スポンサードリンク

労働生産性では日本は対OECD平均で低水準の横ばいで推移

 アベノミクスが話題にならなくなって久しいが、替わってこの間の経済政策の評価が取り上げられるようになっている。当然、安倍政権側は日本経済は順調で、特に労働需要増による人手不足状態になっているように、経済政策効果が表れていると主張する。先々月、先月のこの経済レポートで指摘した景気変調に対しては、一時的なもので、景気は下降に向かっていないという見方を示している。

 一方、評価しない側はこの間の実質GDP成長率は高まっていない。人手不足も労働力人口減によるもので、賃金は上昇していないことを指摘する。結果、消費は回復せず、景気も世界経済の成長率が鈍化傾向になっている影響で、日本経済の景気拡大は終焉したという判断になる。

 ただ、景気は循環するため、不況に入っただけではそれまでの経済政策を否定できない。また、経済成長率、つまり実質GDP成長率は需要面からは人口、供給・生産面からは労働力人口の影響を受けるため、人口、労働力が減少している日本経済を、経済成長率だけで判断すると誤る可能性もある。米国が比較的順調に経済成長しているのは不法移民を含めて人口、労働力が増加している要因も無視ある。

 このため、国際競争力評価の基礎になる労働者1人当たりの労働生産性で評価するのが適切と考えられる。これは金額で算出することになり、そのままでは為替レートの影響が大きくなる。これに関しては日本生産性本部が購買力平価に換算したUSドルによる1人当たり労働生産性(以下、生産性)を発表しており、これを使うことで国際比較を比較的正確にできる。

 日本生産性本部のデータはOECD加盟国が対象で、現在の加盟36か国の統計になったのは2000年からになる。最新は17年で、加盟国中の日本の順位を2000年から18年の推移をみると、36か国中で05年と12年の20位、06年、08年、09年の22位以外は21位であり、ほぼ横ばいの推移といえる。ただし、日本より低いのは東欧、中東、中南米の国であり、欧米先進国の定義は難しいが、欧米先進国との比較では最下位水準での底這い状態での推移になる。

 

 また、金額水準でのOECD36か国平均(単純平均)との比較では、2000年の日本は5万2,810ドル、36か国平均は5万7,714ドルで、日本は平均の88.2%でしかない。この間の比率の推移をみると、20〜22位の順位を反映して87%、88%前後で、16年に89.2%と00年を上回ったが、17年は88.0%と低下している。

 一方、最も生産性の高い国と比較すると、図からも明らかなように日本の低下は否めない。17年世界1位のアイルランドの51.0%でしかなく、数年内に半分以下になる可能性がある。ただし、アイルランドは人口が480万人ほどしかなく、14年まで1位であったルクセンブルクは60万人弱であり、これらの人口小国との比較はあまり意味がない。

 人口の多い国で上位にあるのは米国になり、上位の2?4位で推移し、近年の15年から17年までは3位である。米国との比較では、日本は1990年の76.5%から、95年74.3%、00年には70.5%と急速に低下していた。そして、00年代に入って低下速度は穏やかになり、05年69.2%、10年66.0%でほぼ下げ止まっている。10年代はほぼ横ばいで、最も高いのは13年の67.3%、低いのは11年の65.3%であり、17年は66.1%であることから、横ばいの推移の点では対OECDと同じである。つまり、米国経済が順調といっても1人当たりでは経済成長率はOECD平均並みで、経済成長が良く見えるのは人口増要因が大きいことを示している。

 結局、生産性で比較して日本経済、産業の相対的な競争力低下は00年代までであり、10年代には下げ止まっていることから判断すれば、アベノミクス、現政権の経済政策は成果を上げたとはいえない。逆に、失敗とはいえないが、この間に大幅に膨らんだ国の財務残高、公費で買い支えている株価の正常化、収益が低下している金融機関などをどうするか宿題はむしろ増えている。

 当然、現状のように生産性がOECDの中でも36国中20〜22位程度で良いわけがなく、それを引き上げことも必要になる。これに関しても、政権がすでに長いことを考慮すれば、期待できない。少なくとも現政権が成果を上げていると威張れる状況ではない。

日本と主要国の1人当たり労働生産性の推移 (購買力平価換算USドルベース)

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2019年04月01日 | 景気 | comments(0) | - |

2014年度は景気後退、戦後最長の景気拡大ではないのでは

 2012年11月を景気のボトムに始まった今回の戦後第16回目の景気拡大は、19年1月で74か月になる。これは過去最長の景気拡大期間であったいざなみ景気と言われる02年1月から08年2月までの73か月を抜き、最長記録なるとして注目を集めている。その一方で、この間の経済成長率は実質GDPで平均1%台と低く、各年度の実績は最大でも13年度の2.6%増でしかなく、逆に最低は14年度の0.4%減のマイナス成長である。また、為替レート円安の恩恵を受ける企業の収益は良くても、それが賃金に反映されない。このため、所得の増えない一般国民は景気拡大を感じていないとして、マスコミは最長記録に疑問を投げかけている。

 国民からみれば、低成長で景気拡大しても所得が増えなければ、景気拡大が長期間続いても評価できない。それよりも短期間で景気が変動しても、景気拡大、好況期に賃金、所得が伸び、不況期の横ばい、減少を補って長期的に増えている方が望ましいと思うのは当然で、マスコミの見方に賛成する人が多いようである。

 短期の景気循環は在庫循環といわれ、例えば、景気拡大からピークを打って縮小への転換は、何らかの要因で最終需要が減少することが契機になる。この需要の減少で生産過剰状態になって在庫、「意図せざる在庫」がたまる。この過剰在庫の整理を目的として減産が行われる一方、不況対策の景気拡大策で需要が回復に減じれば、過剰在庫は整理される。結果、在庫の減少から生産が回復に転じ、景気はボトムを打って拡大が始まる。

 つまり、基本的に生産・在庫動向によって景気循環が決まることになるが、景気判断はその他の景気指標も含めた景気動向指数によって行われる。日本の場合、内閣府の経済社会総合研究所に設置した専門家による景気動向研究会で、景気動向指数の推移から決定することになっている。このときに政治的な配慮によって判断が変えられる可能性がないとはいえない。通常、経済政策に責任を持つ政府は景気拡大状態が望ましいわけで、景気後退、不況になったと判断するのはなるべく避けたいわけで、最近のはやりの言葉で言えば政府への忖度が働くことになる。

 今回の景気拡大が始まる前の12年からの鉱工業生産指数の推移をみると、前回の第15循環は12年にギリシャの債務危機の欧州財務危機への拡大、米国のオバマ政権と米議会の対立による連邦債務のデフォルト(債務不履行)危機などで景気に陰りがみられるようになったことで景気拡大が終焉を迎えた。欧米景気の先行き不安による円高も加わって輸出が減少し、この影響で12年3月が景気のピークになった。その後、欧州中央銀行(ECB)による支援、米国のオバマ政権と米議会の妥協によるデフォルト危機回避、中国の景気対策などで、世界景気が最悪期を脱した。輸出が回復する一方、国内では11年3月に発生した東日本大震災の復興需要も加わり、12年11月をボトムに景気は回復に転じた。

 この間の推移は図からも明らかなように、鉱工業在庫指数(季節調整値、末期値、以下いずれの指数も季節調整値)は4半期の推移で12年7〜9月期をピークに減少し、反対に生産指数は同年10〜12月期をボトムに回復に転じている。第2次安倍政権は同年の12月の景気回復後に就任し、景気対策に力を入れた効果もあって、その後、生産指数は着実に増加してきた。

 ところが、回復してきた生産指数は14年1〜3月期の103.6をピークに、4〜6月期は100.6、前期比2.9%減と大幅な減少である。その後も7〜9月期100.1と続落し、10〜12月期100.2のほぼ横ばい後、16年1〜3月期99.7、4〜6月期99.0と2四半期連続の減少で、7〜9月期にようやく101.7に持ち直した。これに対して、在庫指数(四半期末値)は14年1〜3月期の95.3をボトムに同年10〜12月の102.5まで3四半期連続で増加し、ようやく4四半期目、1年後の16年1〜3月期から減少に転じた。

 生産指数が落ち込んだ要因は14年4月に実施された消費税の5%から8%への引き上げにある。当初、消費税増税によって、特に民間最終消費支出は1?3月期に駆け込み需要が発生し、その反動で4?6月期に減少することは予想されていた。それは一時的で、7?9月期からは徐々に増税の影響が解消し、生産活動も回復基調に戻ると期待されていた。ところが、現実には国民の将来不安が予想以上に強く、民間最終消費支出が前期比でプラスに転じたのは1年後の15年4?6月期である。このため、14年度の実質GDP成長率は09年度の2.2%減以来の5年振りの0.4%減のマイナス成長になった。

鉱工業生産指数とGDPの推移から、何月かの判定は無理だが14年4?6月期から15年4?6月期頃まで1年以上の景気後退期があったと判断できる。ちなみに、いざなみ景気の第14循環の景気拡大期は、鉱工業生産指数に四半期ベースの前期比の減少はあってもそれは一時的で、年ベースの減少はなく、実質GDP成長率は四半期ベースでも前期比でマイナス成長はなかった。

内閣府の景気動向研究会が忖度したかどうかは不明だが、それがなければ景気動向指数からの評価は消費税増税で景気後退は生じなかったとしても、鉱工業生産指数とGDPからは景気後退がなかったとするのは無理がある。景気動向研究会が間違っているとすれば、景気動向指数に選択している景気指標が適切でないと推測できる。もちろん、最近のように国の統計に疑問が生じている状況では、指標が問題で、景気動向研究会は正しい可能性がある。それでも、鉱工業生産指数は基になる企業のデータが製造企業の経営に不可欠であり、企業の協力が得やすいと考えられ、相対的に精度の高い統計と推測でき、景気後退は否定し難い。

つまり、現在の第16循環が戦後最長の景気拡大ではないことになるが、もし景気動向研究会が正しいとしても、2018年11月がピークになって拡大期間は72か月に留まり、記録を更新できなかった可能性もある。理由は18年12月の鉱工業生産指数(速報)が104.7、前月比0.1%減と、11月の同0.1%減に続いて2か月連続のマイナス成長になり、製造工業生産予測指数も良いとは言えないからである。

2か月連続のマイナス成長でも、10~12月期では前期比1.9%増の高い伸びで、製造工業生産予測指数は19年1月見込同0.1%減、2月見込み同2.6%増と持ち直す見通しになっている。一時的な減少と期待もできるが、12月の実現率、1月の予測修正率はそれぞれ3.1%、2.4%のいずれも下方修正であり、実績はマイナス成長が続く可能性がある。米中対立の影響が中国経済に顕在化し、米国経済も息切れ傾向が出ており、主要輸出先市場が急速に厳しくなっている。今後も予測指数から実績の下方修正が続けば、鉱工業生産は減少基調になり、景気がピークを過ぎたことになるからである。

鉱工業生産・在庫指数の推移

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2019年02月01日 | 景気 | comments(0) | - |

形態別消費から1−3月期の消費不振を考える

 内閣府が発表した2018年1−3月期のGDP成長率の1次速報値は、成長率が前期比0.2%減と9四半期振りのマイナス成長になった。マイナス成長の要因はもともと成長率が低い中で、実質で民間最終消費支出と民間住宅建設が前期比で減少になり、また輸出の伸びが鈍化したため、輸出から輸入を差し引いた純輸出でもマイナスの伸びになったことにある。ただし、民間最終消費は前期比マイナス成長といっても、伸び率では0.0%減でしかなく、住宅の帰属家賃を除いて0.1%減である。

 これらの中で、住宅は低金利や相続税対策で貸家を中心に伸びてきたが、供給過剰が明らかになり、勢いが殺がれてきたことから、既に17年7−9月期から3四半期連続の前期比減少である。最近はこれにシェアハウスの家賃支払い問題が発生し、このマイナス要因も加わるため、減少傾向は長引きそうである。相続税対策では80年代末のバブル時にも同様の貸家建設ブームがあった。結果、バブル崩壊で銀行からの借り入れの返済ができなくなり、建築主が破産した例も多く、社会の雰囲気を暗くすることが懸念される。また、輸出は海外景気頼りになるが、米国の金利が高まっているため、海外景気が悪化しなくても、現状以上に良くなることは期待し難い。

 結局、今後のGDP成長率は消費支出の影響が大きくなる。もともと所得が増えない中で、増加する税・保険料の負担を除いた可処分所得の伸びはより低くなる。民間最終消費のほとんどを占める家計最終消費の帰属家賃を除いた統計でみると、実質(以下、全て実質ベース)で17年1−3月期から5四半期の前期比で17年4−6月期の0.8%増から、同年7−9月期の0.6%減まで変化は大きい。7−9月期は天候異変の影響による減少と推測されるが、消費変化の要因を形態別の消費支出で考えてみたい。それによって財・サービスの供給側、企業の努力によって消費が拡大する可能性も考えられる。

 内閣府の形態別家計最終消費支出は家具及び装備品、自動車、家庭用機器、テレビ受信機などの「耐久財」、被服・履物、食器類及び家庭用品、ゲーム及び玩具等、スポーツ要因等などの「半耐久財」、食料、飲料、新聞及び定期刊行物などの「非耐久財」、そして「サービス」の4分類になっている。それぞれの割合は耐久財1割強、半耐久財1割弱、非耐久財3割強、サービス5割弱である。

 この4種類のうち、非耐久財とサービスが全体的に期によって上下はあるが、基調としてはプラス成長でもほぼ前期比横ばいといえる程度の推移である。サービスは旅行のように非日常的なものもあるが、電気・ガス、医療・介護、通勤・通学の交通、通信などの日常的な必要不可欠なサービスも多い。当然、非耐久財は日常的な消費がほとんどで、これらは所得の実態や将来不安から支出に抑制的な消費行動を反映している。

 一方、耐久財は17年1−3月期の前期比3.1%増から、7−9月期の同1.7%減まで変化は大きい。これを耐久財の代表である乗用車需要でみると、自動車工業会統計の前年同期比で17年1−3月期からの5四半期の推移は7.8%増、13.2%増、4.1%増、1.6%減、2.7%減である。4−6月期の大幅な伸びから7−9月期の伸び率の鈍化は顕著であり、これが耐久財の前期比マイナスの大きな要因になったと判断できる。株価上昇の恩恵を受けた消費者のほか、自動衝突防止装置による運転能力が低下した高齢者の買い替え効果もあったと推測できるが、それらの効果が一巡した影響と考えられる。所得から考えれば再上昇は予測し難いが、自動衝突防止装置に代表される自動運転の新技術で需要の掘り起こしの可能性はある。

 また、半耐久財は17年1−3月期の前期比3.8%増から、同4−6月期2.2%減へと、耐久財以上に変動が大きい。特に、18年1−3月期は前期比2.0%減と4−6月期に近い落ち込みで、かつ、4種類の中で最も減少幅が大きい。流行の影響を受ける衣服と住宅需要の影響を受ける食器類及び家庭用品があり、原因は民間住宅の減少を受けたと考えられる。

 消費のベースには比重の大きいサービスと非耐久財があり、これらは可処分所得からみれば伸びが期待できないが、耐久財、非耐久財の乗用車、電気製品、衣料等は企業努力で需要を拡大できる可能性はある。例えば、17年1−3月期は前期比で非耐久財0.1%減、サービス0.3%増と低い伸びにもかかわらず、耐久財3.1%増、半耐久財3.8%増と高い伸びになった結果、全体の家計最終消費は0.6%増と比較的高い伸びである。一方、10〜12月期も前期比で非耐久財0.2%減とサービス0.2%増は17年1−3月期と同程度の伸びでも、耐久財2.2%増と半耐久財1.3%増は伸びが低くなっているため、家計最終消費は0.3%増に留まっている。

 企業努力による需要増加効果は不明だが、住宅需要や乗用車需要の一巡からみれば、耐久財、半耐久財が消費全体を引き上げるほどの伸びは期待できない。となれば、経済成長は輸出に依ることになり、輸出の増加は回りまわって所得増を通して消費にも効果はある。結局、従来から日本経済は輸出次第としてきた、今後は従来以上にその傾向が強まると判断できる。後は不明でも企業努力に期待するしかないのが現状である。

実質GDP成長率と形態別家計最終消費支出(実質)の前期比成長率の推移

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2018年05月31日 | 景気 | comments(0) | - |

1月の鉱工業生産の急減を考える

 2018年1月の鉱工業生産(季節調整値、速報)は17年12月の106.5から99.5、前月比6.6%減と急減した。ところが、経済産業省が製造工業生産予測指数が2月に持ち直しているため、一時的要因として生産の基調に大きな変化はないと発表しているのを受けて、ほとんどのマスコミは平静である。行政が発表に当たって、平静を装うのは通常で、実態を検討する必要がある。

 図に見るように5月にも鉱工業生産は大きく落ち込んでおり、一時的に急減することはあるが、この時は3.6%減である。過去には東日本大震災時に2桁台の前月比減少を記録したことがあるが、6.6%減は滅多にない減少幅である。景気の基調が変化する可能性を検討する必要がある。

 1月に鉱工業生産が大きく落ち込んだ主因として輸送機械工業の大幅減少が挙げられている。自動車主体の輸送機械は鉱工業の19.1%の比重があり、これが1月に前月比14.1%も減少し、これだけで鉱工業を2.7ポイント、減少幅の4割も占めている。業種別では同様に、はん用・生産用・業務用機械7.8%減、電子部品・デバイス6.3%減、電気機械7.9%減と、日本経済を支えてきた機械・電気・電子関連業種が軒並み急落である。

 在庫水準は高くはなく、これらの減少要因はまだ不明だが、例えば、自動車は主力の米国市場がもともとローン金利の影響を受けやすく、金利引き上げは需要のマイナス要因になる。金利引き上げ当初は金利引き上げが続く過程での駆け込み需要が発生する。結果として、初期には金利引き上げの影響は小さくても、いずれは効いてくる。かつ、今回はリーマンショックで落ち込み後の需要回復が一巡する時期に当たり、米国での自動車需要見通しは厳しくなる。ただし、日本の輸出統計で1月段階では乗用車輸出に顕著な変化は見られない。2月以降が注目される。

 今後に関しては、足元の2、3月は製造工業生産予測調査が参考になる。これによると、2月は1月の反動もあって前月比9.0%増になり、3月は同2.7%減だが、この2月の急回復を経産省が大きく基調変化が生じているわけではないとする論拠になっている。業種別では輸送機械が同13.6%増に留まり、高い伸びでも12月水準を回復しない予測になっている。一方、はん用・生産用・業務用機械12.2%増、電子部品・デバイス16.0%増、電気機械9.9%増と、いずれも12月水準を回復する予測である。

 これらの数字をみる限り、悲観的になる必要はないが、最近の予測指数は下方修正傾向にある。例えば、1月の鉱工業生産指数発表時に公表された12月調査の1月予測指数は4.3減と大きく減少する見込だったが、実績はそれをも上回る減少幅になった。また、2月予測指数は12月調査の5.7%増から、1月調査は9.0増と伸び率を高めているように見える。しかし、それは1月の実績が低くなったためで、12月調査予測値からは0.7%減と小幅ながら生産水準としては下方修正である。

 それでも2月実績は1月の生産水準が下がったため、下方修正であっても伸び率が高くなるのは確実である。この間の鉱工業生産の推移は12月が2.9%増であり、1月の大幅減少、2月の急回復予測からは小幅に見えても、2.9%増は高い伸びになる。つまり、この間の変動は大幅過ぎる。

 一般的に景気が回復、上昇期には、事前予測を実績が上回る上方修正、頭打ちから下降期には、その逆の下方修正になるのが通例であった。ところが、最近は長期的に景気上昇が続いているにも拘わらず、予測値の伸びを実績が下方修正になることが多い。要因としては、現状の生産水準が低いため、予測調査に対して期待値として高めの数値を回答する傾向にある。または、明るい雰囲気作りを求められていると感じ、それに応えるために高い回答をしていることが考えられる。

 これらの事情があったとしても、生産活動は設備や人員を変動し難いため、コストから考えれば、安定的生産が基本になる。1月に急減させ、2月の実績はまだ不明だが、急回復というのは異常と言える。

 これから考えると、マスコミを通して景気は良いという意見が流され、明るい雰囲気作りがなされている。足元は危うい状態が続いており、1月の鉱工業生産はその実態を垣間見せたとみることもできる。もちろん、数か月すれば、1月の数字も忘れられるような着実な回復基調にある可能性もあるが、楽観しないほうが良いのではないか。

鉱工業生産指数と輸送機械工業生産指数の推移

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2018年03月08日 | 景気 | comments(0) | - |

消費者物価上昇率見通しの希望・期待と現実

 2013年3月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏は、脱インフレの象徴として消費者物価上昇率2%を目標に掲げ、当初は2年程度で実現するとして大規模な金融緩和を続けてきた。その後も2%上昇は実現するとしてきたが、5年近く経った現在でも実現していない。この経済レポート欄で所得が増えない一方、税・保険料負担が増え、社会保障政策の改悪が進む状況で、将来不安が高まっているため、国民の消費抑制傾向が続く。結果、消費者物価は上昇せず、2%上昇は実現しないと主張してきた。

 実際、2%目標は未達成のままで、当初は実現を信じていたとしても、最近はそれを信じる人はほとんどいなくなったと思う。それでも、それを信じて期待していた政府関係者や政権支持者は、その旗を降ろした影響が経済だけでなく、政治的にも怖くて、上げた旗は降ろせないのが実態ではないか。

 ところが、最近になって新たに2つの意見がみられるようになっている。1つは2%上昇でなくても脱インフレは実現し、1%台で十分としてハードルを切り下げる、もう一つは、消費者物価上昇率が高まりつつあり、2%上昇が近く実現するというものである。

 もともと、需給が悪化し、物価が下がる現状をデフレというが、需給が悪化しなくても物価が下がることはある。日本では為替レートの円高時に輸入物価の値下がりを通して消費者物価が下がる経験がある。円高になると輸出採算が悪化し、輸出を増やし難くなるため、輸出産業は大騒ぎして社会全体として景況感は悪くなる。しかし、実際の景気はそうではなかった最近の例では、2008年の1ドル100円台から11年の70円台までの円高時に、09年3月を景気のボトムに、12年3月のピークまで景気は回復、上昇していた。この間、13年5月まではほぼ前年同月比でマイナスであった。つまり、需給悪化、不況と物価の下落はイコールではない事例である。

 この意味から消費者物価に拘らない考え方はあり、2%上昇になれば脱デフレと決める根拠はない。つまり、1%台で脱デフレと判断することは可能である。ただ、目標の引き下げは金融緩和のマイナス面の影響が顕在化してきたためで、金融政策転換をし易くするのが目的という批判もある。

 また、16年末ごろから消費者物価上昇率は穏やかでも上昇傾向にあり、総合指数で17年12月の前年同月比は1.0%増になった。変更の大きい生鮮商品を除く総合も11月に続いて2か月連続の0.9%増で、水準が切上がりつつあるようにみえる。しかし、生鮮食品と、消費者物価への影響が大きくて価格上昇の激しいエネルギーを除く総合では、12月も0.3%増に留まる。物価の基調が変化したとは言い難い。

 エネルギーは輸入原油の比重が高い影響が現れたが、すでに輸入原油価格高騰の波及効果は一巡しつつある。それは消費者物価指数と国内企業物価指数、輸入物価指数との関係から分かる。まず、国内企業物価は16年年央頃の前年比マイナスから徐々にマイナス幅を縮小し、17年に入って同プラスにまで上昇し、これが消費者物価にまで波及してきた。国内企業物価上昇の背景には輸入物価指数の高騰がある。

 輸入物価指数の統計には円ベースと契約通貨ベースがあり、当然、円ベースの輸入物価が国内企業物価、さらには消費者物価に直接、影響するが、契約通貨ベースと比較することで、契約通貨ベースでみられる国際商品市況とそれに為替レートの影響のいずれによる価格変動か判断できる。

 契約通貨ベースは16年央頃の大幅な落ち込みをボトムに急回復し、17年3月の前年同月比12.6%増をピークに落ち着き、上昇は一巡傾向にある。上昇の要因は中国が低価格の鉄鋼製品の輸出を抑制し、また、世界景気の回復で非鉄金属の価格が回復したことで、金属製品価格全体が上昇した。加えて、原油が産油国の減産による需給の改善と政情不安があり、1バレル当たりの原油価格は30ドル台から60ドル台にまで大幅値上がりしてきた。ただ、上昇一途というわけではなく、頭打ち傾向にあるため、前年比上昇率は頭打ちから低下傾向にある。特に、原油は現状以上に値上がりすると、米国のシェールオイル・ガスの生産が拡大する可能性が高く、それが重しとなって最近の水準は限界にきている。消費者物価への影響の大きい原油価格の頭打ちが契約通貨ベースの上昇一巡をもたらしている。

 円ベースの輸入物価指数は契約通貨ベースから7カ月遅れて10月がピークである。契約通貨ベースから遅れた要因は為替レートの円安にあるが、今年は年明け後、為替レートは円高である。円高が今後も進むかどうかは不明だが、トランプ大統領の貿易赤字対策から判断すれば17年水準を超えるような円安は考え難い。以上から判断すれば、輸入物価を通しての消費者物価上昇は予想できない。

 となれば、国内要因による消費者物価上昇の可能性が問題になる。これに対して、労働需給のひっ迫が賃金上昇をもたらし、それが商品・サービスの値上がりに繋がるとする2%目標の実現を予想する新しい意見が現れてきた。実際、パート、アルバイトの賃金は上昇傾向にあるが、労働需給統計のひっ迫状況からみれば、上昇率は低い。

 賃金の上昇に加えて原材料費の値上がりを理由に値上げを実施した飲食業もあるが、一部に留まっている。逆に、大手小売企業はプライベートブランドを中心に製品値下げに力を入れており、消費者の財布の紐は相変わらず固いと判断している。多くの消費者を顧客にしている大手小売業の方が、全体の実態を認識しているとみるのが正当であろう。

 また、政権の3%賃上げ要請に対して応える大手企業も存在するが、広がる気配はない。むしろ、年明け後の円高は円安で潤った輸出企業に賃上げ抑制に向かわせる可能性もあり、税・保険料負担が増える状況で、どれだけ実収入が増えるのか見通しは厳しい。

 消費者物価の2%上昇どころか1%台の上昇も当面予想できないが、長期の異常な金融緩和のマイナス面を問題にする主張が広がり始め、金融政策の転換を求める声が強まりつつある。それに対して、低金利による株高が政権を支えているため転換できないという見方もあり、そうであれば現在の異常な金融緩和が長期的し、そのツケは貯まる一方になる。

消費者物価と企業物価指数の推移(前年同月比上昇率)

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2018年01月31日 | 景気 | comments(0) | - |

2018年度の経済成長率は輸出の伸び鈍化で17年度を下回る見通し

 昨年度の2016年度の実質GDP成長率は実績で1.2%増だった。伸び率の高かったのは民間住宅建設の6.2%増と財貨・サービスの輸出の3.4%増で、民間住宅建設は輸出より高い伸びでも金額は少なく、寄与度では0.2ポイントでしかない。結局、輸出主導の成長になるが、海外経済の回復力は力強さに欠け、為替レートが15年度の1ドル=120円から、16年度は108円へと円高になった影響もあって、輸出の伸びは低かったため、GDP成長率も低成長になった。ちなみに、15年度は1.4%増であり、減速したことになる。また、16年度の名目GDP成長率は1.0%増に留まり、実質を下回った。

 17年度の実質GDP成長率実績見込は、17年7〜9月期のGDP二次速報を受けて発表された民間の予測機関が1.7〜1.9%増、政府は1.9%増であり、下期の見通しに殆ど差がないことになる。16年度より成長率が高まるのは確実だが、1%台成長であれば、低成長から脱したとは言い難い。同様に、名目も政府の2.0%増に対し、民間は1.6〜2.0%増であり、乖離は小さい。

 成長率が高まった要因は民間最終消費と輸出にある。16年度に成長が高かった民間住宅建設は頭打ちになっているが、中国が共産党大会に向けて積極的に景気対策を行ったことや欧米の景気回復で、輸出は16年度より伸びている。また、民間最終消費が低い伸びでも平均賃金と雇用の増加効果で、僅かでも回復力を強めているからである。当然、民間最終消費は所得面からみれば輸出増の恩恵があり、この点でも輸出主導といえる。前回のこの経済レポートで、海外経済によって日本の景気が変動する構造を指摘したが、基本的にこれが17年度も変わらないことを示している。

 1年前の17年度経済見通しを需要項目別にみれば、それぞれ上下に乖離が目立つ項目もあるが、名目GDP成長率は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの0.6%増を除けば、1.2〜1.5%増で、実質は全てが0.9〜1.2%増と、格差は0.3ポイントの範囲内に収まっていた。いずれにしても、政治的判断が加わる政府の名目GDP成長率を除けば、17年度は実績が見通しを上回る可能性が高い。原因は輸出にあり、為替レートは見通しと実績見込にほとんど差がないため、中国の政策効果や欧米、特に欧州の経済見通しが過小評価にあったといえる。

 18年度見通しでは、輸出が17年度とは逆の効果が予測されている。実質GDP成長率の政府見通しは民間への賃上げ要請効果を見込んでいるためか、民間最終消費の伸びが下支えして1.8%増と、17年度実績見込とほぼ同水準である。これに対し、民間の予測機関見通しは1.0〜1.3%増と成長減速予測である。もともと、政府見通しが民間の見通しを上回るのが通常で、前年の17年度の見通しと比較すれば、今年の18年度見通しは両者間の乖離が少し拡大している。政府は経済成長の鈍化は予測しづらいからからである。

 要因として、中国は党大会対策がなくなるのに加え、欧米がまだ低水準でも金利引き上げに動いているため、世界経済の成長率が低下し、輸出の伸びが鈍化する影響が大きい。また、民間の為替レートは17年度の112円程度から、18年度は112.5〜116.2円でいずれも小幅の円安基調の見通しであり、為替からの輸出増加効果もほとんど期待できない。

 もちろん、安倍首相の民間企業への賃上げ要請が影響力を持てば、賃上げによる収入増で民間最終消費の伸びが高まり、GDP全体を下支えする政府見通しが実現する可能性も考えられる。しかし、民間予測機関は賃上げ率が高まると予測していないため、輸出の鈍化と共にGDP成長率も低下する見通しになる。加えて、現実には増税や社会保険料負担の増加による可処分所得へのマイナスもあり、民間最終消費の回復、拡大は期待し難い。

 一方、18年度の名目GDP成長率見通しは政府の2.5%増は別として、民間は1.2〜1.9%増と乖離が大きい。この差の要因として物価見通しがある。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は0.5〜1.2%増と幅広い。国際商品市況や雇用ひっ迫による人件費の上昇が物価に波及するかどうかの判断が異なるためである。

 これは、雇用者所得の伸びの鈍化、低い民間最終消費の伸びとは矛盾すると受け取れる。しかし、賃上げ率は低くても、企業、特に小売・サービス企業が人件費を含めてコストを企業努力で吸収するのは限界にきていると判断すれば、比較的高い消費者物価上昇の予測とは矛盾しない。現実に、小売価格の値上げを発表する企業は増えている。

 ただし、低成長下で生産性が上昇せずに物価が上昇すれば、名目GDP成長率が高まるだけで、実質GDP成長率は高まらない。現在のように失業率が低い状態で国民の生活を豊かにするには、各企業・産業の生産性を向上させるか、生産性の高い産業の比率を高める方向へと産業構造の転換を進めるしかない。最近の議論では労働生産性、産業構造の視点が抜けているため、説得力が弱い問題がある。

2018年度の経済見通しの主要項目別一覧

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2017年12月29日 | 景気 | comments(0) | - |

日本経済の成長構造は変わったか

 2012年12月に第2次安部政権が誕生してから5年近く経った。覚えきれないほど経済政策のキャッチフレーズが出されているが、経済成長率で見る限り前民主党時代から高まっていないことは、各方面から指摘されている。もちろん、マクロの経済成長率では特に変化がなくても、その構造が変化していれば、今後の成長率の高まりに期待を持てる。

 しかし、残念ながら本質的に構造変化が見られないことは、発表された7〜9月期のGDP統計(1次速報)の以下のような特徴に典型的にみられる。

 実質GDP成長率は前期比で0.3%増(年率1.4%増)と最近では特に高くも低くもなかった。GDP成長率全体を引き下げた要因は、15年10〜12月期以来7四半期ぶりに0.5%減のマイナス成長になった民間最終消費支出にあることは誰の目にも明らかである。もともと、個人消費が盛り上がらない中で、前期が0.7%増と比較的高い伸びをした反動と夏の天候不順の影響と推測できる。これからみれば、個人消費に特に変化はないと考えられる。

 また、民間住宅も10月1日付のこの欄で予測した通り、同様に7四半期ぶりのマイナス成長だが、絶対額が小さく、全体に与える影響は小さい。

 一方、民間企業設備は4四半期連続プラス成長だが、0.2%増でしかなく、企業収益が高水準を維持しているにも関わらず、16年10〜12月期の1.9%増を除けば低い伸びが続いている。企業は長期的に国内需要、輸出も含めて国内生産が増えることは考えず、設備新増設投資は抑制し、最低限必要な設備更新、競争力維持・強化に必要な合理化・省力化投資に留めていることが窺える。この姿勢が変わることは期待し難い。

 以上のように国内需要が低迷し、特に民間最終消費のマイナス成長によって、内需全体が実質GDP成長率の0.2%の引き下げ要因になったのに対し、外需が0.5%引き上げ、全体として0.3%成長になった。

 財貨・サービスの輸出が4〜6月期の0.2%減から1.5%増へと持ち直すと同時に、GDPの控除項目になる財貨・サービスの輸入が反対に1.4%増から1.6%減になり、両要因からGDPを0.5%引き上げる効果になった。ちなみに、4〜6月期は内需が0.9%の引き上げ、外需が0・2%の引き下げであったのと比較すると、4〜6月期の内需主導の成長から、7〜9月期は外需主導の成長へと全く真逆になる。

 以上の説明やグラフからも明らかなように、個々の各需要項目の四半期別の推移は大幅に変化する。これは季節調整の精度の問題も考えられるが、それは別として、たまたま各重要項目が高い伸びになれば、それを積み上げたGDPは比較的高成長になる。逆であれば、低成長、マイナス成長になる。

 7〜9月期は外需の伸びが内需のマイナスを補い、最近のGDP成長率の基調程度の成長になった。10〜12月期は民間最終消費が天候要因の好転で反動増が見込める一方、外需の財貨・サービスの輸入も反動増が考えられ、内需主導の成長に戻ると予測できる。いずれにしても、四半期の動向に一喜一憂しても仕方がない。よれよりも基調の評価が重要になる。

 以前から、この経済レポートで日本経済は内需が所得の伸びや人口減少から低成長を余儀なくされる状況で、外需、輸出、つまり海外経済によって日本の景気が変動する構造になっていると指摘してきた。海外経済は好転していても、欧米の金融政策の転換を事前の予想より遅れていることは、需要の伸びが弱いこと示し、それが日本経済の成長力に波及している。

 結局、7〜9月期までのGDP統計をみると、安部政権の経済政策の効果はなく、日本経済の構造はほとんど変化がないと判断できる。今年も年末を迎え、民間の予測機関から来年度の日本経済の成長率見通しが発表されるが、海外経済に期待が持てなければ、日本経済は低成長が続く見通しになる。

主要需要項目別GDP成長率(前期比)

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2017年12月03日 | 景気 | comments(0) | - |

民間住宅の盛り上がりは一巡

 最近のGDP統計では民間住宅の高成長が目立っている。2016年度の実質GDP成長率1.3%増に対し、実質民間住宅は6.6%増の高い伸びである。17年4〜6月期(2次速報値)も同様に前期比でそれぞれ0.6%増、1.3%増となっており、民間住宅は好調を維持している。

 ただし、民間住宅は高い伸びでも、金額は16年度の名目GDP538兆円中17兆円、3%でしかなく、直接的なGDP成長への寄与度は低い。それでも、新しい住宅を購入すると、家具や家電製品などが更新される効果があり、この間接的な影響を考慮すれば、寄与度は大きくなり、景気判断ではGDPに占める比重が低くても注目すべき項目になる。

 民間住宅の動向を国土交通省「住宅着工統計」の新設住宅着工戸数でみると、15年3月から回復を始め、前年度比伸び率で14年度の10.8%減から、15年度4.6%増、16年度5.8%増と15年度から顕著に回復している。ちなみにGDPの実質民間住宅成長率は14年度9.9%減、15年度2.8%増で、GDP統計は進捗ベースであるため、着工から完成まで年月が掛かる住宅では、変化の影響は遅れて現れる。

 今回の住宅建設の特徴として、利用関係別で貸家が15年度7.1%増、16年度11.4%増と突出して高い伸びになっていることが挙げられる。貸家の16年度の着工戸数は42.7万戸、全体の97.4万戸の43.8%を占めている。かつては持ち家の方が多かったが、最近は貸家が最大になっている。ちなみに、16年度の持ち家は29.2万戸、マンションを含む分譲住宅は24.9万戸である。

 一方、建設投資額でみれば、貸家は1戸当たりの面積が狭くて小さくなり、16年度工事費予定額は全体の13.9兆円のうち、貸家は3.6兆円、25.9%にとどまる。それでも約4分の1であり、全体に与える影響が小さいわけではない。ちなみに、持ち家は6.3兆円、分譲住宅は4.0兆円で、貸家を上回る。

 住宅ローン金利が長期的にほとんど底這い状態の低水準で推移するなかで、13年度の税制改正大綱によって、相続税が15年1月1日から増税された。結果、相続税対策として貸家建設が急増し、マンション投資の盛り上がりも含めて住宅建設の成長性を高めてきた。

 ところが、新設住宅着工は今年の2月以降、前年水準前後の推移に変わり、頭打ち傾向になっている。年初初期はマンションの減少がその要因だったが、6、7月には貸家や持ち家が前年水準を下回るようになり、4〜7月で貸家は前年同期比0.8%減、持ち家1.9%減である。回復、成長を主導してきた貸家の変調が新設住宅着工の頭打ちの要因として大きい。

 貸家建設は不動産会社による長期一括借り上げ方式が多いが、オーナーが騙されたとして不動産会社に対する訴訟が広がっている。この問題は以前からあったが、最近、マスコミにも取り上げられ、その影響が着工に現れ始めたと判断できる。主たる訴訟要因は、貸家の供給過剰から入居率を維持するため、不動産会社がオーナーに家賃の引き下げを求めることにある。そうなると、オーナーは住宅建設費の回収が困難になるとして訴訟になる。

 もともと、人口が減少に向かい、一般的にも空き家が増えていることはよく知られている。地方からの移住で増えている都市は少なく、一部を除けば住宅需要が大きく伸びる環境にはない。かつ、雇用者所得が増えない状況では、入居者の支払い能力には限界がある。貸家建設コストを回収できるだけの家賃支払い能力のある入居希望者がどれだけ存在するか、厳しいと判断できる。

 つまり、中古の貸家より家賃の高い新設貸家需要が大きく伸びる状況にはない。貸家不足の地域でも貸家新設・供給が増えれば、貸家供給が需要を上回る時期は、それほど遠くはないと予想できた。結果として、訴訟の発生から考えれば、それが16年度の早い時期だったのではないか。

 また、分譲の半数ほどを占めるマンションは着工の変動が大きいが、実需が増加していくとは考え難い。むしろ、爆買いしていた中国人が、中国政府の海外投資規制で日本でのマンション購入を抑制、さらには売却に転じている。基調としては減少の方向が予想される。

 金利は物価動向から判断すれば、金融政策を転換できるとは考えられないため、持ち家は変動しないとしても、全体として新設住宅着工は減少が避けられない。それが進捗ベースのGDP成長率に波及するのは7〜9月期以降になり、実質民間住宅は7〜9月期にはまだ頭打ち傾向にとどまっても、10〜12月期以降にはマイナス傾向に転じると予測できる。ただし、GDP成長率における民間住宅の比重は間接的な効果を含めても大きくはないため、それが景気を転嫁するほどの影響力は考えられない。景気は現在の経済成長を支えている輸出次第になる。

 住宅の新設で経済成長を期待するよりも、量的には過大になっている住宅のストックを活用すべきである。つまり、成熟社会ではフローの拡大からストックの利用に変わるのが当然と思う。

利用関係別住宅着工の前年比伸び率の推移

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2017年10月01日 | 景気 | comments(0) | - |

消費者物価は何故マイナスにならないのか

 日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、消費者物価の見通しを修正し、以前から目標にしていた消費者物価上昇率2%の達成を、これまでの2018年度頃から19年度頃へと先送りした。もともと、2%上昇は13年3月、日銀総裁に就任した黒田東彦氏が金融緩和によって2年間で達成する、と発表したことで注目を集めた。それから実現できずに今日に至り、今回の延期は実に6回目になる。また、就任した副総裁は「2年間で物価上昇を実現できなければ辞任する」と発言したが、現在も副総裁のままである。

 当初は金融緩和の効果に加え、それまでの円高要因だったヨーロッパの金融危機が収まりつつあったため、為替レートが円安になった。同時に、国際商品市況が上昇したため、輸入物価上昇の影響で消費者物価上昇率はそれまでのマイナスからプラスに転じ、2%上昇の実現を期待を込めて予想する見方もでていた。

 それに対し、消費者の実態から、円安と国際商品市況上昇の影響が一巡すれば、消費者物価上昇率は元に戻るとこの経済レポートで主張してきた。その後も所得があまり増えない一方、税・社会保険料の負担は増え、将来不安が少しでも改善する見通しはない。結果、消費者の節約志向が続き、それが日銀の6回もの延期表明の背景にある。

 現在の消費者の状態は雇用需要が改善していても、特に将来不安は安倍政権発足以前とたいして変わらない。これからみれば、むしろ消費者物価上昇率はマイナスになる可能性が高いが、現状はマイナスまでには至っていない。

 ただし、最近では16年4月から9月まで半年間、消費者物価上昇率は総合指数で前年比マイナスだった。原因は前年の為替レートが1ドル120円台だったのが、100円台にまで上昇した円高の影響である。それが再度、円安傾向になり、16年末には110円台に戻し、17年はほぼ110円台前半で安定した推移になっている。これを受けて16年10月以降は総合指数で0%台だがプラスの微増で推移している。

 最新の6月の前年同月比上昇率は、総合は0.4%増、天候の影響を受ける生鮮食品を除く総合も同様に0.4%増、これに対し、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は0.0%、横ばいである。原油価格上昇の影響を除けば、前年と同じになり、最近は基調として顕著な上昇にはならないが、マイナスにはなっていない。

 消費者が節約志向、価格志向を強めているのを受けて、大手の小売企業は低価格のプライベート商品に力を入れている。このような消費環境からみれば、国際商品市況の上昇、円安にならない限り、過去の経験からの判断では、消費者物価上昇率はマイナスの予測になる。

 ところが、現実にはそうなっていないわけで、構造変化が生じている。6月の消費者物価を10大費目分類でみると、前年同月比でプラス、マイナスの両方があるが、目立つのは原油価格上昇の影響を受ける光熱・水道の3.5%増だけで、マイナスの方では最大でも家具・家事用品の0.8%減でしかない。

 消費財製造・販売企業は消費者のニーズに合わせて、コスト削減、低価格商品の開発・販売に力を入れている。従来、商品の低価格化は中国に代表される低賃金国で製造、輸入することで実現してきた。

 ところが、中国、タイなどで賃金が上昇し、現在はこれらの賃金上昇国・地域から低賃金国・地域へと製造拠点を移転している。結果、表面的には同じ様に見えても、従来の日本から低賃金の国に製造拠点を移すことで実現できた、商品の低価格化、消費者物価の引き下げ構造とは異なる。最近の中国やタイなどからの製造移転は、これまでに実現した低価格を維持するために、アジア諸国内での製造移転になっている。つまり、海外生産による一段の値下げまでを目的にはしていない。

 一方で、日本国内は労働力不足傾向にあり、低いとはいえ賃金水準は値上がりしている。これに対し、消費が回復しないなかで、小売企業は国内での人件費のコストアップを企業努力で吸収し、価格への反映は難しい。国内外の要因から、最近の横ばいから1%にも遠い微増の消費者物価上昇に現れているといえる。

 結局、海外商品市況や為替レートを別にすれば、消費が回復しなくても消費者物価上昇率はマイナスまでには落ち込まない。しかし、日銀の予測か期待かは分からないが、2%上昇はもちろん、1%台の上昇も予想できない。

6月の10大品目別消費者物価上昇率(前年同月比)

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2017年07月30日 | 景気 | comments(0) | - |

高齢化時代の労働生産性の経済成長への影響を考える

 今回の景気回復期において、経済成長率が高まらないにもかかわらず、労働力需要が好調なことが挙げられる。経済成長率は総労働時間と一人当たり生産性の伸び率との和になる。このため、総労働時間に関しては、労働力需要が好調で就業者数が増えても、短時間労働のパートが増える状況では経済成長率を引き上げる効果は弱くなる。それでも、正規雇用者も増え始めており、総労働時間が就業者数の伸びに見合うようになってきていると推測できる。通常、企業は生産性の向上に努めるため、プラス成長でも経済成長率が低ければ、就業者数は減少する。逆に言えば、就業者が増える状態では経済は高成長にはならなくても一定の成長にはなる。

 最近は就業者数が年率で1%前後の増加しており、少なくとも2、3%台の経済成長率になっても不思議ではないが、それが実現できていない。パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者が増えているのを考慮しても、総労働時間は微増でも増えていると考えられ、経済成長率が低い理由にはならない。

 とすれば、生産性が問題になる。生産性は資本装備率、つまり機械・装置による労働代替や、技術革新などによって決まるとされている。設備投資が盛り上がらないなかでも、企業の労働力不足の深刻化が言われる現状で、企業は生産性向上のための省力化投資には積極的にならざるを得ない。つまり、増えていると予想される。一方、技術革新は効率向上のためのITの発展が著しく、それはIT投資に反映されることを考えれば、資本と技術革新を分けて分析してもあまり意味はない。

それでも生産性が向上しないとすれば、介護や飲食業など生産性の低い産業の比重が高くなる、産業構造の低生産性化に変化していることが一つの要因として挙げられる。加えて、従来は生産性で取り上げられなかった労働力、就業者の年齢要因、つまり高齢化があるのではないか。この要因が案外大きい可能性がある。世界的にも人口、労働者の高齢化と生産性が真剣に議論されたことはほとんど無かったと思う。通常の企業・産業では高齢化すれば退職するからである。

 人口の少子高齢化が言われ始めてから久しく、かつては15歳以上の労働意欲のある労働力人口は90年代末ごろをピークに減少傾向になるといわれていた。ところが、就業者数の増加にみられるように、女性の労働力化や高齢者が労働市場から退出せずに働いているため、労働力人口は減少していない。もともと、景気が良くなって労働需要が増えると、労働市場に参入する傾向にあり、労働力人口は景気によって変動する傾向にある。つまり、最近のように労働力不足と言われるようになると、労働力人口、就業者数は増える。

 ただ、その中身は大きく変わり、もともと若者や中年の男性の就業化率が高いため、新規の就業者は少子化による若者の減少から、女性や高齢男性に比重が移る。もちろん、高齢化は男性も女性も同様で、労働力の高齢化は着実に進行する。また、労働供給側の主婦や肉体が衰えて短時間労働を希望する高齢者の増加は、パートやアルバイトの需要増に対応し、主婦や高齢者の就業者を増やす要因にもなる。

 一方、もともと高齢者は新しい技術や知識を覚えるのは苦手で、肉体も衰えるため、労働生産性向上の阻害要因になる。この問題を総務省「労働力調査」の5歳年齢別の就業構造変化から考える。

 24歳までは大学や大学院の進学率上昇の影響を受けるため、25歳からの5歳階級別に1996年から5年ごとに20年間の就業者数をみると、高齢化は顕著である。ちなみに、就業者総数は96年の6,486万人から、2011年の6,293万人まで減少し、2016年は6,465万人まで回復している。

 96年時点では当時の団塊の世代である45〜49歳が918万人で突出して多く、同様に団塊2世の25〜29歳は726万人と1世より減っても、それに次いで2番目である。退職世代の60歳以上は少なく、全体を合わせても847万人である。 そして、それから20年後の16年は団塊2世が40〜44歳、45〜49歳になり、それぞれ816万人、777万人で1、2位になる。ただし、最初の団塊の世代時と比較すれば、100万人レベルの減少である。団塊の世代が65〜69歳になったことで、この年齢階級は20年前の918万人からは半減以下の438万人だが、当時の65〜69歳の250万人からは大幅増である。また、70歳以上も332万人と着実に増え、60〜65歳は団塊の世代が過ぎたため減少したが、523万人もいる。60歳以上でみれば1,293万人で、96年と比較すれば、5割ほど増え、全体の20%になる。ちなみに96年は60歳以上で同13%だった。

もちろん、高齢者の就業者数が増えているのはその背景になる人口の効果だけでなく、就業率上昇の影響もある。96年と16年を比較すると、60〜64歳は52.6%から63.6%へと10ポイント以上、64〜69歳は38.5%から42.8%へと4ポイント強と伸びは顕著である。70歳以上は16.1%から13.7%と逆に低下しているが、底の10年の12.8%からは上昇になる。64〜69歳も5年ごとでは現れないが、70歳以上と同様に一時的に落ち込んでいる。第1次産業や小売業で高齢化から廃業し、労働市場から退出した影響の可能性が高い。この一時的な現象を除けば、高齢者の人口増と就業率の高まりの相乗効果で、高齢就業者の大幅な増加基調が続いている。

一方、16年の25〜29歳は少子化を反映して538万人で、01年の771万人からは233万人、3割もの減少になる。現在の人口から予測すれば、この年齢階級が500万人程度になるのはそれほど遠くない。

 就業者の高齢化が進めば生産性に影響することは避けられない。それが就業者数、ひいては総労働時間が増えも、生産性は低下し、経済成長率を就業者数の伸びほどには引き上げない主因と考えられる。

また、今後の見通しも明るいとはいえない。現在の日本経済を支えている就業者、労働者の中心は40歳代になる。労働能力を肉体と新しい知識を吸収する脳力とに分けてみれば、肉体は50歳代から60歳代になれば衰えは避けられない。また、脳力は従来からある分野の知識量は年に関係なく蓄積して増やせると期待できても、技術革新による新分野の知識の取得がピークになるのは40歳代か、遅くとも50歳代までであろう。とすれば、日本経済を支える就業者、労働者はその年代を過ぎつつあり、生産性にも波及してくると予測できる。如何にして20歳代、30歳代の就業者、労働者を増やすかが日本の課題になる。

25歳以上5歳階級別就業者数

JUGEMテーマ:経済全般


経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

| 2017年05月01日 | 景気 | comments(0) | - |
スポンサードリンク
Copyright (C) 景気 | 経済への視点. All Rights Reserved.