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民間住宅の盛り上がりは一巡

 最近のGDP統計では民間住宅の高成長が目立っている。2016年度の実質GDP成長率1.3%増に対し、実質民間住宅は6.6%増の高い伸びである。17年4〜6月期(2次速報値)も同様に前期比でそれぞれ0.6%増、1.3%増となっており、民間住宅は好調を維持している。

 ただし、民間住宅は高い伸びでも、金額は16年度の名目GDP538兆円中17兆円、3%でしかなく、直接的なGDP成長への寄与度は低い。それでも、新しい住宅を購入すると、家具や家電製品などが更新される効果があり、この間接的な影響を考慮すれば、寄与度は大きくなり、景気判断ではGDPに占める比重が低くても注目すべき項目になる。

 民間住宅の動向を国土交通省「住宅着工統計」の新設住宅着工戸数でみると、15年3月から回復を始め、前年度比伸び率で14年度の10.8%減から、15年度4.6%増、16年度5.8%増と15年度から顕著に回復している。ちなみにGDPの実質民間住宅成長率は14年度9.9%減、15年度2.8%増で、GDP統計は進捗ベースであるため、着工から完成まで年月が掛かる住宅では、変化の影響は遅れて現れる。

 今回の住宅建設の特徴として、利用関係別で貸家が15年度7.1%増、16年度11.4%増と突出して高い伸びになっていることが挙げられる。貸家の16年度の着工戸数は42.7万戸、全体の97.4万戸の43.8%を占めている。かつては持ち家の方が多かったが、最近は貸家が最大になっている。ちなみに、16年度の持ち家は29.2万戸、マンションを含む分譲住宅は24.9万戸である。

 一方、建設投資額でみれば、貸家は1戸当たりの面積が狭くて小さくなり、16年度工事費予定額は全体の13.9兆円のうち、貸家は3.6兆円、25.9%にとどまる。それでも約4分の1であり、全体に与える影響が小さいわけではない。ちなみに、持ち家は6.3兆円、分譲住宅は4.0兆円で、貸家を上回る。

 住宅ローン金利が長期的にほとんど底這い状態の低水準で推移するなかで、13年度の税制改正大綱によって、相続税が15年1月1日から増税された。結果、相続税対策として貸家建設が急増し、マンション投資の盛り上がりも含めて住宅建設の成長性を高めてきた。

 ところが、新設住宅着工は今年の2月以降、前年水準前後の推移に変わり、頭打ち傾向になっている。年初初期はマンションの減少がその要因だったが、6、7月には貸家や持ち家が前年水準を下回るようになり、4〜7月で貸家は前年同期比0.8%減、持ち家1.9%減である。回復、成長を主導してきた貸家の変調が新設住宅着工の頭打ちの要因として大きい。

 貸家建設は不動産会社による長期一括借り上げ方式が多いが、オーナーが騙されたとして不動産会社に対する訴訟が広がっている。この問題は以前からあったが、最近、マスコミにも取り上げられ、その影響が着工に現れ始めたと判断できる。主たる訴訟要因は、貸家の供給過剰から入居率を維持するため、不動産会社がオーナーに家賃の引き下げを求めることにある。そうなると、オーナーは住宅建設費の回収が困難になるとして訴訟になる。

 もともと、人口が減少に向かい、一般的にも空き家が増えていることはよく知られている。地方からの移住で増えている都市は少なく、一部を除けば住宅需要が大きく伸びる環境にはない。かつ、雇用者所得が増えない状況では、入居者の支払い能力には限界がある。貸家建設コストを回収できるだけの家賃支払い能力のある入居希望者がどれだけ存在するか、厳しいと判断できる。

 つまり、中古の貸家より家賃の高い新設貸家需要が大きく伸びる状況にはない。貸家不足の地域でも貸家新設・供給が増えれば、貸家供給が需要を上回る時期は、それほど遠くはないと予想できた。結果として、訴訟の発生から考えれば、それが16年度の早い時期だったのではないか。

 また、分譲の半数ほどを占めるマンションは着工の変動が大きいが、実需が増加していくとは考え難い。むしろ、爆買いしていた中国人が、中国政府の海外投資規制で日本でのマンション購入を抑制、さらには売却に転じている。基調としては減少の方向が予想される。

 金利は物価動向から判断すれば、金融政策を転換できるとは考えられないため、持ち家は変動しないとしても、全体として新設住宅着工は減少が避けられない。それが進捗ベースのGDP成長率に波及するのは7〜9月期以降になり、実質民間住宅は7〜9月期にはまだ頭打ち傾向にとどまっても、10〜12月期以降にはマイナス傾向に転じると予測できる。ただし、GDP成長率における民間住宅の比重は間接的な効果を含めても大きくはないため、それが景気を転嫁するほどの影響力は考えられない。景気は現在の経済成長を支えている輸出次第になる。

 住宅の新設で経済成長を期待するよりも、量的には過大になっている住宅のストックを活用すべきである。つまり、成熟社会ではフローの拡大からストックの利用に変わるのが当然と思う。

利用関係別住宅着工の前年比伸び率の推移

経済の視点
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| 2017年10月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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