宅ローン金利が長期的にほとんど底這い状態の低水準で推移するなかで、13年度の税制改正大綱によって、相続税が15年1月1日から増税された。結果、相続税対策として貸家建設が急増し、マンション投資の盛り上がりも含めて住宅建設の成長性を高めてきた。

 ところが、新設住宅着工は今年の2月以降、前年水準前後の推移に変わり、頭打ち傾向になっている。年初初期はマンションの減少がその要因だったが、6、7月には貸家や持ち家が前年水準を下回るようになり、4〜7月で貸家は前年同期比0.8%減、持ち家1.9%減である。回復、成長を主導してきた貸家の変調が新設住宅着工の頭打ちの要因として大きい。

 貸家建設は不動産会社による長期一括借り上げ方式が多いが、オーナーが騙されたとして不動産会社に対する訴訟が広がっている。この問題は以前からあったが、最近、マスコミにも取り上げられ、その影響が着工に現れ始めたと判断できる。主たる訴訟要因は、貸家の供給過剰から入居率を維持するため、不動産会社がオーナーに家賃の引き下げを求めることにある。そうなると、オーナーは住宅建設費の回収が困難になるとして訴訟になる。

 もともと、人口が減少に向かい、一般的にも空き家が増えていることはよく知られている。地方からの移住で増えている都市は少なく、一部を除けば住宅需要が大きく伸びる環境にはない。かつ、雇用者所得が増えない状況では、入居者の支払い能力には限界がある。貸家建設コストを回収できるだけの家賃支払い能力のある入居希望者がどれだけ存在するか、厳しいと判断できる。

 つまり、中古の貸家より家賃の高い新設貸家需要が大きく伸びる状況にはない。貸家不足の地域でも貸家新設・供給が増えれば、貸家供給が需要を上回る時期は、それほど遠くはないと予想できた。結果として、訴訟の発生から考えれば、それが16年度の早い時期だったのではないか。

 また、分譲の半数ほどを占めるマンションは着工の変動が大きいが、実需が増加していくとは考え難い。むしろ、爆買いしていた中国人が、中国政府の海外投資規制で日本でのマンション購入を抑制、さらには売却に転じている。基調としては減少の方向が予想される。

 金利は物価動向から判断すれば、金融政策を転換できるとは考えられないため、持ち家は変動しないとしても、全体として新設住宅着工は減少が避けられない。それが進捗ベースのGDP成長率に波及するのは7〜9月期以降になり、実質民間住宅は7〜9月期にはまだ頭打ち傾向にとどまっても、10〜12月期以降にはマイナス傾向に転じると予測できる。ただし、GDP成長率における民間住宅の比重は間接的な効果を含めても大きくはないため、それが景気を転嫁するほどの影響力は考えられない。景気は現在の経済成長を支えている輸出次第になる。

 住宅の新設で経済成長を期待するよりも、量的には過大になっている住宅のストックを活用すべきである。つまり、成熟社会ではフローの拡大からストックの利用に変わるのが当然と思う。

利用関係別住宅着工の前年比伸び率の推移

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| 2017年10月01日 | 景気 | comments(0) | - |

消費者物価は何故マイナスにならないのか

 日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、消費者物価の見通しを修正し、以前から目標にしていた消費者物価上昇率2%の達成を、これまでの2018年度頃から19年度頃へと先送りした。もともと、2%上昇は13年3月、日銀総裁に就任した黒田東彦氏が金融緩和によって2年間で達成する、と発表したことで注目を集めた。それから実現できずに今日に至り、今回の延期は実に6回目になる。また、就任した副総裁は「2年間で物価上昇を実現できなければ辞任する」と発言したが、現在も副総裁のままである。

 当初は金融緩和の効果に加え、それまでの円高要因だったヨーロッパの金融危機が収まりつつあったため、為替レートが円安になった。同時に、国際商品市況が上昇したため、輸入物価上昇の影響で消費者物価上昇率はそれまでのマイナスからプラスに転じ、2%上昇の実現を期待を込めて予想する見方もでていた。

 それに対し、消費者の実態から、円安と国際商品市況上昇の影響が一巡すれば、消費者物価上昇率は元に戻るとこの経済レポートで主張してきた。その後も所得があまり増えない一方、税・社会保険料の負担は増え、将来不安が少しでも改善する見通しはない。結果、消費者の節約志向が続き、それが日銀の6回もの延期表明の背景にある。

 現在の消費者の状態は雇用需要が改善していても、特に将来不安は安倍政権発足以前とたいして変わらない。これからみれば、むしろ消費者物価上昇率はマイナスになる可能性が高いが、現状はマイナスまでには至っていない。

 ただし、最近では16年4月から9月まで半年間、消費者物価上昇率は総合指数で前年比マイナスだった。原因は前年の為替レートが1ドル120円台だったのが、100円台にまで上昇した円高の影響である。それが再度、円安傾向になり、16年末には110円台に戻し、17年はほぼ110円台前半で安定した推移になっている。これを受けて16年10月以降は総合指数で0%台だがプラスの微増で推移している。

 最新の6月の前年同月比上昇率は、総合は0.4%増、天候の影響を受ける生鮮食品を除く総合も同様に0.4%増、これに対し、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は0.0%、横ばいである。原油価格上昇の影響を除けば、前年と同じになり、最近は基調として顕著な上昇にはならないが、マイナスにはなっていない。

 消費者が節約志向、価格志向を強めているのを受けて、大手の小売企業は低価格のプライベート商品に力を入れている。このような消費環境からみれば、国際商品市況の上昇、円安にならない限り、過去の経験からの判断では、消費者物価上昇率はマイナスの予測になる。

 ところが、現実にはそうなっていないわけで、構造変化が生じている。6月の消費者物価を10大費目分類でみると、前年同月比でプラス、マイナスの両方があるが、目立つのは原油価格上昇の影響を受ける光熱・水道の3.5%増だけで、マイナスの方では最大でも家具・家事用品の0.8%減でしかない。

 消費財製造・販売企業は消費者のニーズに合わせて、コスト削減、低価格商品の開発・販売に力を入れている。従来、商品の低価格化は中国に代表される低賃金国で製造、輸入することで実現してきた。

 ところが、中国、タイなどで賃金が上昇し、現在はこれらの賃金上昇国・地域から低賃金国・地域へと製造拠点を移転している。結果、表面的には同じ様に見えても、従来の日本から低賃金の国に製造拠点を移すことで実現できた、商品の低価格化、消費者物価の引き下げ構造とは異なる。最近の中国やタイなどからの製造移転は、これまでに実現した低価格を維持するために、アジア諸国内での製造移転になっている。つまり、海外生産による一段の値下げまでを目的にはしていない。

 一方で、日本国内は労働力不足傾向にあり、低いとはいえ賃金水準は値上がりしている。これに対し、消費が回復しないなかで、小売企業は国内での人件費のコストアップを企業努力で吸収し、価格への反映は難しい。国内外の要因から、最近の横ばいから1%にも遠い微増の消費者物価上昇に現れているといえる。

 結局、海外商品市況や為替レートを別にすれば、消費が回復しなくても消費者物価上昇率はマイナスまでには落ち込まない。しかし、日銀の予測か期待かは分からないが、2%上昇はもちろん、1%台の上昇も予想できない。

6月の10大品目別消費者物価上昇率(前年同月比)

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| 2017年07月30日 | 景気 | comments(0) | - |

高齢化時代の労働生産性の経済成長への影響を考える

 今回の景気回復期において、経済成長率が高まらないにもかかわらず、労働力需要が好調なことが挙げられる。経済成長率は総労働時間と一人当たり生産性の伸び率との和になる。このため、総労働時間に関しては、労働力需要が好調で就業者数が増えても、短時間労働のパートが増える状況では経済成長率を引き上げる効果は弱くなる。それでも、正規雇用者も増え始めており、総労働時間が就業者数の伸びに見合うようになってきていると推測できる。通常、企業は生産性の向上に努めるため、プラス成長でも経済成長率が低ければ、就業者数は減少する。逆に言えば、就業者が増える状態では経済は高成長にはならなくても一定の成長にはなる。

 最近は就業者数が年率で1%前後の増加しており、少なくとも2、3%台の経済成長率になっても不思議ではないが、それが実現できていない。パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者が増えているのを考慮しても、総労働時間は微増でも増えていると考えられ、経済成長率が低い理由にはならない。

 とすれば、生産性が問題になる。生産性は資本装備率、つまり機械・装置による労働代替や、技術革新などによって決まるとされている。設備投資が盛り上がらないなかでも、企業の労働力不足の深刻化が言われる現状で、企業は生産性向上のための省力化投資には積極的にならざるを得ない。つまり、増えていると予想される。一方、技術革新は効率向上のためのITの発展が著しく、それはIT投資に反映されることを考えれば、資本と技術革新を分けて分析してもあまり意味はない。

それでも生産性が向上しないとすれば、介護や飲食業など生産性の低い産業の比重が高くなる、産業構造の低生産性化に変化していることが一つの要因として挙げられる。加えて、従来は生産性で取り上げられなかった労働力、就業者の年齢要因、つまり高齢化があるのではないか。この要因が案外大きい可能性がある。世界的にも人口、労働者の高齢化と生産性が真剣に議論されたことはほとんど無かったと思う。通常の企業・産業では高齢化すれば退職するからである。

 人口の少子高齢化が言われ始めてから久しく、かつては15歳以上の労働意欲のある労働力人口は90年代末ごろをピークに減少傾向になるといわれていた。ところが、就業者数の増加にみられるように、女性の労働力化や高齢者が労働市場から退出せずに働いているため、労働力人口は減少していない。もともと、景気が良くなって労働需要が増えると、労働市場に参入する傾向にあり、労働力人口は景気によって変動する傾向にある。つまり、最近のように労働力不足と言われるようになると、労働力人口、就業者数は増える。

 ただ、その中身は大きく変わり、もともと若者や中年の男性の就業化率が高いため、新規の就業者は少子化による若者の減少から、女性や高齢男性に比重が移る。もちろん、高齢化は男性も女性も同様で、労働力の高齢化は着実に進行する。また、労働供給側の主婦や肉体が衰えて短時間労働を希望する高齢者の増加は、パートやアルバイトの需要増に対応し、主婦や高齢者の就業者を増やす要因にもなる。

 一方、もともと高齢者は新しい技術や知識を覚えるのは苦手で、肉体も衰えるため、労働生産性向上の阻害要因になる。この問題を総務省「労働力調査」の5歳年齢別の就業構造変化から考える。

 24歳までは大学や大学院の進学率上昇の影響を受けるため、25歳からの5歳階級別に1996年から5年ごとに20年間の就業者数をみると、高齢化は顕著である。ちなみに、就業者総数は96年の6,486万人から、2011年の6,293万人まで減少し、2016年は6,465万人まで回復している。

 96年時点では当時の団塊の世代である45〜49歳が918万人で突出して多く、同様に団塊2世の25〜29歳は726万人と1世より減っても、それに次いで2番目である。退職世代の60歳以上は少なく、全体を合わせても847万人である。 そして、それから20年後の16年は団塊2世が40〜44歳、45〜49歳になり、それぞれ816万人、777万人で1、2位になる。ただし、最初の団塊の世代時と比較すれば、100万人レベルの減少である。団塊の世代が65〜69歳になったことで、この年齢階級は20年前の918万人からは半減以下の438万人だが、当時の65〜69歳の250万人からは大幅増である。また、70歳以上も332万人と着実に増え、60〜65歳は団塊の世代が過ぎたため減少したが、523万人もいる。60歳以上でみれば1,293万人で、96年と比較すれば、5割ほど増え、全体の20%になる。ちなみに96年は60歳以上で同13%だった。

もちろん、高齢者の就業者数が増えているのはその背景になる人口の効果だけでなく、就業率上昇の影響もある。96年と16年を比較すると、60〜64歳は52.6%から63.6%へと10ポイント以上、64〜69歳は38.5%から42.8%へと4ポイント強と伸びは顕著である。70歳以上は16.1%から13.7%と逆に低下しているが、底の10年の12.8%からは上昇になる。64〜69歳も5年ごとでは現れないが、70歳以上と同様に一時的に落ち込んでいる。第1次産業や小売業で高齢化から廃業し、労働市場から退出した影響の可能性が高い。この一時的な現象を除けば、高齢者の人口増と就業率の高まりの相乗効果で、高齢就業者の大幅な増加基調が続いている。

一方、16年の25〜29歳は少子化を反映して538万人で、01年の771万人からは233万人、3割もの減少になる。現在の人口から予測すれば、この年齢階級が500万人程度になるのはそれほど遠くない。

 就業者の高齢化が進めば生産性に影響することは避けられない。それが就業者数、ひいては総労働時間が増えも、生産性は低下し、経済成長率を就業者数の伸びほどには引き上げない主因と考えられる。

また、今後の見通しも明るいとはいえない。現在の日本経済を支えている就業者、労働者の中心は40歳代になる。労働能力を肉体と新しい知識を吸収する脳力とに分けてみれば、肉体は50歳代から60歳代になれば衰えは避けられない。また、脳力は従来からある分野の知識量は年に関係なく蓄積して増やせると期待できても、技術革新による新分野の知識の取得がピークになるのは40歳代か、遅くとも50歳代までであろう。とすれば、日本経済を支える就業者、労働者はその年代を過ぎつつあり、生産性にも波及してくると予測できる。如何にして20歳代、30歳代の就業者、労働者を増やすかが日本の課題になる。

25歳以上5歳階級別就業者数

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| 2017年05月01日 | 景気 | comments(0) | - |

産業別生産では福祉の好調と卸の不振が顕著

 2016年10〜12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比で0.3%増と4四半期連続のプラス成長になった。この間の成長率は0.5%増、0.5%増、0.3%増、0.3%増と低成長の推移で、プラス成長が持続しても景気回復感は広がらない。明るい雰囲気が出てこない要因の一つに、日本経済を牽引産業が見当たらないことが挙げられ、国民の景況感との関係は産業別の成長性も分析する必要がある。

 産業別の動向とそれを総合した総生産額は国民経済計算で公表されている。ところが、年ベースで、かつ最新でも15年になるため、最近の日本経済の動向を産業別に分析する資料としては使えない。それに近い統計として経済産業省「全産業活動指数」がある。これは建設業活動指数、鉱工業生産指数、第3次産業活動指数の3つの産業の活動指数から成り、建設業に関しては全産業活動指数の中で分野別に、また鉱工業と第3次産業はそれぞれの統計で業種別に月ベースで公表されている。

この中で、鉱工業生産指数(IIP)は推計精度が比較的良いと推測できるが、建設業活動指数と第3次産業活動指数に関しては疑問がある。それでも、各産業の成長性の判断材料にはなる。また、農林水産業が入っていないが、農林水産業はGDPの1%程度を占めるだけで、日本経済全体の景気からは無視できる。

 現在の活動指数は2010年を100とする指数、つまり、100を下回ると、今年であれば7年前の年平均水準を下回ることになる。当然、全産業活動指数は実質GDP成長率と同様の推移になり、年間では消費税増税の影響で14年度に落ち込み、15年度から回復基調にある。ただし、四半期ベースでは少し異なるところもあり、14年4〜6、7〜9月期を底に一度回復に転じ、そして15年4〜6月期から16年1〜3月期まで底這いの推移になった後、4〜6月期以降は穏やかな回復基調になっている。

これを産業別に見ると、3産業は13年度にいずれも成長し、なかでも不況対策で公共工事が増えた建設業は前年度比11.1%増の高成長になった。それでも、全産業では2.2%増に留まっている。建設業は全産業活動指数の5.8%を占めるだけで、全体を牽引する力は弱いためである。ちなみに、この割合は鉱工業20.8%、第3次73.5%である。そして、実質GDP成長率がマイナスになった14年度はいずれも減少に転じ、15年度は建設と第3次産業は回復に転じたが、鉱工業はマイナスが続いている。

 鉱工業の四半期別では15年度中は減少基調で、16年1〜3月期の96.1を底に回復基調にあってもその足取りは遅く、10〜12月期でも99.6と6年前の100水準を下回っている。ただし、月ベースでは12月に100.6と100を上回っており、17年1月は前月比減少に転じたが、100.2と100は超えている。この間、為替レートの円安が輸出産業を中心に、製造業の生産活動を引き上げる効果が期待されていたが、為替レートが生産活動に与える影響が小さくなっているのは、企業の立地戦略から当然で、最近では一般的に認識されるようになっている。これに関しては既に、この経済レポートで何度か指摘している。

 製造業に期待できなくても、全体の4分の3近くを占める第3次産業が比較的高い成長になれば、全産業、ひいては実質GDP成長率も高くなるという見方もできる。しかし、国内需要の低迷状況が続く中で輸出によって成長可能性のある製造業に対し、第3次産業にもソフト、コンテンツ、国際貨物・旅客輸送、金融などのように輸出産業はあるが、現状では大部分が国内市場に依存している。つまり、国内市場中心の第3次産業が全体を牽引する役割を担う可能性はもともと低い。

 第3次産業は15年度の伸び率が1.4%増と第3次産業としては比較的高成長であったが、16年4〜17年1月の9か月平均で15年度比0.5%増でしかない。この影響で鉱工業が回復に向かったにもかかわらず、16年に入って全産業や実質GDPの成長率が低成長で推移する要因になっている。

 第3次産業の特性を主要業種で特徴的なものを挙げると、IT技術進歩で注目を集めている情報通信業(第3次産業に占める割合10.6%、以下同じ)は高い伸びのように思われるが、17年1月でも109.5でしかない。移動電気通信業、ソフトウエアプロダクトなどのように新興の高成長分野もあるが、固定電気通信業、新聞業、出版業のように古くからある衰退業種もあり、全体としては高成長にはならない。また、金融保険業(9.3%)は金融緩和、為替レートの円安による投資、投機の活発化で15年度の114.4まで伸びてきたが、16年度に入ってその効果が一巡し、113前後の推移である。

 一方、個人消費の低迷を反映して、小売業(10.3%)や宿泊業、飲食店、娯楽業などの生活娯楽関連サービス(11.6%)は100前後の停滞状況にあるのは当然といえる。これらよりも減少傾向が顕著といえるのが卸売業(15.3%)になる。卸売業は12年度以降、上下変動はあっても100以下の推移になっており、17年1月は90.9まで低下している。小売業や日本経済の状況から考えれば、100前後が自然と思える。この乖離はデフレによる流通への合理化圧力や無店舗販売による流通ルートの短縮化の影響と推測できる。

 これらに対して、成長を続けているのが医療・福祉(12.4%)で、特に介護事業の伸びが高く、17年1月は医療業の115.7に対し、介護事業は123.0である。高齢化時代を迎えて当然といえ、雇用者数も顕著に増えている。ただ、財政や支払い能力の制約があり、成長力を高めるのは容易ではない。また、医療・福祉を輸出産業にすべきという意見はあっても、言葉や人材の問題があるため、長期的な戦略として取り組むべき課題で、当面は難しい。

 特に、福祉が典型的と考えられるが、福祉関連の機器もあるが、ほとんどが人材によって支えられている。それが雇用面ではプラスになっても、産業連関性に乏しいため、波及効果で産業全体、日本経済を引き上げる効果は弱い。つまり、福祉、ひいては同様の業種が多い第3次産業が成長してもGDP成長率が高くならないというのが実態である。

産業別活動指数の推移(2010年=100)と主要業種別第3次産業活動指数の推移(2010年=100)

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| 2017年04月01日 | 景気 | comments(0) | - |

7〜9月期のGDPの実態は原系列の方が分かりやすい

 2016年7〜9月期の実質GDP成長率が1次速報(季節調整値)で前期比0.5%増(年率2.2%増)になったと内閣府が発表した。内需の主要項目の民間最終消費は0.1%増、民間設備投資は横ばいに留まり、内需のGDP成長に対する寄与度は0.1%でしかなかった。一方、輸出は2.0%増、輸入は0.6%減で、外需の寄与度0.5%増(内需と合わせると0.6%増になり、GDP成長率の0.5%増を0.1%上回るが、これは四捨五入の影響による)が高かった。

 この発表を受けて、マスコミ各社は内需が弱く、外需依存の穏やかな成長という評価でほぼ一致している。実質GDP成長率は季節調整値の前期比で15年10〜12月期の0.4%減から、16年1〜3月期0.5%増、4〜6月期0.2%増、そして7〜9月期の1次速報値0.5%増の3四半期連続のプラス成長で、この推移からだけみれば、穏やかでも着実に成長軌道を辿っているように受け取れる。ただし、企業や国民は回復感が乏しいことを指摘するマスコミもある。

 もともと季節調整が正確かどうかの問題があり、特に最近のように東日本大震災や熊本地震、消費税増税など季節と関係ない突発的な変動要因が多くなると、季節調整値の信頼度は低くなる。このため、一般的に季調値があると、季調値は基調判断に使えるため、それに頼る傾向にあるが、原系列の前年比も参考にする必要がある。

 原系列の前年同期比は14年4月からの消費税増税の影響で、1?3月期に民間最終消費支出と民間企業設備投資、そして輸入が突出して伸びている。増税の影響が前年比でほぼ一巡したと推測できる15年10〜12月期から、16年7〜9月期1次速報値までの4四半期で原系列の前年同期比の推移をみると、景気の現状がよく理解できる。

 この間の実質GDP成長率は0.7%増、0.2%増、0.6%増、0.9%増となっており、1〜3月期を底に盛り返しているといえる。ところが、名目GDP成長率は2.2%増、1.1%増、1.4%増、0.8%増と逆に縮小傾向にある。名目の売上額で経営判断する企業にとっては厳しいと感じても不思議ではない。

 主要需要項目のうち、実質民間最終消費は1.0%減、0.2%減、0.5%増、0.1%増と前年水準前後の推移で、特に、名目は1.2%減、0.6%減、0.3%減、0.9%減とマイナス成長が続いている。収入面では低水準でも賃上げが行われ、就業者数は増えているため名目でプラスになっている。それにも拘わらず、消費がマイナス成長であるのは、消費者が将来不安から支出を抑える意識が強いことを示している。

また、実質設備投資は4.1%増、0.5%増、1.0%増、0.3%増である。設備投資は15年1〜3月期を除いて前年をわずかに上回る水準での推移であり、回復とはほど遠い状態である。以前から言われているように、企業は収益が改善しても設備投資意欲に乏しいことを反映している。

 一方、基調値の前期比で16年7〜9月期の成長の牽引役になった外需の輸出は原系列の前年同期比では0.4%減であり、4四半期連続の減少になる。なかでも、輸入は3.1%減の大幅マイナスになった。輸入は需要の海外流出であり、控除項目になる。つまり、輸入の減少はGDPにとってはプラス効果になる。その金額の効果をみると、7〜9月期の実質輸入の金額減は6,255億円になり、実質GDPの金額は前年同期比で1兆1,655億円の増加の半分強は輸入の減少によることになる。

 輸入は国際商品市況の値下がりや為替レートの円高で、輸入価格の値下がりが見込まれる場合、抑制されることはある。7?9月期頃は国際商品市況が底入れしてもそれほど顕著な値上がり傾向ではなかった。一方、円高傾向であったため、輸入価格からの効果が少しはあるとしても、それよりも国内景気の影響が大きいと考えられる。民間最終消費や設備投資の推移にみられるように、需要が伸びなければ製品や原材料の輸入は抑制されるからである。それがGDPの成長をもたらしても、喜べる状況にはない。

 ちなみに、輸入減効果、つまり7?9月期の輸入が前年同期と同額とすると、実質GDP成長率は前年同期比で0.9%増から0.4%増へと縮小する。これであれば、きわめて穏やかな成長が続いていることになり、企業や国民の実感に合っているといえる。原系列の前年比の推移から、実質GDP成長率の基調は0.5%増前後の推移と推測でき、マイナス成長ではないという程度のきわめて穏やかな回復軌道という判断になる。それから脱して力強い回復・成長路線に移行するためには、民間最終消費や設備投資、輸出にかかる。

 当面、民間最終消費や設備投資に期待できる環境になければ、輸出、つまり米国を中心とする世界経済に左右される。トランプ米新大統領の政策に期待する人も多いかもしれないが、現実に実行される段階になると、夢から覚めるという事態になるのではないか。輸出は増加する可能性は高いと予測できても、高いものは期待しがたい。

 また、内需では日本政府も景気対策に躍起になり、公共投資による経済成長の可能性は高い。しかし、最近では13年度に東日本大震災から復興投資で公共投資が大幅に増加したが、それが一巡すれば、元の木阿弥の現状がある。結局、公共投資に関しては、以前から確認されている一時的な効果が再確認されただけで、財政赤字を積み上げて付けを後世に回すだけでしかない。

図 主要需要項目別GDP成長率(原系列、前年同期比)

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| 2016年11月30日 | 景気 | comments(0) | - |

輸入面からの物価抑制圧力はピークを過ぎ、今後の消費者物価は

 2013年央頃から始まった消費者物価上昇は国際商品市況の上昇に加え、金融緩和による為替レートの円安で、輸入品価格が高騰した影響であった。それが一巡すれば消費者物価の上昇は終焉し、日本銀行が目標とする脱インフレ、2%の物価上昇は実現しないと以前からこのレポートで指摘してきた。

 実際、今年に入って、特に4月以降は消費者物価のマイナス基調が定着し、日銀は脱インフレの失敗を認めざるを得なくなっている。そして、前回のこのレポート取り上げた原油価格にみられるように、国際商品市況は底入れから、上昇に転じている。となれば、今度は日銀が目標にする2%は想定できなくても、物価が上昇し始めるのではないか、上昇するとすれば、どの程度かが問題になる。

 原油や穀物などの国際商品市況は08年9月のリーマンショック後の世界的な景気後退で大幅に下落したが、09年には底入れから回復に向かっていた。10年の欧州ソブリン危機や米国、中国の経済回復力の弱さから、全体的には需要の伸びは弱くても、投機資金の流入で日本への影響の大きい原油価格は大幅下落の反動もあって上昇は顕著になっていた。ところが、米国のシェール革命で供給が増え、需要回復の弱さと相俟って需給バランスが崩れた。それが明らかになった14年頃をピークに原油価格は急落し、そして、採算悪化による減産で16年に入ってようやく価格は底入れした。

 ただし、このような国際商品市況に対し、日本の輸入価格指数は前年同月比で、円ベース、契約通貨ベース(主にドルベース)のいずれも12年末頃まではほぼ横ばい水準で推移していた。それ以降は急速に両者に乖離傾向が見られるようになり、契約通貨ベースが14年央まで横ばい傾向の推移の一方、円ベースは急上昇になった。日銀の政策もあって為替レートが急速に円安になったためである。12年の1ドル=80円を挟む展開から、13年の春以降は100円前後まで下落し、1ドル当たりの円の上昇率は前年同月比で20%台になり、円ベースの輸入物価指数の上昇率は同10%台後半になった。

 輸入物価指数上昇の影響が国内企業物価指数に波及したのは半年ほど後度で、国内企業物価指数が前年水準を上回るようになったのは13年4月からである。それが2か月ほど掛かって消費者物価指数に波及した。

 逆に、国際商品市況が横ばいから下落傾向になっても、国内企業物価指数は15年3月までは前年水準を上回っていた。為替レートが15年夏頃の120円台まで円安になった影響だが、円安よりも国際商品市況の値下がりによる輸入物価の下落効果の方が大きくなり、円ベースの輸入物価指数は15年1月から、そして、国内企業物価指数は15年4月から前年水準を下回るようになった。

 一方、15年末ごろから国際商品市況は底入れ傾向がみられ、為替レートも円高へと転換した。この影響を同様に比較すると、輸入物価指数の契約通貨ベースは15年9月の21.1%減をピークに最初は穏やかに、61年に入って急速に減少幅を縮め、9月は7.0%減である。しかし、円ベースでは円安のため、20%台の減少が続き、円高が一服した9月は17.7%減である。

 また、国内企業物価は16年9月まで前年水準を下回る推移だが、4〜7月までの4%台の減少幅から、9月には3.2%減にとどまっている。国際商品市況が持ち直し、円高は一時的かもしれないが、小康状態になり、国内企業物価は落ち込み幅が縮小する傾向がみられる。この状況が続けば、国内企業物価は前年比横ばいか、小幅でも前年を上回るようになるかもしれない。現状は、少なくとも輸入面からの物価引き下げの影響力は15年秋頃がピークで、一巡しつつあると推測できる。

 その一巡後に圧力が上を向くのか、下を向くのかは国際商品市況と為替レート次第になる。ただし、その結果として、消費者物価がどう変動するかは需給要因、個人消費の影響が大きい。もともと、消費者物価指数は輸入影響の少ないサービス業の占める比重が高いこともあり、輸入物価指数が円ベースで上下に40%ほどの変動幅で大きく変動しても、国内企業物価指数はこの間、10%にも満たない小幅で、消費者物価指数は消費税分を除けば2%程度にとどまっていることからも明かである。

 国際商品市況は世界経済の成長力が穏やかな状態であれば、回復傾向が続いても高騰は予測できない。原油は産油国に値上げ意欲はあり、共同で減産に取り組む可能性はあるが、値上がりすればシェールガス・油の生産が増加する。加えて、技術進歩によってシェールガス・油の生産コストは低下しているため、1バーレル60ドル台が限界と推測される。

 為替レートは投機要因もあり、円高、円安の両方の可能性があるが、金利では米国の金利引き上げが予想され、円安環境にある。その一方で、政府や企業が円安を望んでも、米国がドル高に反対している状況から判断すれば、かつてのような大幅な円高は見込めない。

 つまり、輸入面からは力は弱くても物価を引き上げる要因と判断できるが、13年から14年初め頃のような影響力は考えられない。結局、国内の消費者次第になる。消費者は所得が増えないなかで、税・保険料負担が高まって可処分所得の伸びは抑えられ、「年金カット法案」が話題になっている状況で、将来不安の払拭は期待できない。結果、消費抑制が続くと予測され、デフレの解消が遠いとなれば、消費者物価は横ばい程度かマイナスが今後も続くことになる。


国内企業・輸入物価と為替レートの伸び率の推移(前年同月比)


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| 2016年11月06日 | 景気 | comments(0) | - |
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