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高齢化時代の労働生産性の経済成長への影響を考える

 今回の景気回復期において、経済成長率が高まらないにもかかわらず、労働力需要が好調なことが挙げられる。経済成長率は総労働時間と一人当たり生産性の伸び率との和になる。このため、総労働時間に関しては、労働力需要が好調で就業者数が増えても、短時間労働のパートが増える状況では経済成長率を引き上げる効果は弱くなる。それでも、正規雇用者も増え始めており、総労働時間が就業者数の伸びに見合うようになってきていると推測できる。通常、企業は生産性の向上に努めるため、プラス成長でも経済成長率が低ければ、就業者数は減少する。逆に言えば、就業者が増える状態では経済は高成長にはならなくても一定の成長にはなる。

 最近は就業者数が年率で1%前後の増加しており、少なくとも2、3%台の経済成長率になっても不思議ではないが、それが実現できていない。パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者が増えているのを考慮しても、総労働時間は微増でも増えていると考えられ、経済成長率が低い理由にはならない。

 とすれば、生産性が問題になる。生産性は資本装備率、つまり機械・装置による労働代替や、技術革新などによって決まるとされている。設備投資が盛り上がらないなかでも、企業の労働力不足の深刻化が言われる現状で、企業は生産性向上のための省力化投資には積極的にならざるを得ない。つまり、増えていると予想される。一方、技術革新は効率向上のためのITの発展が著しく、それはIT投資に反映されることを考えれば、資本と技術革新を分けて分析してもあまり意味はない。

それでも生産性が向上しないとすれば、介護や飲食業など生産性の低い産業の比重が高くなる、産業構造の低生産性化に変化していることが一つの要因として挙げられる。加えて、従来は生産性で取り上げられなかった労働力、就業者の年齢要因、つまり高齢化があるのではないか。この要因が案外大きい可能性がある。世界的にも人口、労働者の高齢化と生産性が真剣に議論されたことはほとんど無かったと思う。通常の企業・産業では高齢化すれば退職するからである。

 人口の少子高齢化が言われ始めてから久しく、かつては15歳以上の労働意欲のある労働力人口は90年代末ごろをピークに減少傾向になるといわれていた。ところが、就業者数の増加にみられるように、女性の労働力化や高齢者が労働市場から退出せずに働いているため、労働力人口は減少していない。もともと、景気が良くなって労働需要が増えると、労働市場に参入する傾向にあり、労働力人口は景気によって変動する傾向にある。つまり、最近のように労働力不足と言われるようになると、労働力人口、就業者数は増える。

 ただ、その中身は大きく変わり、もともと若者や中年の男性の就業化率が高いため、新規の就業者は少子化による若者の減少から、女性や高齢男性に比重が移る。もちろん、高齢化は男性も女性も同様で、労働力の高齢化は着実に進行する。また、労働供給側の主婦や肉体が衰えて短時間労働を希望する高齢者の増加は、パートやアルバイトの需要増に対応し、主婦や高齢者の就業者を増やす要因にもなる。

 一方、もともと高齢者は新しい技術や知識を覚えるのは苦手で、肉体も衰えるため、労働生産性向上の阻害要因になる。この問題を総務省「労働力調査」の5歳年齢別の就業構造変化から考える。

 24歳までは大学や大学院の進学率上昇の影響を受けるため、25歳からの5歳階級別に1996年から5年ごとに20年間の就業者数をみると、高齢化は顕著である。ちなみに、就業者総数は96年の6,486万人から、2011年の6,293万人まで減少し、2016年は6,465万人まで回復している。

 96年時点では当時の団塊の世代である45〜49歳が918万人で突出して多く、同様に団塊2世の25〜29歳は726万人と1世より減っても、それに次いで2番目である。退職世代の60歳以上は少なく、全体を合わせても847万人である。 そして、それから20年後の16年は団塊2世が40〜44歳、45〜49歳になり、それぞれ816万人、777万人で1、2位になる。ただし、最初の団塊の世代時と比較すれば、100万人レベルの減少である。団塊の世代が65〜69歳になったことで、この年齢階級は20年前の918万人からは半減以下の438万人だが、当時の65〜69歳の250万人からは大幅増である。また、70歳以上も332万人と着実に増え、60〜65歳は団塊の世代が過ぎたため減少したが、523万人もいる。60歳以上でみれば1,293万人で、96年と比較すれば、5割ほど増え、全体の20%になる。ちなみに96年は60歳以上で同13%だった。

もちろん、高齢者の就業者数が増えているのはその背景になる人口の効果だけでなく、就業率上昇の影響もある。96年と16年を比較すると、60〜64歳は52.6%から63.6%へと10ポイント以上、64〜69歳は38.5%から42.8%へと4ポイント強と伸びは顕著である。70歳以上は16.1%から13.7%と逆に低下しているが、底の10年の12.8%からは上昇になる。64〜69歳も5年ごとでは現れないが、70歳以上と同様に一時的に落ち込んでいる。第1次産業や小売業で高齢化から廃業し、労働市場から退出した影響の可能性が高い。この一時的な現象を除けば、高齢者の人口増と就業率の高まりの相乗効果で、高齢就業者の大幅な増加基調が続いている。

一方、16年の25〜29歳は少子化を反映して538万人で、01年の771万人からは233万人、3割もの減少になる。現在の人口から予測すれば、この年齢階級が500万人程度になるのはそれほど遠くない。

 就業者の高齢化が進めば生産性に影響することは避けられない。それが就業者数、ひいては総労働時間が増えも、生産性は低下し、経済成長率を就業者数の伸びほどには引き上げない主因と考えられる。

また、今後の見通しも明るいとはいえない。現在の日本経済を支えている就業者、労働者の中心は40歳代になる。労働能力を肉体と新しい知識を吸収する脳力とに分けてみれば、肉体は50歳代から60歳代になれば衰えは避けられない。また、脳力は従来からある分野の知識量は年に関係なく蓄積して増やせると期待できても、技術革新による新分野の知識の取得がピークになるのは40歳代か、遅くとも50歳代までであろう。とすれば、日本経済を支える就業者、労働者はその年代を過ぎつつあり、生産性にも波及してくると予測できる。如何にして20歳代、30歳代の就業者、労働者を増やすかが日本の課題になる。

25歳以上5歳階級別就業者数

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| 2017年05月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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