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産業別生産では福祉の好調と卸の不振が顕著

 2016年10〜12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比で0.3%増と4四半期連続のプラス成長になった。この間の成長率は0.5%増、0.5%増、0.3%増、0.3%増と低成長の推移で、プラス成長が持続しても景気回復感は広がらない。明るい雰囲気が出てこない要因の一つに、日本経済を牽引産業が見当たらないことが挙げられ、国民の景況感との関係は産業別の成長性も分析する必要がある。

 産業別の動向とそれを総合した総生産額は国民経済計算で公表されている。ところが、年ベースで、かつ最新でも15年になるため、最近の日本経済の動向を産業別に分析する資料としては使えない。それに近い統計として経済産業省「全産業活動指数」がある。これは建設業活動指数、鉱工業生産指数、第3次産業活動指数の3つの産業の活動指数から成り、建設業に関しては全産業活動指数の中で分野別に、また鉱工業と第3次産業はそれぞれの統計で業種別に月ベースで公表されている。

この中で、鉱工業生産指数(IIP)は推計精度が比較的良いと推測できるが、建設業活動指数と第3次産業活動指数に関しては疑問がある。それでも、各産業の成長性の判断材料にはなる。また、農林水産業が入っていないが、農林水産業はGDPの1%程度を占めるだけで、日本経済全体の景気からは無視できる。

 現在の活動指数は2010年を100とする指数、つまり、100を下回ると、今年であれば7年前の年平均水準を下回ることになる。当然、全産業活動指数は実質GDP成長率と同様の推移になり、年間では消費税増税の影響で14年度に落ち込み、15年度から回復基調にある。ただし、四半期ベースでは少し異なるところもあり、14年4〜6、7〜9月期を底に一度回復に転じ、そして15年4〜6月期から16年1〜3月期まで底這いの推移になった後、4〜6月期以降は穏やかな回復基調になっている。

これを産業別に見ると、3産業は13年度にいずれも成長し、なかでも不況対策で公共工事が増えた建設業は前年度比11.1%増の高成長になった。それでも、全産業では2.2%増に留まっている。建設業は全産業活動指数の5.8%を占めるだけで、全体を牽引する力は弱いためである。ちなみに、この割合は鉱工業20.8%、第3次73.5%である。そして、実質GDP成長率がマイナスになった14年度はいずれも減少に転じ、15年度は建設と第3次産業は回復に転じたが、鉱工業はマイナスが続いている。

 鉱工業の四半期別では15年度中は減少基調で、16年1〜3月期の96.1を底に回復基調にあってもその足取りは遅く、10〜12月期でも99.6と6年前の100水準を下回っている。ただし、月ベースでは12月に100.6と100を上回っており、17年1月は前月比減少に転じたが、100.2と100は超えている。この間、為替レートの円安が輸出産業を中心に、製造業の生産活動を引き上げる効果が期待されていたが、為替レートが生産活動に与える影響が小さくなっているのは、企業の立地戦略から当然で、最近では一般的に認識されるようになっている。これに関しては既に、この経済レポートで何度か指摘している。

 製造業に期待できなくても、全体の4分の3近くを占める第3次産業が比較的高い成長になれば、全産業、ひいては実質GDP成長率も高くなるという見方もできる。しかし、国内需要の低迷状況が続く中で輸出によって成長可能性のある製造業に対し、第3次産業にもソフト、コンテンツ、国際貨物・旅客輸送、金融などのように輸出産業はあるが、現状では大部分が国内市場に依存している。つまり、国内市場中心の第3次産業が全体を牽引する役割を担う可能性はもともと低い。

 第3次産業は15年度の伸び率が1.4%増と第3次産業としては比較的高成長であったが、16年4〜17年1月の9か月平均で15年度比0.5%増でしかない。この影響で鉱工業が回復に向かったにもかかわらず、16年に入って全産業や実質GDPの成長率が低成長で推移する要因になっている。

 第3次産業の特性を主要業種で特徴的なものを挙げると、IT技術進歩で注目を集めている情報通信業(第3次産業に占める割合10.6%、以下同じ)は高い伸びのように思われるが、17年1月でも109.5でしかない。移動電気通信業、ソフトウエアプロダクトなどのように新興の高成長分野もあるが、固定電気通信業、新聞業、出版業のように古くからある衰退業種もあり、全体としては高成長にはならない。また、金融保険業(9.3%)は金融緩和、為替レートの円安による投資、投機の活発化で15年度の114.4まで伸びてきたが、16年度に入ってその効果が一巡し、113前後の推移である。

 一方、個人消費の低迷を反映して、小売業(10.3%)や宿泊業、飲食店、娯楽業などの生活娯楽関連サービス(11.6%)は100前後の停滞状況にあるのは当然といえる。これらよりも減少傾向が顕著といえるのが卸売業(15.3%)になる。卸売業は12年度以降、上下変動はあっても100以下の推移になっており、17年1月は90.9まで低下している。小売業や日本経済の状況から考えれば、100前後が自然と思える。この乖離はデフレによる流通への合理化圧力や無店舗販売による流通ルートの短縮化の影響と推測できる。

 これらに対して、成長を続けているのが医療・福祉(12.4%)で、特に介護事業の伸びが高く、17年1月は医療業の115.7に対し、介護事業は123.0である。高齢化時代を迎えて当然といえ、雇用者数も顕著に増えている。ただ、財政や支払い能力の制約があり、成長力を高めるのは容易ではない。また、医療・福祉を輸出産業にすべきという意見はあっても、言葉や人材の問題があるため、長期的な戦略として取り組むべき課題で、当面は難しい。

 特に、福祉が典型的と考えられるが、福祉関連の機器もあるが、ほとんどが人材によって支えられている。それが雇用面ではプラスになっても、産業連関性に乏しいため、波及効果で産業全体、日本経済を引き上げる効果は弱い。つまり、福祉、ひいては同様の業種が多い第3次産業が成長してもGDP成長率が高くならないというのが実態である。

産業別活動指数の推移(2010年=100)と主要業種別第3次産業活動指数の推移(2010年=100)

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| 2017年04月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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