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企業規模に関係なく低い賃上げ率

 2017年4〜6月期の実質GDP成長率(一次速報値)が前期比1.0%増、年率4.0%増と比較的高成長になった。その主因の一つに実質民間最終消費支出がそれぞれ0.9%増、3.7%増になったことが挙げられる。一部には消費税増税による影響が解消し、個人消費が持ち直す兆しとする楽観的な見方も出てきている。

 消費が基調として改善に向かうには、消費者が将来を現状よりは悪化しないと思えなくてはならない。社会福祉政策面では長寿命化に伴って税・保険料負担を増やし、かつ医療・介護費の個人負担比率を引き上げられている。近年の高齢者就業率の上昇は、それだけ健康な高齢者が増加したといえる一方、蓄えを増やせなくても、少しでも減らさない目的もあると推測できる。

 となると、個人消費は雇用増と賃上げによる収入面からの改善効果に期待するしかない。雇用は長期的にひっ迫状況が続いていれば、求める労働条件を高くしない限り、就労の場の確保の心配は少なくなる。加えて、遅ればせながら正社員の需給も改善傾向にある。

 問題は賃金である。労働者1人当たりの賃金の伸びは、労働需給のひっ迫、政府の賃上げ要請のかけ声にも拘わらず、低い伸びで推移している。基本的に基本給が上がらない、つまり、賃上げが不十分なためである。

 賃上げを厚生労働省「賃金引き上げ等の実態に関する調査」でみると、17年の賃上げの発表はまだだが、16年までの実績は常用労働者(正社員以外の長期雇用の労働者も含む)100人以上の企業の加重平均で12年1.4%、13年1.5%、14年1.8%、15年1.9%、16年1.9%である。僅かでも賃上げ率が高まる傾向から、16年に頭打ちになった。

 この調査の17年は不明でも、同省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」では16年の2.38%から、17年は2.14%に下がっている。これから推測すれば、1.8%以下になっているとまではいえなくても、1.9%を超えるとは考えられない。

 16年の1.9%は金額では5,176円でしかない。税・保険料負担が増える中で、この程度の賃上げ額であれば、手取りが増えていても、その実感は乏しいと推測でき、17年も変わらないであろう。

 また、最近の特徴として4区分の企業規模間で賃上げ格差が小さいことが挙げられる。つまり、低水準横並びの推移である。12、13年は規模間賃上げ率格差が0.1ポイントしかなく、それも4区分のなかで、いずれも1つだけが0.1ポイント高いだけで、他の3つは同じである。

 賃上げ率が高まった14年は格差が拡大したが、それでも1.6〜2.1%で、最大で0.5ポイントの格差でしかない。そして、15年もその傾向が強まっても、1.6〜2.2%にとどまり、0.1ポイント広がっただけである。逆に、16年は1.8〜2.0%、最大で0.2ポイントに縮小し、均一化傾向にある。これは別掲の参考資料の製造業と卸・小売業の30〜99人も同様の推移であり、調査対象外の小零細企業の29人以下を除けば格差は小さい。

 いずれにしても、よほどの事情がない限り、マイナスの賃上げ、つまり賃金の切り下げはない。つまり、企業規模間の賃上げ格差が小さいのは、好景気で収益を挙げている企業が賃上げを抑制しているのが原因と考えられる。例えば、アベノミクスによる円安で、14、15年には輸出産業、特に常用労働者数でいえば5,000人以上の自動車の完成車メーカーは高収益を得ていた。しかし、その労働者への還元は賃上げではなく、一時金を増額する方法をとっている。

 結果、それほど収益が上がっていない企業は、採用のために高収益企業に対抗して賃上げする必要がないため、低く抑えるのは当然である。そして、低水準横並びの賃上げになれば、一時金収入時に消費支出を拡大しても、それは一時的で、基調としては抑制的にならざるを得ない。

 以上から判断すれば、個人消費は雇用増の下支え効果で悪化する可能性はないが、力強い回復は予想できない。四半期では季節的要因などで比較的高い伸びをすることはあり、4〜6月期の数字で消費回復とするのは過大評価になる。

 また、賃上げは賃金コストアップから製品・サービス価格の引き上げに繋がり、政府や日本銀行が求めている消費者物価上昇にも結び付く。しかし、1%台の上昇ではそのコストアップ分は企業努力で吸収され、消費者物価の上昇にならないことは最近の物価動向から明らかである。

 逆に言えば、製品・サービス価格の引き上げが需要の減少をもたらすため、企業努力で吸収できる程度の賃上げが現在の賃上げ率・額といえる。民間の判断すべきことに国が口を出す問題の評価は別として、企業が賃上げに消極的であるのに対し、賃上げを要請するのは景気、物価対策から正当といえる。しかし、強引な国会運営と比較すれば、消極的過ぎる結果が現状である。

常用労働者規模別賃上げ率の推移(加重平均)

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| 2017年08月30日 | 雇用 | comments(0) | - |

外国人労働者では留学生の「資格外活動」による就労が高い伸び

 人口、ひいては労働力人口の減少が始まり、労働力不足の深刻化が言われているが、現実にはこの前回のレポートでみるように、就業者数は微増で推移している。女性や高齢者の就業が増えているためで、就業を希望する人が性、年齢に関係なく働けることは評価できる。その一方で、高齢者の就業増は労働生産性からみれば懸念がある。また、当面は女性や高齢者によって労働力不足を何とか補えるとしても、いつまでもこの状態が維持できるわけではない。

 となれば、外国人労働力の導入を考える必要があるが、短期滞在の観光客としては歓迎しても、長期滞在、さらには定住する労働力としての外国人に対しては、治安の不安から反対する国民は少なくない。また、安倍首相を支持する右翼的な人は日本の伝統が崩壊する懸念から反対しており、当面は実現可能性は低いと考えられる。

 現在の外国人労働者の在留資格には専門的な能力を持つ「専門的・技術的分野の在留資格」、外国人技能実習制度による「技能実習」、留学生による「資格外活動」、戦前からの在日朝鮮・韓国人の永住者とその配偶者、日本人配偶者、日系人などの「身分に基づく在留資格」、数は少ないがワーキングホリデー、外交官等に雇用される家事使用人等の「特定活動」の5種類がある。

 技能実習はもともと技能を取得して本国に貢献するための制度で、資格外活動は学生アルバイトになり、生産性の高い労働者にはならない。一方、専門的・技術的分野の在留資格は生産性が高い可能性はある。また、身分に基づく在留資格は多様な労働者が混在していると考えられる。

 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」が現在に統計になった2008年から16年(各年10月末時点調査)までの8年間の推移をみると、全体では92.6%増である。在留資格別では、08年は技能実習と特定活動が分けられていなかったため、この2つは合計する。専門的・技術的分野の在留資格100.4%増、技能実習・特定活動1004.7%増、資格外活動147.2%増、身分に基づく在留資格163.2%増などとなっている。全体では8年間で2倍ほどになり、その中で就労による収入を目的とする留学生の増加が目立っている。一方、2000年代に入って移民の多いブラジルの経済発展と日本の不況で、日系ブラジル人のブラジルへの帰国が多かった影響で、定住者の身分に基づく在留資格の伸び率は低い。

 ただし、人数は16年で全体108.4万人中、41.3万人、38.1%と4割近くが身分に基づく在留資格になる。これに対し、専門的・技術的分野の在留資格20.1万人、全体の18.5%、技能実習・特定活動22.0万人、同20.3%(うち技能実習21.1万人が圧倒的に多く、同19.5%)、資格外活動24.0万人、同22.2%といずれも20万人強に留まる。

 8年間で2倍近い伸びは年率では10%近い伸びになり、外国人労働者は急増しているといえる。しかし、前回のレポートにみるように、16年の日本の就業者数の約6,500万人と比較すれば、この108万人に統計から外れている違法な外国人労働者が少なくないとしても、それを加えても就業者全体のせいぜい2%ほどでしかなく、全体の生産性に影響を与えるような存在ではない。

 特に、日本の経済発展、生産性向上に貢献が期待される専門的・技術的分野の在留資格は外国人労働者全体の伸びを若干上回る程度の増加で、今後に期待するとしても、現状からみればかなり先になる。ちなみに、16年の産業別外国人労働者数の産業別では、製造業が突出して多く、33.9万人、31.2%、以下、卸売・小売業13.9万人、12.9%、宿泊・飲食サービス業13.1万人、12.1%、教育・学習支援業6.0万人、5.5%、情報通信業4.4万人、4.0%などとなっている。

 これに対し、同様に専門的・技術的分野の在留資格は情報通信業が最も多く、3万3,656人、16.7%、以下、製造業3万994人、15.4%、卸売・小売業2万8,536人、14.2%、教育・学習支援業2万5,269人、宿泊・飲食サービス業1万3,065人、6.5%などである。

 外国人労働者の雇用は相対的にみて、製造業は技術者、研究者よりも製造部門が中心で、情報通信業はIT部門の技術者の採用が中心で、専門的・技術的分野の在留資格が突出して多い。また、卸・小売業は輸出入業務、訪日観光客への販売、教育・学習支援業は外国語教師に語学専門家として採用していると考えられる。

 生産性が高い専門的・技術的分野の在留資格の外国人労働者の拡大が課題とすれば、優秀な人材を巡って国際獲得競争の中で、彼らが来たいと希望する国になることが必要になる。その選択の一つに自由と民主主義があると思うが、この点で問題が大きい。

 国際的な評価の国際NGOの国境なき記者団(本部・パリ)による2017年の報道の自由度ランキングで、調査対象の180カ国・地域のうち日本は前年と同じ同じ72位、イタリア(52位)を下回り、主要国7カ国(G7)で最下位になった。また、政府が成立を急いでいる共謀罪に関して、国連人権理事会のプライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏(マルタ大学教授)が、いわゆる「共謀罪」法案について「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と懸念を表明している。国連の最終報告書ではないが、国連組織の責任者の表明だけでも、自由と民主主義の国としての評価を引き下げることになる。広い視野での政策の検討が必要な時代である。

図 在留資格別外国人労働者数 

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| 2017年06月01日 | 雇用 | comments(0) | - |

労働力不足下でも平均賃金が増えない理由を考える

 消費低迷の要因としてマスコミでも指摘されるようになった、国民が政府の社会福祉政策による将来不安から、生活防衛で支出を抑制している影響というのはよく理解できる。一方、有効求人倍率が上昇を続け、労働力不足は深刻化している。それにも拘わらず、所得は厚生労働省「毎月勤労統計調査」の平均賃金でも前年比で1%増にも満たない僅かな伸びでしかない。安倍首相も企業に賃上げを呼びかけ、経団連もそれに応える姿勢を示しているが、賃金にはほとんど反映していない。収入が増えず、将来不安が高まれば、消費低迷は当然といえるが、労働需給と賃金の関係が崩壊し、労働需給と賃金との乖離現象が現経済局面の特徴として挙げられる。

 かつては雇用者数が増えていても、その中身はパートで、正社員はむしろ減少していたため、それが平均賃金が増えない理由になり、説得力を持っていた。また、低賃金産業での雇用の増加を賃金が増えない理由として以前、この経済レポートで指摘したこともある。ところが、労働者不足傾向が強まり、2015年頃から正社員の雇用も底入れ、さらに増加に転じてきた。また、パートの人材不足から、パート賃金の値上げも一部で行われるようになり、正社員とパートの雇用動向や産業要因だけでは説明し難くなっている。

 今回は総務省「労働力調査」(詳細集計)の年間収入階級別でその理由を考える。労働力調査の詳細集計では正規職員・従業員(勤め先で一般職員や正社員などと呼ばれている人)と非正規職員・従業員(勤め先で「パート」「アルバイト」などと呼ばれている人、「労働者派遣事業所の派遣社員」・「契約社員」・「嘱託」など)に分けて、収入階級別に集計されている。

 これによると、東日本大震災後の12年からの推移で、正規職員・従業員数は14年の3,278万人をボトムに増加に転じ、16年には3,356万人にまで回復している。正規職員・従業員の年間収入は階級別で低賃金の「100万円未満」や「100〜199万円」の人数は減少傾向にあるのに対し、「400〜499万円」「500〜699万円」の階級は着実に増加している。つまり、正規は増加に転じているのに加え、全体として高収入階級に移行しており、この間の賃上げやボーナス増の恩恵を受けていることを示している。

 一方、非正規職員・従業員数は企業の雇用戦略を反映して一貫して増え続け、16年には2,015万人、全職員・従業員数の38%を占めるまで拡大している。年間収入の階級別は正規とは逆に「100万円未満」や「100〜199万円」の人数は引き続き増えており、その他の階級も増える傾向にあるなかで、正規がボトムになった14年を挟んで変化がみられる。

 非正規全体に占めるこれら低収入の2階級を合わせた「200万円未満」の割合は12年の75.5%から、16年は74.0%へと1.5ポイントも低下しているが、14年は74.2%である。つまり、12〜14年は「200〜699万円」の非正規が比較的高い伸びになり、「200万円未満」の割合が顕著に低下したが、14〜16年はそれにブレーキが掛かった状態になっている。これは正規を希望してもその就職先が見つからない人がやむを得ず非正規で働いていたのが、正規に転職できるようになり、それによって非正規が抑制された影響と推測できる。

 また、「100万円未満」と「100〜199万円」の人数はそれぞれ12年で731万人、638万人、16年で775万人、717万人、この間の伸び率は6.0%増と12.4%増であり、所得水準の高い「100〜199万円」の増加数が「100万円未満」を上回っている。全体としては低賃金の非正規職員・社員でも賃金水準が上昇していると判断できる。

 それでも正規職員・従業者は「200〜699万円」の収入が16年で2,438万人、正規の72.6%を占め、これに対し非正規は大部分が「200万円未満」であり、かつ絶対数は「100万円未満」の方が多いことは、全体の所得水準を引き下げる影響は大きい。また、14年からの正規の雇用増は全体の平均賃金を引き上げる効果になっても、その一方で、この間に非正規の中の高収入非正規の割合の上昇速度が低下すれば、非正規平均、ひいては正規も含めた全体平均の引き上げテンポを減速することになる。もちろん、各階級の金額幅は少なくとも100万円もあり、その幅の中のどの位置にあるかが分からないため、単純に評価はできないことに留意する必要がある。基本的には、着実に収入階級が上位に移行しなければ、賃金上昇には限界があるといえる。

 また、「100万円未満」の低収入階級が労働需要の拡大下で着実に増加し、また高齢者雇用の就業増と合わせて考えると、年金不足の補填や生きがいなど個々の事情は別として、パート労働志向の強い高齢者が増えてきていると判断できる。それは、通常の営業時間の企業にとっては、フルタイム従業員であれば1人で済むのを、複数の従業員が必要になる。結果、従来と同様の経済状態でもより多くの雇用者を使うことになり、それだけ求人数を膨らせ、有効求人倍率を実態以上に高めることになる。

 人手不足でも企業は人口減少、高齢化が進む日本の市場拡大に期待を持てないため、労働コスト抑制意欲が強く、建前では安倍首相の賃上げ要請に同意しても、賃上げには慎重になる。これらの要因が重なり、毎月勤労統計調査でみて前年比0%台増でしかない賃金上昇になっている。労働需給と賃金との乖離現象をもたらす現在の環境が変化することは想定し難い。このため、景気が不況に落ち込まない限り、労働需給の逼迫状況が続くと予想できても、賃金は上昇しない。そして、それは消費者物価の上昇を抑える要因にもなる。

年間収入階級別正規の職員・従業員数

年間収入階級別非正規の職員・従業員数

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| 2017年03月01日 | 雇用 | comments(0) | - |

春闘を鉱工業生産指数から考える

 賃金上昇は特に、労働生産性向上が難しいサービス業の価格の値上げに結び付くため、消費者物価指数の2%上昇を目指す政府にとっては関心が高い。もちろん、それが低迷する消費拡大を通して経済成長率を引き上げる効果もあり、安倍首相は財界に異例といえる春闘の賃上げを要請している。これを受けて、経団連の榊原定征会長は2015年11月、業績が好調な企業に対し、16年春闘では「今年を上回る水準を期待する」との意向を表明した。

 ところが、今年に入って経団連の指針は昨年の基本給の引き上げを「選択肢の一つ」としていたのに対し、「一律的な基本給の引き上げに限られず、様々な選択肢が考えられる」と手当、一時金等を含める見解を示した。これだけでは抽象的で真意が分かり難いが、マスコミは昨年より後退したとしている。また、労働側も日本労働組合総連合で賃上げの基準になる金属労協が今年の春闘要求額を「ベースアップ月額3,000円以上」と、昨年の「6,000円以上」の半分に引き下げている。

 昨年の賃上げは企業収益が大幅に好転しているにもかかわらず、個人消費の回復をもたらすには期待外れであった。これらの動きから判断すれば、今年は昨年より賃上げ額が低くなり、個人消費の回復は見込み薄になる。ただし、これは名目の話で、政府や日本銀行の希望的観測とは逆に、消費者物価の上昇が止まり、さらには下落も予想されるため、名目賃金の伸びは低くても実質の個人消費は堅調ということはあり得る。

 14、15年の実績からみて、企業収益と賃金との関係が薄れている。基本的に企業が人件費の抑制に力を入れているためだが、もう一つの理由として、経団連の主要企業や春闘に影響力を持つ労働組合が製造業に偏っていることがある。

 工場労働者は需要が増えて忙しくなれば、好況感が生まれ、企業は儲かっていると思い、それを背景に賃上げに対して強気になれる。しかし、為替レートの円安で輸出や投資収益が膨らむ効果で企業収益増になっているだけでは、労働者にその実感はない。一方、経営者も円安が長期的に続く保証はないわけで、円安による収益増では賃上げには踏み切れないことはこの1、2年の実績が示している。

 製造業の生産動向を鉱工業生産指数でみる限り、景気回復といえるかどうか、ましてや好況とはほど遠い。2010年を100とする指数で、15年12月実績は速報値で96.5でしかなく、5年前の年間平均をまだ回復できていない。最近時で100を超えているのは15年1月の102.1だけで、ほぼ1年間100を下回っている。

 ただし、労働者の感覚は最近時の労働実態の影響が大きく、実感は景気の短期的な変動を判断するのに使われる季節的要因を除いた季節調整値よりも、原数値の前年比の方になる。四半期で季節調整値では15年4〜6月期1.4%減、7〜9月期1.2%減の2四半期連続のマイナス成長から10〜12月期は0.6%増へと回復である。これだけでは生産が好調かどうか分かり難い。

これに対し、原数値の前年同期は14年7〜9月期から15年10〜12月まで6四半期連続のマイナス成長である。特に、前年に消費税増税の駆け込み需要で生産が増えた影響もあって、14年10〜12月期1.5%減、15年1〜3月期2.1%減であった。消費税増税を考慮しても、15年春闘の賃上げの引き下げ効果は大きいと考えられる。つまり、安倍首相や経団連の賃上げ支援発言にもかかわらず、15年春闘の実績は低く、15年度の個人消費が低迷し、経済回復に勢いが付かない要因の一つになっている。

 そして、今年の春闘に影響する15年10〜12月期は0.4%減の微減でもまだ水面下で、12月は1.6%減である。このような状況が今年の金属労協の春闘要求額に反映していると推測できる。16年に入って生産が回復しても、急回復する条件は見当たらず、せいぜい前年並みか、微増程度であろう。経団連、連合の姿勢や鉱工業生産指数の推移から判断すれば、既に結果は出ている。

 もちろん、労使交渉で賃金が決まる正規労働者は一部で、多くの労使交渉のない企業の労働者、また組合員でない非正規労働者の賃金の方が全体として占める割合は大きい。これらの労働者の賃上げはより厳しいのが実態である。例えば、パートの有効求人倍率は1を大きく上回る状態が続き、労働需給は逼迫している。それでも非正規労働者の賃上げは少額でしかない。パートの需給逼迫が今まで長期的に続いていることからみて、16年に急に非正規労働者の賃金が上がるとは想定できなし。


鉱工業生産指数の推移

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| 2016年01月31日 | 雇用 | comments(0) | - |

高まる女性の就業率ー崩れるM字型就業構造

 前回のレポートで出生率を取り上げたが、今回はそれと相互に影響し合う女性の就業を考える。就業をみる場合、就業者数・率は景気の影響があるため、労働力人口・率を取り上げる例が多い。労働力人口は就業者と就職活動をしている人の合計で、就業者や就職活動も景気の影響を受け、また就職活動は失業保険の給付期間の影響もあるため、ここでは就業者でみる。

 女性の就業ではM字型就業構造が知られている。学校を卒業して就職し、就業率が上昇する。そして、結婚、出産で退職して下降した後、子育てが終われば就職して再度、就業率が上昇する。その後は高齢化に伴って徐々に退職していく結果、上昇、下降、上昇、下降のM字型になる。

 ところが、1994年、04年、14年の20年間の女性の5歳階級別就業率の推移をみると、94年は20〜24歳と45〜49歳をピークとするM字型が明確だったが、14年では30〜39歳で少しへこみがみえる程度で、顕著ではなくなっている。

 94年の最初のピークの20〜24歳から落ち込んだボトムの30〜34歳は、70.5%から51.4%へと20ポイント近い落ち込みである。これに対し、14年は最初のピークが高学歴化を反映して25〜29歳の75.7%になり、ボトムは同じ30〜34歳でも68.0%へと、減少幅は半分以下の8ポイントにもならない。

 この20年間で30〜34歳が27ポイント近くも就業率が高まり、30歳代でもほぼ7割もの女性が働いている。女性の非婚化、晩婚化、また、結婚しても出産しないか、出産退社せずに働き続けることが一般的になっているといえる。

 また、高齢者の就業率も高まり、60〜64歳で47.6%、半数近く、65〜69歳で30.5%と3割が働いている。一方、70歳以上は94年10.4%、04年8.7%、14年8.9%と増えているとはいえないが、長寿命化によって高齢者が増えるため、就業率が下がっても不思議ではない。

 70歳以上の女性就業者数でみれば、この間、73万人、91万人、124万人と増加数が加速する傾向にある。働きたくて働いているのか、生活が苦しいためかなどその理由は不明だが、70歳以上男性の14年の就業者は194万人である。13年から8万人増えており、15年には200万人を超えそうで、高齢者も人口減少時代を迎えて貴重な労働力になっている。

 ちなみに、男性の就業率は30から54歳まで90%台であり、女性を大きく上回っている。ただし、14年のピークは35〜39歳の93.2%に対し、94年には同じ35〜39歳がピークでも96.5%であり、男性の就業率は下がっている。つまり、男女間の就業率格差は縮小する傾向にある。

 女性の就業率の今後は不明だが、最近の動向をみる限り、上昇すると予想できる。産業構造がサービス経済化すれば、サービス業は相対的に女性に向いた仕事が多いため、女性の就業者が増えるのは不思議ではない。もちろん、女性側にも理由は別として働く意欲を向上させる要因が不可欠である。

 いずれにせよ、出生率を上げるには出産しても働ける社会の構築が必要になり、政府が進める保育所の拡大は適切といえる。ただし、それは需要側からの判断であり、供給側の保育士は労働条件が悪いため、就職希望者が少ない、つまり供給不足の問題がある。これは介護士と同じ構造で、一人で多くの幼児の面倒をみられないためである。保育士の待遇改善には親の負担を高くするか、税金で補助するしかない。

 現実は、低賃金の非正規労働者が増えているため、高い保育料を負担する能力のある人は少ない。今春闘も賃上げが叫ばれ、賃上げが行われたという報道が目立ったが、厚生労働省「毎月勤労統計」でみれば、労働者全体で賃上げが実現しているとはいえない。結局、税金で補助するしかないが、政府はそこまで考えているのかどうかが問われる。

女性の5歳階級別就業率の推移

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| 2015年11月30日 | 雇用 | comments(0) | - |

春闘賃上げは所得の伸びと結び付くか

 消費者物価の上昇率が所得の伸びを上回り、実質所得がマイナス成長状態であれば、当然のこととして民間最終消費支出(個人消費)は低迷する。この認識が広がったことで、政府は企業に今年度の賃上げを昨年度を上回るように要請し、財界も全体として企業収益が好調なため、一定の賃上げを認めている。個別でみれば、特に為替レート円安の恩恵が大きい輸出産業の自動車で、賃上げ額が高くなりそうな雰囲気である。

 賃上げと個人消費、景気の関係では、現実の所得にどれだけ反映されるかが問題になる。1年前も同様の雰囲気があり、2014年の賃上げ額は13年を上回った。といっても、厚生労働省の「賃金引き上げ等の実態に関する調査」によると、14年の全体の1人平均賃金の改定率は1.8%、13年の1.5%を0.3ポイント上回っただけである。かつ、この集計の対象は企業規模100人以上で、100〜299人1.6%、300〜999人1.7%、1,000〜4,999人2.1%、5,000人以上1.9%である。99人以下の中小零細企業ではせいぜい1%、さらには賃上げゼロの企業も多いと推測される。

 また、賃上げの対象になるのは正社員で、それ以外の実施は不明である。厚生労働省「毎月勤労統計」の5人以上事業所でみると、パートタイム労働者以外の長期の非正規労働者を含む一般労働者の所定内給与の前年比は、14年の後半でも1%増にも満たず、パートタイム労働者はほぼ横ばいである。つまり、正規職員は賃上げされても、その他の労働者はゼロか、少額でしかない。

 有効求人倍率は特にパート・アルバイトで1を大きく上回り、人手不足がいわれるが、それが賃金に反映していないのが実態といえる。賃金に対する企業の厳しい姿勢が窺える。その経営方針は円安で企業収益が改善しても変わらない。企業にすれば景気は変動するものであり、円安も長期的に続く保証もないからである。

雇用形態による有効求人倍率格差にみられるように、雇用構造の変化も着実に進んでおり、これが所得の伸びにも影響する。総務省統計局「労働力調査(詳細統計)」によると、役員を除く雇用者数(以下、雇用者数)は基調としては増加し、うち、正規の職員・従業者は07年の3,441万人をピークに減少を続けている。

 一方、パート・アルバイトは08年に減少しただけで毎年増加し、雇用者数に占める割合は08年の20.8%から、14年には25.7%と、6年間で5ポイントほど高まっている。また、パート・アルバイトを含む非正規の職員・従業員はこの間、34.1%から37.4%と4ポイント強の伸びであり、パート・アルバイト依存構造への変化が窺える。

 安倍政権下の景気回復で雇用者数は13年が前年比47万人、0.9%増、14年が39万人、7.5%増と2年連続で着実な増加となった。雇用面では明るいといえるが、所得面では雇用形態別の増減、雇用構造変化が問題になる。

 正規の職員・従業員は13年の46万人減から、14年は16万人減に減少幅は縮小している。12年から四半期の推移で、雇用は季節変化が大きいため、前年同期と比較すると、13年は前年同期比で40万〜50万人程度の着実な減少が続いていたのが、14年には減少傾向に歯止めが掛かり、7〜9月期は前年同期比10万人増となった。ところが、増加は1四半期で終わり、10〜12月期は2万人減である。まだ正規の職員・従業員増が見込める状況とはいえない。

 逆に、非正規の職員・従業員、うちパート・アルバイトは13年の大幅増加の基調から、14年は頭打ち傾向になっても、10〜12月期まで増加している。4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続で実質GDPがマイナス成長になったにも関わらずである。正規の職員・従業員の推移と合わせて考えると、雇用を抑制してきた影響で、今後は分からないが、労働力不足状態にあったといえる。

 今後の雇用者数は景気次第だが、正規雇用から非正規雇用への構造変化にまだ歯止めは掛かっていない。雇用者の全体の所得は雇用者数と1人当たり賃金との積になり、雇用者が増えれば、雇用者所得全体は増える。ただし、雇用構造が低賃金の非正規化すれば、伸びは低くなり、マイナスの可能性もある。

 春闘の賃上げも同様で、一部の輸出産業で比較的高い賃上げが実現しても、全体として賃上げ額、ひいては「毎月勤労統計」の所定内給与はそれほど増えないのが実態である。結果、個人消費の回復力にも期待できない。正規雇用化への逆転が求められるが、それが難しければ、景気回復による春闘賃上げを幅広く雇用者に波及させるために、少なくとも同一労働、同一賃金が必要になる。

 15年度の個人消費に関しては、消費税増税による消費者物価の上昇が3月で一巡する。加えて、原油の国際価格は大幅に下落し、バレル当たり100ドルを超える水準から40ドル台まで下がった。その後、下がり過ぎから戻しても、50ドルを少し上回る水準で止まっている。当面は世界経済の回復力が弱いため、元の水準に向けて上昇する力はないと推測される。また、穀物をはじめ食料品の国際価格も天井を打っており、海外からの物価上昇圧力は低下している。

 天候要因や円安の可能性を除けば物価上昇要因は見当たらないため、15年度の消費者物価上昇率は1%を下回り、一時的にマイナスになっても不思議ではない。物価を考慮すれば、15年度の実質所得はプラス、ひいては実質個人消費もプラスも予想されるが、高い伸びは見込めず、穏やかな回復が予想される。



雇用形態別雇用者数


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| 2015年03月01日 | 雇用 | comments(0) | - |

毎勤統計から賃上げの実態をみる

 今年の春闘は景気回復と消費税引き上げ後の駆け込み需要の反動減対策で、自民党安倍政権が賃上げ要請するという異例の環境下で行われた。マスコミは比較的賃上げ額の大きい企業を報道し、何となく賃上げは近年ではかなり高くなったイメージが形成されている。一方で、最近の消費関連統計は明るくはない。マスコミはその時々の話題を大きく取り上げる体質があり、これが誤ったイメージを形成する可能性があるが、最終的な春闘賃上げ額の発表は遅くれるため、実態は不明である。


 もともと、賃上げの恩恵に与れるのは大企業の一部正社員でしかなく、賃上げされてもその効果は全体としてみれば小さいという批判もある。もちろん、春闘は正社員だけのものではないが、現実はそうである。ただし、今年は有効求人倍率が1を超え、人手不足倒産も話題として取り上げられ、パート、派遣社員などの非正規社員にも賃上げが波及することも考えられる。いずれにしても、雰囲気が報道されるだけで、実態は不明な状態である。


このため、厚生労働省「毎月勤労統計」の賃金動向から推測するが、春闘賃上げ額は労使間の交渉で決まるため、4月から一斉に上がるわけではなく、実施時期はばらつく。それでも、6月までにはほとんどの企業で実施されていると考えられる。6月までの「毎月勤労統計」(6月は速報値)の推移をみれば、今年の春闘の実態がある程度は分かる。


 従業者5人以上企業のパートと一般労働者を合わせた全労働者平均の現金給与総額は、昨年11月から僅かだが前年水準を上回るようになった。ただし、前年同月比で今年3、4月の0.7%増がピークで、5月0.5%増、6月速報0.4%増で、息切れ気味である。


 また、総額のうち春闘賃上げ額の影響が大きく、毎月決まって労働者が受け取る所定内給与は今年4月まではマイナスで、5月横ばい、6月は0.3%増である。前年のマイナス基調との比較すれば、1ポイントほどの賃上げ率引き上げ効果が窺える。


 現金給与総額が先行して前年水準を上回るようになったのは、景気回復効果で残業代などが増えたためだが、5月からは消費税増税の反動減で、企業活動が弱まっている影響がでている。ただし、夏のボーナスの伸びは高まる見込みで、7月は盛り返すと予測されるが、1%台の伸びになれば良い方であろう。


 一方、所定内給与が6月に前年を上回ったのは、今年の春闘賃上げ額が最近の伸び率低下傾向に歯止めが掛かり、回復したといえる。しかし、1%にも達しない伸びでは、3月までの物価上昇にも足りず、もちろん3%の消費税引き上に対しては全く不十分である。


 ちなみに、5月までしか分からないが、賃上げが大きいと思われる大企業が対象になる、従業者500人以上企業の一般労働者(パート以外の長期雇用で、正社員以外も含まれる)の5月所定内給与は0.1%増である。結局、大企業でも全体でみれば春闘賃上げ額は大したものではなかったと判断できる。


 その分、夏、冬の一時金が比較的高いの伸びになり、現金給与総額は増加基調が予測できる。それでも、生活を支える基礎的収入の所定内給与が安定的に増えなければ、個人消費の回復は見込み難い。また、就業者数の前年比伸び率は1%増以下で、これを考慮しても全体として所得の伸びは低い。これに対し、企業減税の一方、消費税以外でも税・保険料負担の拡大、社会保障の切り下げが予定されている状況ではより難しい。


 一方、有効求人倍率が1を超え、特にパート不足の深刻化はパート賃金から上昇も考えられる。ところが、これは低賃金のパート需要が増えているためで、その背景にはパート需要の多い小売り・サービス業が価格引き上げが困難な市場環境から、低賃金のパートを求めているという事情がある。そして、それは消費者が所得が増えないなかで、低価格商品・サービスに向かわざるを得ないためで、これがデフレの原因になる。


 国際商品市況の上昇、為替レートの円安の海外要因によって物価が上昇しても、それは一時的現象でデフレ解消とはいえない。国内の需給が改善し、国内要因から物価が上昇して初めてデフレ状態からの脱却になる。

 
給与額の推移(前年比伸び率)

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| 2014年08月02日 | 雇用 | comments(0) | - |

高齢者中心の就業者増の日本経済は成長できるか

 労働需給や失業率などの雇用統計の改善が進んでいても、パート中心の非正規雇用増で、正社員の雇用改善は遅れているため、雇用改善の中身が問題という批判は多い。一方、人口の高齢化への関心は高いが、雇用の高齢化はあまり注目されていない。政府が進めている外国人労働力の受け入れ問題でも、東京オリンピック建設に向けての短期的な課題としての議論が中心で、雇用の高齢化と結び付けた議論は目にしない。

 労働力人口は主に15歳から65歳が対象になるため、単に、これから戦後の第1次ベビーブーム世代が労働市場から退出し、労働力の減少への危機感が一部にみられる。しかし、長期にわたる経済の低迷状態からそれほど広がってはいない。現実には構造変化が生じ、勤労者が55歳定年や60歳定年の時代は65歳以上で働くのは例外的だったかもしれないが、最近では珍しくはない。

 労働力人口は就業者と就業していなくても就職活動している者で、不況で雇用環境が悪くて就職活動しない失業者は労働力人口に含まれない。しかし、景気が回復し、雇用環境が改善されて就職活動を再開すれば、労働力人口になるため、労働力人口は一定ではなく、実態とかけ離れていると考えられる。特に、就職が困難な高齢者ではその傾向が強いため、ここでは総務省「労働力調査」の就業者数を使う。

 就業者数は2011年が異常値であるため、前年比は13年からしか評価できない。このため、13年からの前年比増減の推移をみると、就業者数は着実に増加している。13年は月平均で就業者数は41万人増え、10歳間隔の年齢階級別では、65歳以上が41万人増になっており、増加している非正規雇用は高齢者を対象にしていといえる。もちろん、雇用者側は高齢者だけを対象にしているわけではないと推測できるが、低収入の非正規雇用職場に適した人材は高齢者が中心になる。

 14年に入ってもこの傾向は続いており、1〜5月で全体は210万人増(月平均42万人)に対し、65歳以上は198万人増(同40万人)である。男女別は男性の雇用増が女性を若干上回っており、定年退職した高齢男性の就業意欲が強いことが窺える。

 65歳以下では45〜55歳の増加が目立っている。第2次ベビーブーム世代がこの階級に入ってきているためで、今後、5年程度はこの階級の増加が見込める。一方、少子化の影響で34歳以下は減少が避けられず、現在は増加している35〜44年は第2次ベビーブーム世代がピークを過ぎるため、1、2年以内に減少に転じると予測される。

 この年齢階級別就業者数構成からみれば、日本経済に明るい展望は持てない。知識、技能、体力などから判断すれば、この年齢階級で生産性が高いのは25〜54歳になる。一方、人口は13年10月1日時点で第1次(ピークは64歳223万人)と第2次(同40歳202万人)のベビーブーム世代間の最も少ない52歳で152万人になる。これに対し、40歳以下は減少基調で推移し、25歳でも130万人と52歳よりも20万人以上少ない。また、0歳は104万人で、100万人を下回るのも近いのではないか。つまり、男性に比べて就業者の少ない女性の就業が急増しない限り、25〜54歳の就業者数は景気の状況に関係なく、毎年10万人以上減少すると推測できる。逆に、65歳以上の就業者の増加が続き、就業者の高齢化が進むことになる。

 年齢階級別就業者数構成からみれば、生産性、ひいては潜在成長率が高まることは予想できない、むしろ経済水準自体の低下もあり得る。それを補うのが技術革新や外国人労働力などになるが、手っ取り早いのは外国人労働力になる。ただし、GDPは就業者数と同1人当たり生産性の積になり、単に就業者数を増やすだけであれば、経済が成長しても実質的な日本国民の所得の向上にはならない。

 現在、外国人労働者で想定されている建設労働者であれば、一時的に経済が膨らむだけで、その後は元に戻ることになる。日本経済を支え、発展させる人材が必要だが、そのような人材が安倍首相が追求する「普通の国」の日本に魅力を感じるかどうかが問題になる。また、外国人が収入だけで働く国を決めるとしても、外国人エリートを優遇して好待遇にすれば、その下で働く日本人の勤労意欲が維持できるかどうか。

年齢階級別就業者数増減(前年比)の推移

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| 2014年06月30日 | 雇用 | comments(0) | - |

雇用拡大から景気を回復させる政策は現実的か

 民主党代表選で菅首相が選ばれた。景気回復が中断し、景気後退が懸念される中、菅首相は「1に雇用、2に雇用、3に雇用」を強調し、雇用拡大で景気の回復持続を強調している。菅首相の考えている具体的な政策は分からないが、雇用拡大を前提にすれば、雇用拡大→個人消費増→GDPの上昇、というルートで景気の持続的回復・上昇を期待することはできる。


 問題は雇用が景気に遅行、つまり雇用は景気回復の契機になるのではなく、その結果ということである。雇用者も含めた就業者全体の推移を総務省「労働力調査」でみると、就業者数は90年の6,249万人から、97年に6,557万人まで増えてピークになり、その後は景気を反映して一進一退で推移している。最近は07年の6,412万人から、景気がピークを打った08年には早くも減少に転じ、09年は2年連続の減少の6,282万人にとどまっている。


 そして、景気は2009年1〜3月期に底入れして1年半ほど経ている。就業者数はようやく7月になって前年同月比プラスになったが、わずか1万人増の6,271万人である。10年は年間を通してみれば、3年連続減の可能性が高い。


 ただし、景気低迷下、または現在のように回復期でも、回復が遅れている時に、雇用増が期待できる分野はある。そのような分野で雇用増加を図ることで、景気回復につなげる政策が考えられないわけではない。


  「労働力調査」で産業別に就業者数をみると、主要な産業では、建設業はピークの97年の685万人から09年の517万人、対97年比24.5%減まで一本調子で低下している。製造業はピークの92年の1,569万人からその後、一時的に微増の年がある程度で、09年は1,073万人、対92年比31.6%減にもなる。


 就業者全体に占める製造業の割合は90年で24.1%と4分の1を下回り、09年は17.1%でしかない。この間、02年から標準産業分類の改定で出版業が製造業から情報通信業に移った。製造業はその影響を受けるが、その人数は02年で20万人、2%にも満たない。また、建設業や製造業への派遣労働者が増えており、派遣会社の派遣労働者はサービス業の労働者派遣業に分類され、実態よりも少ないことに留意する必要はある。


 一方、公務と分類不能を除いた民営の第3次産業(以下第3次産業)は、かつては不況期でも減ることはなかっが、09年に4,205万人、対前年比5万人、0.1%減と初めて僅かだが減少した。全体に占める割合は90年段階で56.1%と過半数を超え、09年は前年より0.1ポイント低下しても、67.3%と3分の2以上を占め、雇用を増やすのは第3次産業が対象になる。
 具体的に雇用を増やす産業を考えるには、第3次産業をより細分化してみる必要があるが、細分類で集計されたのは標準産業分類が改定された02年からになる。このため、02年からの細分類で顕著に就業者数が増えている産業をみると、「情報通信業」「医療・福祉」と、労働者派遣・廃棄物処理・自動車修理等の「他に分類されないサービス業」の3産業になる。他に分類されないサービス業は労働者派遣業の増加と推測される。


 02〜09年に第3次産業が3,992万人から4,205万、213万人増えている。同期間で、情報通信業は158万人から193万人、35万人増、医療・福祉は474万人から621万人、147万人増、他に分類されないサービス業は374万人から463万人、89万人増である。ただし、医療・福祉以外は近年、頭打ち、または減少になっており、景気の影響が避けられないことを反映している。


 結局、不況期でも就業者増、ひいては個人消費増を見込めるのは、医療・福祉産業になる。実際は老人施設サービスの福祉産業と推測される。着実に就業者数が増えている背景には、福祉産業は高齢化で景気に関係なく需要が増えることがある。加えて、供給面で就業者が不足しており、就業者増が期待できる。つまり、恒常的に人手不足状態にあることも雇用を増やせる潜在的可能性が高いといえる。その人手不足の原因は、労働条件が厳しく、就業希望者が少ないか、就業しても定着しないためである。


 福祉産業に就業者増、雇用増を期待でき、労働力調査統計からその可能性は十分あるといえるが、それためには労働条件を改善する政策が必要になる。悪い労働条件を賃金や人員増で対応するとすれば、いずれにしても人件費の増加になる。それは税金や保険料で賄うか、利用者負担にするしかない。税金には財政問題があり、保険料引き上げや利用料金の負担増にすれば、結局、負担をかぶる家計はそれだけ他の支出にしわ寄せするだけで、雇用拡大→消費支出増に結びつかない可能性が強い。結局、秋以降に懸念される景気後退を予防し、景気回復の持続を雇用増で実現するのは現実には難しいという結論になる。

2002年以降で就業者数が顕著に増えているサービス業種


※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
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| 2010年09月26日 | 雇用 | comments(1) | - |

景気効果は賃上げより正社員化

 今年も春闘の季節がやってきた。日本の景気は2007年度後半から08年度にかけての急落から、09年度にはいって回復基調にあるが、急落とは対照的に回復は穏やかである。この間、企業収益は08年度に減益、なかでも製造業は過去に例がないほど大幅な減益になった。09年度は増益傾向でも景気を反映して回復力は弱く、水準としてはまだ低水準に留まっている。


 このため、経営側の姿勢は厳しく、労働側も弱気で、賃上げに関しては、すでに勝負は付いた感がある。もともと、景気の良いときでも低い賃上げしか実現できず、個人消費の回復力は弱いままだった。今回は賃上げどころか、定期昇給も中止の雰囲気である。定昇は勤務年数による経験を能力向上として評価している面があり、これから考えれば、定昇の中止は実態としては賃下げである。


春季賃上げ率と現金給与総額の伸び率の推移
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| 2010年02月28日 | 雇用 | comments(0) | - |
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